***** 《ボランティアの窓》 *****

【ボランティア バリアフリーから ユニバーサル】

《ボランティア・ノウハウ:第09条》

 ボランティア活動がすぐそこまで近づいてくるようになったのは,社会状況が求めているからです。誰かがよいことを思いつきそれをして見せても,受け容れる素地がなかったら立ち枯れていくはずです。賛同を得て活動の拡大が起こるからには,必然性があったと考えられます。社会の動きがどこに向かおうとしているのか,その方向を見定めておくことがこれからのボランティア活動にとって大切になります。

 90年代までは,平均寿命の伸びが豊かさの指標としてクローズアップし,それにつれて高齢者福祉という課題が従来の障害者福祉に追加されました。暮らしの場におけるバリアフリーという概念が脚光を浴びるようになりました。社会的な弱者に対する日常生活の確保を実現するために,その行動に立ちふさがるさまざまな障害=バリアを極力除去しようという運動です。段差を無くすといった配慮は代表的なものです。
 豊かな暮らしの中で人々はよりよいモノを求めるようになり,実用性や利便性を基盤としたモノ作りが行き詰まりを見せてきました。つまり,使いこなすのにかなりの熟練や学習を強いるようなモノ,マニュアルがないと使えないような込み入ったモノが出てきて,一部の人しか使えない代物になったのです。モノが使用者をないがしろにして,人に指図して使わせようとし始めました。人に優しくなくなったわけです。マニアックになったということです。使えないのは使用者の無知や怠惰のせいだといわんばかりです。どこかおかしくなってしまいました。
 1990年代に,アメリカの建築家,ロナルド・メイス博士が,ユニバーサルデザインの考え方を提唱しました。障害=バリアを感じている障害者や高齢者だけを対象にし,適応できる人とできない人を分けるバリアフリーから抜け出て,子どもや妊婦,左利きの人,怪我をしている人,荷物を抱えている人など,あらゆるタイプ・状況の人でも使いやすいデザインにしようということです。
 誰にでも公平に使えること,多様な使用者や使用環境に対応し使う上での自由度が高いこと,必要な情報がすぐに理解できること,間違いにくく失敗や危険につながりにくいこと,無理な体勢を取ることなく少ない力で楽に使えること,使いやすい大きさと空間が確保されていること,などの原則が考えられています。例えば,手で触っただけでシャンプーとリンスの容器が区別できるとか,ドアの丸取っ手をハンドルにするとか,床を低くした乗り物,平らな部分が長く取られたエスカレーターなどが現れています。

 この流れをボランティア活動に重ねてみると,バリアフリーの世代はもっぱら障害者や高齢者を対象としたボランティア活動が主流になっていましたが,現在はもうユニバーサルの世代であり,広く誰でもが対象になるボランティア活動でなければなりません。子どもや病人,慣れない人,不案内な人,外国から来た人,力の不足している人など,活動の場は広範囲になってきます。福祉=ボランティア活動という狭いイメージは薄れていくでしょう。それを進展させるのは,今後のボランティアの皆さんの意向と実践次第です。願わくば,全ての人がボランティアになれば,ボランティアという言葉も消えていくはずですし,そうなることが最終目標です。
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