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【人の縁を大切にする温かさを感じていますか?】
《第06章》
因縁果報という言葉があります。物事には原因があって結果があります。それを因果関係と言い,考える際の筋道になっています。例えば事故が起こったら,その原因を追及します。ところで,人が生活する際には,この因果だけではありません。種があるから実がなるというのが因果ですが,種だけでは芽が出ません。太陽の光や大地からの水分が不可欠です。それが「縁」です。実がなる前には花が咲き,花粉や蜜を供します。それが「報」です。細かくいえば,植物が根を張ることで,土地が流れないことも報です。人が生きていくためには,自前の因だけでは不足で,周りからの温かなご縁がなければならないのです。
ボランティア活動は,そのご縁を豊かにしようという活動です。いろんなご縁がなければなりません。そこで,大きな縁を考えておきましょう。人間関係は今生きている人との関係だけではないということです。かつて生きていた人やこれから生まれてくる人とも,縁があるのです。日本が緑豊かな国であるのは,かつての人が「自分たちがいなくなり孫子の代になれば,この苗も大きく育っているだろう」と植林をしておいてくれたお陰なのです。今の人は次世代のために何をし残そうとしているでしょうか? 次世代への思いやりもボランティア活動として考えるべきでしょう。
伝統を伝えることも疎かにはできません。日本の生活に根を張っているお盆とお正月という行事があります。人の信用は「何を守り続けているか」という点にあります。老舗が信用されるのも暖簾を守っているからです。国際化の中で日本の信用は何でしょうか。多くの国で守っているのは,伝統です。それは生きていた自分たちの祖先をどれほど敬愛し心を受け継いでいるかということです。現状はどうでしょうか?
お盆は仏様をお迎えする行事だということはよく知られています。ところでお正月は何をする日なのでしょうか? なぜ注連縄や門松を飾るのでしょうか?
2大行事に関する宗教上の教義などは知らず,庶民の感覚としての意味がありました。人は亡くなると仏様になり,お盆になるとその仏様が帰宅します。仏様を迎えて家族が揃って共に食事をするのがお盆の目的です。仏様には年忌法要が営まれますが,やがて33回忌や50回忌で終わります。その後はどうなるのでしょうか? 法要が終わると仏様はご先祖様という神様になるのです。そのご先祖様をお迎えしてごちそうを頂くのがお正月なのです。ご先祖様をお迎えするから大掃除をして家を清め,その合図として注連縄を,神様の玄関として松飾りをしてきました。お正月用の柳箸は両方を削ってありますが,片方はご先祖様が使われます。食事の時,ご先祖も一緒に食べているという意味があります。決してひっくり返して取り箸として使ってはいけません。
命のつながりを形として表してきた伝統ですが,それは今の人がしっかりと受け継がなければなりません。虚礼としか見えませんが,それは意味を知らないからです。形は変わっていくかもしれませんが,親たちが大事にしてきたことを自分たちに相応しい形で受け継ぐことは礼儀でしょう。その伝統を共有する人たちだからこそ,ご縁が生まれ仲間としてボランティア活動ができるのです。
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