***** 《ボランティアの窓》 *****

【連れ合いに惚れていますか?】

《第09章》

 「夫婦というは,別れ損なった男と女です」と語る方がいます。分かれ損なう訳があるのでしょう。多少の不満があっても概ね満足出来る程度ならいいからです。連れ合いのことを「ベターハーフ」と言います。「ベストハーフ」とは言わないのは,長い間の夫婦が到達した知恵でしょう。「良妻と 思われていて 肩が凝り」という川柳の思いがよく分かります。

 夫婦の事始めにも今昔があります。今は「幸せにするから」,「幸せになろう」と一緒になります。ですから,ちょっと何かあるとすぐ不幸せになります。昔は「一苦労してみたい」,「この人とだったら苦労を共に」と一緒になりました。ですから,少しいいことがあると幸せになれました。この様変わりはとても大切です。

 夫婦の仲に小さな亀裂が入ることがあります。初心を忘れているからです。妻が高熱を出して寝込んだ朝です。夫は「いいよ,いいよ,寝ていなさい。夕食は外で食べてくるから」と優しく言葉をかけました。その言葉を聞いて,妻はひそかに決意しました。「治ったら,すぐ離婚する」と。なぜ離婚なのでしょう? 男の方は優しい夫ではないかと思うかもしれません。気配りしてほしかったことは寝ている妻の食事です。どうして遅くなっても一緒に食べてあげようと思わないのかということです。困っている妻を見捨てています。「病めるときもいたわり合う」という誓いを忘れています。

 夫婦に限らず,「何をしてあげられるか」という気持ちが人として大切です。ボランティア活動の話に夫婦のことを持ち出してきたので場違いな感じを抱かれたかもしれません。実のところ,連れ合いを好きになれたら人が好きになれると考えているからです。逆に言えば,連れ合いを好きでないと人を好きになれないでしょう。人は好きな人がいれば気持ちにゆとりが持てます。また,夫婦が冷えていたら,他人ばかりに優しくするということで余計に関係がこじれてしまい,ボランティア活動どころではなくなります。愛する人がいるから,その愛をお裾分けできるのです。ベストでなくても,せめてベターであればいいという余裕はボランティア活動をするときに生きてくるはずです。