***** 《ボランティアの窓》 *****

【行政と 連携上手に ボランティア】

《ボランティア・ノウハウ:第03条》

 日常的な活動を請け負っているボランティアは,組織的な運営形態を持たざるを得ません。そこには,運営費という資金の調達や活動の基盤整備のための諸手続などが必然的に現れます。その他のことも含めて,行政との連携を必要とするケースがあります。今回は,行政とのつきあいについて考えます。

 行政に対するときに,要求する権利を嵩にきて高飛車な態度で接する方があります。あげくに「何にもしてくれない」という愚痴になります。その経緯をよく見てみると,案外と無理難題になっているところがあります。スムーズに流れているところに,いきなり外部から別のことを持ち込まれても,すぐには対応できません。また,仕事の段取りや手順もあります。気持ちよく仕事をして貰う積もりになれば,早く片づき願い通りになります。べき論ではなくて,お得論もたまにはいいでしょう。

 まず,何らかの仕事を依頼するときに,それがはじめてのものであれば,できるだけ余計な仕事を少なくすることです。口で言うだけでは簡単ですが,それを実際にするとなるとかなりの手間暇が掛かるものです。行政も遊んでいて暇があるわけではないので,二の足を踏みます。断れなくて請け負いますが,いつになるか分かりません。頼んだ方は一言ですから,すぐにできるはずと思いこんでいるので,「まだしていない」と非難し,「仕事が遅い」と謂われのない苦情をぶちまけます。仕事の頼みようが上手ではないのです。こちらでできる作業はきちんと済ませて,できないところだけを依頼するという風に運んだ方が得です。

 例えば,案内ビラを貼りたいという場合を想定してみます。「これこれの案内ビラを貼ってください」と口頭で依頼します。引き受ける方は,どういうレイアウトで,どのようなキャッチコピーがいいかを考え,パソコンに打ち込み,印刷し,適当な場所を検討しなければなりません。本来は案内ビラを出したいという者が,一番詳しく分かっているはずですから,自分でビラは作ったほうがいいのです。これを持ち込んで「張ってください」というだけの依頼なら,ついでに処理できますからさっと終わります。大事なことはビラを貼りたいのですから,貼りたい気持ちを込めるのが依頼の仕方です。行政に依頼するのではなくて,オンブされようと甘えていては,相手も迷惑なのです。

 行政は組織活動ですから,それなりの仕事の流れがあります。その流れに載せる気配りが必要です。いきなり持ち込まれても,さっとは対応できません。そんなときによく聞くのは,議員さんなどが絡めばすぐできるという話です。いわゆるVIP扱いですが,そんなことに頼っていては,活動の長続きは望めません。特別扱いは臨時的措置なのです。余裕を持って準備し,行政組織の流れに載せていけるようにきちんとした依頼をすれば,自然に事を運ぶことができます。

 また,行政には指示ラインがあります。その順序を弁えておくことです。ときどき外部と行政のぎくしゃくした関係を見受けますが,ラインの無視が原因です。トップに直談判して,いきなり末端に持ち込むという荒技があります。ライン壊しはそこに並んでいる人を無視することですから,面白いはずがありません。行政とは人ですから,人間的な気配りが必要です。トップへの根回しが必要な場合もありますが,それはあくまでも陰の部分です。表に持ち出すものではありません。行政組織は融通が利かないという印象があるかもしれませんが,それは持ち込み方の不手際による場合が多いのです。自分の都合を押しつけようとしても,それは身勝手です。

 最後に,行政への要請の中で,継続的なものや新たな予算措置が必要なものは,ことを急がないことです。単なる思いつきをいきなりという拙速ではなくて,じっくりと腰を据えた要請をするべきです。数年がかりという積もりで当たらなければなりません。そのためには,先を見ることが大切です。数年先にはこうなるという見通しを持っていなければ,その準備ができないからです。今のように緊縮化しているときにはなおさら,予算措置に関わる諸手続は入念に計画しなければ,実現は難しいでしょう。

 今思いつくことについて書いておきました。行政と上手な連携をすることを考えましたが,何かしら気を遣っているようで,下手に出ることが気に入らないと感じられるかもしれません。決してそうではありません。行政職員を公僕と言いますが,下僕ではないのです。公僕とは職員が自覚する言葉であり,外部の者が押しつけるものではありません。そこには,人がいるのです。人として対等につきあい,その仕事がやりやすいように運ぶことは,逆にこちらの仕事がやりやすいようにしてもらう基本です。