【ボランティア 初心に返れ 慣れたとき】
《ボランティア・ノウハウ:第08条》
ただ誰かのお役に立ちたいという純粋な気持ちから,ボランティア活動に飛び込んだ方が多いことでしょう。習うより慣れろという経験により,なんとなくボランティアらしくなった自分を感じて来たときこそ,初心を振り返っておくことが大切です。ボランティアに求められるいくつかの原則を今の自分に照らし合わせてみると,今後の活動に向かう指針を確認できるでしょう。
ボランティアの三原則と呼ばれている特質があります。振り返っておきましょう。
(1)自分から進んで行動する・・・・・・・・・・・『自主性・主体性・自発性』
ボランティア活動は,自分自身の考え,自由な意志によって始める活動であり,強制されたり義務として行うものではありません。友人から誘われたり,学校や会社の行事として参加したり,団体の活動に触発されたり,どんな小さなきっかけからでも「やってみよう」という自分自身の気持ちからボランティア活動がはじまります。
(2)ともに支え合い,学び合う・・・・・・・・・・『社会性・連帯性・公共性』
社会には自然保護,福祉,人権などの課題が存在します。こうした課題を発見し改善していくために,一人ひとりが考え,学び合い,多くの人々と協力し,支え合って行動しようという共生の意思が大切です。社会公共に関わり,何らかの役に立つことがボランティア活動そのものです。
(3)見返りを求めない・・・・・・・・・・・・・・・・・・『無償性・無給性』
活動を通してさまざまな人々と何かを成し遂げたり,つくりあげたとき,お金では得られない出会いや発見,感動,そして喜びがあります。ボランティア活動は,報酬や金銭的な見返りを目的にするのではなく,精神的な価値を得るための活動なのです。
上記の基本的な原則に則ってボランティア活動ははじめられますが,活動が盛んになってくるにつれて,さらなる特質が求められてきました。活動の拡大と深化が進むにつれて,必然的な要請であることは理解されることでしょう。
(4)よりよい社会をつくる・・・・・・・・・・・・『創造性・開拓性・先駆性』
目の前にある課題に対して,何が必要なのか,改善のためにはどうすればよいか,何ができるのかを,従来の考え方や方法・しくみにとらわれずに,自由な発想やアイデアを大切にしながら解決し,より豊かな社会を創り出していく気概が大切です。社会の開発や発展を目指す方向性が確固としていなければなりません。
(5)活動を通して発見や学びをする・・・・・・・・・・・・『学習性・探求性』
具体的な活動をしていると,そこに潜む価値に触れることができます。また,関わりの中で何が大事なことかを感じ取る機会もあるでしょう。ただし,単に活動をすればいいという態度では,学びはできません。常に問題意識を持って取り組む必要があります。活動に慣れてくると気持ちに余裕も出てきます。そこに新しい課題を持ち込めば,ボランティア活動の奥の深さを味わうことができます。
(6)活動分野の知識や技術を習得する・・・・・・・・・・・『専門性・習熟性』
活動は善意を発揮すればいいというものでもありません。無知な善意は相手を傷つけるから許されません。当面する相手に対して最も適切な活動形態がありますし,それなりの技量も求められます。ケースバイケースという活動は,誰でもできるというわけではなく,特殊な対応が求められます。そのための研修を受けるといった向上心が不可欠になります。
(7)活動に対する責任を持つ・・・・・・・・・・・・・・・『信頼性・評価性』
活動は人間関係ですから,その基盤は信頼関係です。任せる,任せられるという安心な関わりから活動は始まります。その相互関係は終始保たれなければなりません。ところで,信頼関係は大事であるが故に,脆いという特徴を持っています。ちょっとしたことで,全壊し,裏切られたという局面に逆転しがちです。細心の注意義務が発生します。守秘義務が必須であり,その上に活動責任とその評価を意識的に保持しようとする堅実さが必要になります。
ボランティアに求められる特質は,分野によって軽重があるにしても,共通しています。すべての原則項目を毎日気にする必要はありません。かえってお荷物になっては虻蜂取らずです。それよりも,活動に行き詰まったとき,うまくいかなかったとき,トラブルが起こったときなど振り返る必要が生じたときにこそ,その要因を考える際にチェック項目として利用してください。