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収録作品
DISC ONEに4つ「密室症候群」「禍なるかな、いま笑う死者よ」「音のかたち」「解決ドミノ倒し」、DISC
TWOに5つ『あなたが目撃者です』『私が犯人だ』「いいニュース、悪いニュース」「蒐集の鬼」「不在のお茶会」という構成の短編集。
*感想
しかし、「本編とDISC−2の冒頭の一編、それからDISC−1の最初と最後の二編をお読みいただければ、それらの四作が、二枚組ディスクの中で、そこへ<布置>された理由というのがお解りいただけると思う。」という意味が解らなかった。悲しい。
素直じゃありませんよー。一筋縄ではいかないなー、やはり。ひねりすぎて、理解できなかった作品がありました(単に私の理解能力が足りないだけかな)。良く噛まないと、消化できない感じ。おしゃれな外面を装った衒学趣味といったところでしょうか。しかし、おしゃれはおしゃれだと思う。おしゃれすぎて、とまどうところがあるというか、若い人のおしゃれが理解できないなーというのと似てるかな(?)
シーリア・フレムリン 押田由起訳『夜明け前の時』創元推理文庫
1992
Celia Fremlin, THE HOURS BEFORE DAWN, 1958
*内容紹介
昼間は二人の子供に、夜は生まれて数ヶ月の赤ちゃんに振り回されるルイーズ。「ただゆっくり眠りたい」というのが彼女の唯一の願いだった。ところが、屋根裏に一人の女性を住まわせた時から、何ともいえない不安を感じるようになって。
*感想
彼女の作品で、同じく創元推理文庫に入っている『泣き声は聞こえない』と同様、読み易く、しかし、適度なサスペンスのある物語。当事者にしてみれば、こんなのに巻き込まれたらたまらないでしょう。が、ちょっと加害者(?)もかわいそうな人ではあります。
特筆すべきは、子供たちに悩まされる母親ルイーズの描写。壮絶で、本当にゆっくり眠らせてあげたくなります。夫は理解も協力もしてくれなくて、憎たらしい! 全く。母親にとって、夜おとなしく眠ってくれる赤ちゃんというのは、ありがたいものなのでしょう。
*内容紹介
「基本的に」やくざの方々の為の、やくざの方々による経営のホテルに起こるさまざまな出来事。
*感想
「このミス」にランクインしていた『プリズンホテル 秋』を読む前にと思い、読んでみました。なるほど、笑えます。後半、ダレた気がしたのですが、「その後」は気になるので『秋』も読むつもりでいます。
客より従業員の方が格が上ということで、遊んだ後の片付けやらを「客に」させたり、やたら礼儀正しいカラオケの楽しみ方やら、ところどころで「そうかもしれない」と思わせてくれます。登場人物がまた、みなそれぞれに味があります。
はあ。電車で広げると何だか変な目で見られている気がしたし、友達にも「いったい何そんな分厚い本読んでるのー」なんて言われてもめげずに、めでたく読了いたしました。
ほんとにまあ、次から次へと展開する謎、謎、謎。「大風呂敷を広げすぎて、うまく畳めないのじゃないか」という気がしましたし、物語の絡み具合についてゆけなくなりそうになったのです。どんな謎があったのか、忘れてしまいそうになったりして。混乱して。
でも、どんなに京極堂が難解なことを言い出しても、謎が謎を呼んでわけがわからなくなっていっても、途中でやめることができない本でした。最初の数ページを読みだしたらやめられないです、きっと。
私は、終わり方が何だか気恥ずかしかったのですが。まあ、そんな小さなことは些細なことで。「頼子」という女の子が出てきたからというわけではなく、法月綸太郎の「頼子のために」をちょっと思い出す場面がありました。
久保竣公「匣の中の娘」が魅力的でたまらなかったですね。「ほう」。もうこの言葉が頭から離れないんですよう!
