***** 《ボランティアの窓》 *****

【自分だったら自分にボランティア活動してほしいですか?】

《第01章》

 ボランティア活動とは,一人ひとりの自由と信念が尊重され,誰もが安心してくらせる平和な社会を創るために,自分の考えで金銭を目的とせずに関わっていくことです。その実践は,さまざまな人や団体とつながり,ネットワークをつくりながら社会の課題の解決に取り組む活動です。活動の形態としては,個人で行う活動の他,グループ・組織を立ち上げたり,メンバーとして所属しながら活動する場合もあります。どんな活動であれ,その向こうには人がいます。ボランティア活動はあたたかな人間関係の構築ということができます。

 もしも自分がボランティア活動を依頼する立場だったら,自分のような人に頼みたいと思われますか?
 見知らぬ他人同士を結びつける経験であった恋の最中には,自分は相手にどう思われているかについて思い悩むものです。同じようにボランティア活動を受ける人は支援者が自分に対して抱いている思いや気持ちを受け取ろうとします。支援者はそのことを十分に弁えておかなければなりません。

 それでは人はどう思われていたいのでしょうか? 人間関係の形を5段階に類別してみましょう。
 ○「いない方がよい人」
嫌われている,避けられていると思ったら,落ち込みますし,自棄になってしまうことでしょう。
 ○「いてもいなくてもよい人」
望まれているわけでもなく,ただその場にいるだけの人と思われたら,落ち着かないことでしょう。行きがかりの人という感じで,仕事ですからと扱われるようなケースです。
 ○「いてもよい人」
余っているといった感じで,元気は出ないですよね。そこにいてもいいけど邪魔にならないようにして下さいといった言われ方をしたら,面白くありません。
 ○「いなければならない人」
人は自分がそうなろうとみんな頑張っています。自分が必要な人と思えたら安心するからです。でもがんばっている人は傍迷惑なことがあります。押しつけがましくて周りは疲れるからです。いちいち細かく注文を付けてくるはずです。世話する側からすれば,いない方がいい人に敬して格下げしたくなります。上手に受け流すことです。
 ○「いてほしい人」
そばにいてくれるだけでいいと思われていたら,人は至福です。そう思ってくれる人と一緒にいたいと思います。病めるときに側にいてくれる人,ふっと横向けば笑顔で応えてくれる人です。いなければならない人であるためには,健康でなければなりません。ボランティア活動を必要とされる人は,おそらく世間的には必要な人ではないはずです。自分の存在感が危うくなっています。「何ができなくてもいてくれるだけでいいのです」というメッセージを送ることが大事です。お互いが元気な顔を見たらほっとする,そんなつきあい方をしてあげてください。

 人が社会生活を送るには,自立していなければならないと考えられています。もちろん,一人一人がその目標に向かって努力をし,そのようなお互いの健気さを愛おしく感じる社会が,あたたかな社会です。しかしながら,すべての人が完全に自立していることはあり得ません。どうしても至らないところを抱えているのが,人間の弱さです。理想の自立した姿はあくまでも虚像でしかありません。
 社会は助け合う人々によって作り上げられます。そこには当然のこととして助け助けられる関係が現れ,運動として意識的に実行される場合にはボランティア活動と呼ばれるわけです。ボランティア活動の基本理念は,「周りの人や社会に対する手助け」,ごく簡単に言えば,「そんなことだったら私がしてあげられる」という活動です。実のところ,その気持ちを胸に抱いたとき,生きがいとか生きる喜び,社会の意味などを納得できる準備ができたことになるのですが,ここでは深入りすることは止めておきましょう。