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【ボランティア 手の温もりが 何よりも】
《ボランティア・ノウハウ:第01条》
ボランティア活動は人の手でなされます。現場ではちょっとした気遣いが活動の成否を左右します。「こうすればよかったんだ!」と後で気付くことがたくさんあります。ボランティア活動する側が考えて実行したことでも,される側からは思いもよらない受け取り方をされます。小さなすれ違いでも積もれば思いやりを台無しにしたり,あるいは逆に増幅してくれたりします。こんなことがありますよという現場での経験をノウハウとして,聞き書きも含めて,これから書き留めていくことにします。ケーススタディとして読み取っていただければ幸いです。
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あるお医者さんの話です。二つのことを守っていました。
一つは,ベッドに寝ている患者さんに対して,必ず座り込んで同じ高さで声を掛けることです。普通はお医者さんは立ったままで問診をします。そうすると,患者さんはいつも見下ろされていることになります。ところが,同じ高さになると,患者さんが抱く気持ちの圧迫感を取り除いてあげることができます。何よりも気持ちを楽にすることが治療の第一歩と考えていたのです。
もう一つは,寒い季節になったときのことです。診察の前に白衣のポケットに入れたカイロで手を温めていました。患者さんの手や身体に触れるのですから,冷たい手ではかわいそうだという気配りです。ひやっと身体に刺激を与えるのも,弱っている人には苦になります。
ボランティア活動は温かい手でお手伝いすることです。すなわち,任せてくださいと頼られる側の人が,される側から人として信頼されるように振る舞わなければなりません。それは理解できたとしても,実際にはどうすればいいのかというノウハウが必要です。
こんなことがありました。行政が発行している広報誌を朗読録音したテープを視覚の不自由な方に届けているボランティアがあります。テープの最後に,そのボランティアグループの代表者名と電話番号,感想や意見を求めるメッセージを挿入しました。届ける側は録音後記といった程度の軽い気持ちであったはずです。ところが,利用している方からたいへん喜ばれました。「安心する」と言われたのです。
録音するときは会員たちが氏名を名乗ってから,担当するページを朗読しています。誰が読んだかという情報を添えることで,人が届けているという温もりを感じて頂けるように配慮されています。それはそれで伝わっているでしょう。でも,それだけでは安心までには至らないということです。
録音テープは思いやりの一方通行です。安心を産み出すのは,両方通行なのです。いつでもこちらから声を伝えられるように待っていてくれる人がいる,それが安心の源です。代表者名と電話番号,たったそれだけのことが大きな拠り所としての意味を持っています。
人とのつながりは手を掴んでもらっていることではなく,こちらからも手を掴んでいるという確かな実感が大事だということです。そういえば,道で誘導してあげるときに,手を引いてゆくのではなく,手を持ってもらうという風にすれば,安心して頂けるということもありました。
ボランティア活動においては,その活動がどんな形のものであれ,いつも「安心できる関係」を届けるように工夫することが大切です。
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