ジョナサン・ラティマー
井上一夫訳『処刑6日前』創元推理文庫 1965
Jonathan Latimer, HEADED FOR A HEARSE , 1935
*内容紹介(とびらより)
別居中の妻を殺した罪で処刑を一週間後にひかえた男が死刑囚監房のなかで絶望から立ちあがった。自分でも自分以外の犯人が考えられない密室殺人の真犯人を獄中から突きとめようというのだ。弁護士、私立探偵、友人などの協力で、一週間たらずの日限をきられた必死の再捜査を開始する。一日一時間が電気椅子へ近づいて行く焦燥のうちに、有力な証拠や証人が、謎の黒い手によって、つぎつぎと消されていく。
*感想
なるほど、アイリッシュ『幻の女』に似ていますが、こちらのほうが地味といえば地味。あちらを「名作」という方の気持ちもわからないではありません(でも私は、アイリッシュだったら、毛色は違うけど『暗闇へのワルツ』のほうが断然傑作だと信じて疑わないぞ)。
比べる意味で読むと興味深いのではないでしょうか。特に、『幻の女』の終わり方を不服としている方たちは。
物語になっているわけですから、主人公は死刑を免れ、真犯人がつかまって終わりということはわかっています。犯人は誰か、というのを楽しみたくて読んでみました。こいつが怪しいというのを決めてそれが正しいかどうかの視点で読んでいきましたが、まー、半分正解というところでしょうか。
死刑囚仲間の二人との交流が印象に残っています。
サラ・パレツキー 山本やよい訳『サマータイム・ブルース』ハヤカワ文庫HM1985
Sara Paretsky, INDEMNITY ONLY , 1982
*内容紹介
息子のガールフレンドを捜してほしいとの依頼を受けたヴィク。彼女の足どりをたどるうちに、依頼人の息子の死体を発見。根が深いと感じた彼女は、まわりの妨害にもめげず、真相を解明してゆこうとする。
*感想
2年前に買っておいて読まないでいたこの本をようやく読んでみました。買っちゃうと安心して読まないのでだめですね。
面白かった。こんなに抵抗なく読めるんだったら、もっと早く読んでおけば良かった。女私立探偵ものは、P・D・ジェイムズに続いて、これでやっと2人目。全くタイプの違う2人ですが、どちらも魅力的であることにはかわりありません。コーデリアが「こじか」なら、ヴィク は「雌豹」といったところでしょうか(ほめすぎかなー)。ヴィクの親友で医者をやっているロティという女性がヴィクに負けないくらい素敵。
クリストファー・ランドン 丸谷才一訳『日時計』創元推理文庫
1971
Christopher Landon, THE SHADOW OF TIME , 1957
*内容紹介
私立探偵ハリーの許に、誘拐された娘を捜して欲しいとの依頼があった。警察もあきらめた事件だったのだが実は依頼人の許へは週1回、娘を撮した写真が郵送されていたのだった。手がかりは毎週送られてくるその写真のみ。さて、果たして少女を助けることはできるのだろうか。
*感想
楽しめました。こんなに面白い本だとは思わなかったのです。実は回想から入るという始まりだったので、最初から犯人がわかってしまいガッカリしたのですが、なんのその。やってくれました。オーソドックスな物語展開ですが、基本に忠実なのが、逆に新鮮で嬉しかったです。
エラリイ・クイーン 大庭忠男訳『九尾の猫』ハヤカワ文庫HM
1978
Ellery Queen, CAT OF MANY TAILS , 1949
*内容紹介
ニューヨークで連続殺人が発生。しかし、犯人は何の手がかりも残さず、被害者の共通項も掴めず、手当たり次第の犯行に見られた為、次は自分の番かと恐れたニューヨーク市民は大パニック状態に陥る始末。9人目の被害者によって、やっと小さな手がかりを見つけたかに見えたエラリイだったのだが。
*感想
良かったです。物語の構成は大変簡単にできています。でも、苦悩するエラリイが悲壮で、それが作品に味を与えている感じがしました。やはり、これ以前の事件(『十日間の不思議』)によってかなりダメージを受けていたらしく、この事件によりさらに落ち込んでしまったようなのです。
クイーンは実は数える程しか読んでおらず、おまけに『ハートの4』で一時「クイーンって甘くて軽い」と印象を悪くしてしまった過去もありました。こんなに重いものもあるのかーと思ったのは、『災厄の町』以来でしょうか。
法月作品を読む前にこれを読んでいたら「苦悩する探偵」なんて初めて! と思ってびっくりしたかもしれません。法月綸太郎がこれをベストにあげていた理由がわかった気がしました。『十日間の不思議』も読まなくちゃ。
エラリイ・クイーン 青田勝訳『十日間の不思議』ハヤカワ・ポケット・ミステリ#473
1959
Ellery Queen, TEN DAY'S WONDER , 1948
*内容紹介
エラリイは昔の知り合いに出会うのだが、彼、ハワードは自分の家を飛び出してからの記憶がないと言う。自分が何をしでかしてしまいそうで不安なので、一緒に家についてきてくれとエラリイに頼む。エラリイより先にハワードは故郷ライツヴィルに帰ってきたが、彼を待ち受けていたのは脅迫電話だった。彼の秘密を買えというのだ。
*感想
えー、話は上のあらすじからもっと進みます。彼の秘密っていうのが鍵になって話は進展するのですが、エラリイも泥沼状態に陥って読んでいる私は気の毒になりました。とっとと見限って去ってしまえばよかったのに。そうもいかないんだろうけど。
それはいいとして、これもまた暗い話でした。事件解決の鍵が、日本人には多分殆どありえないことで、かつ精神的なものなので、なおさらなのかもしれません。
私は嫌いじゃないんですけどねー、こういう話。追っかけてみたくなりましたもん。エラリイ・クイーンはエラリイを悩ませてかわいそうに。はしゃいでるばかりじゃなくて、悩む探偵というのはいいと思うんだけど。その悩むっていうのが「推理で悩む」のじゃなくて、もっと純文学的に悩む感じなんでミステリっぽくないと思う人はいるでしょう。そこできっと評価は分かれるんだろうな。
ほんとに法月綸太郎はエラリイ・クイーンが好きなのね、と再び思ってしまいました。
コーネル・ウールリッチ 稲葉明雄訳『黒衣の花嫁』ハヤカワ文庫HM
1983
Cornell Woolrich, THE BRIDE WORE BLACK , 1940
*内容紹介
事故に見える殺人が4件起きる。その影には、不思議な魅力を持つ女の姿が見え隠れしている。それぞれの周りの証言からは、外見的に異なるように思えるのだが、どうも同じ人物によるとしか思えない。しかし、殺された4人の男性にはいったいどんなつながりがあるというのだろう。
*感想
やはり雰囲気のあるウールリッチ(アイリッシュ)。何年かけても人を殺すのだというパワーが衰えないのはすごい。エネルギーを保つのは大変だろうに。殺し方の巧妙なこと。こんなにうまくいくものだろうかといぶかりつつも、雰囲気で読めてしまうところがあり。女も魅了する美人とは、これはまた、本当に魅力のある人なんでしょう。ひっかかるのもしょうがないのか。
最後に軽いどんでん返しがあって、なるほど、という感じ。それよりも、真相がわかり、彼女が決意をした瞬間の思いがすごい。女は強い(かな)。
エラリイ・クイーン 青田勝訳『ダブル・ダブル』ハヤカワ文庫HM
1976
Ellery Queen, DOUBLE,DOUBLE , 1950
*内容紹介
ある日、エラリイのもとに、ライツヴィルでの出来事が載った新聞の切り抜きが郵送されてくる。彼にとっては、4度めのライツヴィル訪問。しかし、先の3つの事件のつながりがつかめず、新たな殺人も。
*感想
むー。平凡ですねえ。印象が薄いです。たんたんとしたまま終わってしまった感じです。確かにまあ、「どんでんがえし」といえるようなものもあるのですが、盛り上がりに欠けます。キュートな女の子が登場しますが、何だかいまさらなあ、なんです。どんでんがえしの感じは『生者と死者と』に似てる気がしました。
*内容紹介
相談したいことがあるので家に来て欲しいという依頼を受け、訪れた沢崎。しかし、それが彼が誘拐事件に巻き込まれた始まりだった。
*感想
もーー、何も言うことありません。これでますます楽しみに『さらば長き眠り』に入ることができます。「終わるのがもったいない」と思えた本。乾いているけれど、カラッカラではなく、やはり適度な日本の湿り気を感じる内容(これは誉めているのです)。さりげなく挿入された、はがゆくてじーんとする場面。良さを伝えられる自信がないので、あまり言葉を多くするのはやめときます。薄まってしまいそう。とにかく読めばわかります(でも出た順がいいでしょうね、やはり)。寡作で結構。こんなに毎回充実してるのだから。
*感想
『私が殺した少女』を木曜日に読み終えて、すぐに読み始めました。土曜日のサイン会までに読み終えられたので、良かった。
印象度からいうと、私としては『私が殺した少女』のほうが強いです。探偵、沢崎と子供との交流って結構好きなんです。アンバランスさがあって。相変わらずの文章にまいってます。次が出るのをいつまでも待つぞ、とは思うけど、やっぱり早く読みたいなあとも思う。作品を全部読んでしまうと特に。楽しみな作家というのは、そうそういない。
『私が殺した少女』の中でふと見かけた、かつての仲間、渡辺の姿。今回でも気になるところでしたが・・・。はあ、もう何も言えません。
サイン会はというと、何か一言でも話せたらとは思っていたのですが、今回に限り、緊張してしまい、もう、「ありがとうございました」とにっこりして顔を見るのがやっとでした。層は、男性が圧倒的。9割以上。女性は数える程でしたね。40代くらいのおばさんがいたりして意外でした。
サラ・パレツキー 山本やよい 訳 『レイクサイド・ストーリー』
ハヤカワ文庫HM 1986
Sara Paretsky, DEADLOCK , 1984
*あらすじ(背表紙より)
穀物会社に勤めていた元ホッケー選手はわたしのいとこだった。埠頭から落ちて死んだというが、自殺説も流れていた。死因に疑いを抱くわたしはそのマンションを訪れるが、部屋はめちゃくちゃに荒らされ、警備員までが何物か殺されていた。たった一人で調査に当たるわたしに襲いかかる魔の手、五大湖を走る大型貨物船の爆破シカゴの海運業界に渦巻く陰謀とは?
*感想
うーん。専門用語が多く、ちょっと混乱。全体的な印象も、第1作目のほうが好きですね。謎が解けた後で、殺された警備員の奥さんと会話する場面が欲しかった。欲張りかな。
サラ・パレツキー 山本やよい訳『センチメンタル・シカゴ』ハヤカワ文庫HM
1986
Sara Paretsky, KILLING ORDERS , 1985
*内容紹介(背表紙より)
株券偽造の疑いをかけたれたおばは、昔わたしの母に冷酷な仕打ちをした張本人だった。一族のつながりがなければ、そんなおばを助ける気はなかった。しかし、一度は救いを求めてきた本人が今度は調査を打ち切ってほしいという。そのうち友人の証券ブローカーが殺され、わたしは危うく硫酸を浴びせられそうになる。シカゴの修道院に隠された陰謀、過去から現れた衝撃の事実。
*感想
途中、中断していましたが、読了。再開すると、これがなかなか面白く、一気に進められました。筋が明確なので、混乱せずに読めるし、ハラハラ場面も多い。マフィアのボスど向かいあってしまうなんて嘘っぽいけど結構楽しい。物語とわかっているから。しかし、ヴィクはつくづく運の強い人だとは思う。
こういうの読むと、私の時と今の高校生って「大人度」が違うのかも、なんて思ってしまいます。嫌いじゃないけど、『天使の卵』のが好きかなー。彼女の書くものって、「年上の彼女、年下の彼」の図式が多いですね。そこがまたいい。
サラ・パレツキー 山本やよい訳『レディ・ハートブレイク』ハヤカワ文庫HM
1988
Sara Paretsky, BITTER MEDICINE , 1987
*内容紹介(背表紙より)
夜のニュースが女医ロティの代診の医者の撲殺事件を報じていた。通りすがりの犯行でなければ、この前救急病院で死亡した妊婦の夫が恨みを晴らそうとしたのか。わたしはその線を洗おうとするが、そんなときロティの診療所が中絶に反対するデモ隊に襲われた。しかも、そこの弁護士はなんとわたしの前夫だった
*感想
数日前に読み終えたのだけど、あまり話の展開を覚えていないということは?
惰性で読んでいる気がなきにしもあらず。まあ、途中でやめてないということで、それなりに面白く読んでいるのだと思って下さいませ。
でも、同じようなのを読んでいると、違うタイプに浮気したくなるのねー。P・D・ジェイムズみたいな重いの読みたいな。
はっきりしない男だなー、仲本はっ。じれったかった。しかし、25歳の女の人と18歳の高校生というあの組み合わせには、ときめいてしまった。うーん。なんか、文章を読んでいてもそこだけ若い気がして。ページが。きらきらしてる。うまく表現できないんですけど。若いっていいなー。どうしても、いつまでも引っかかってしまう仲本の影、といった感じの表現がうまかったですね。そうそう、そうなんだよーという。
珍しく、年上男性との恋愛。彼女の本を読む度に、彼女自身かなり魅力的な人なんじゃないかと興味を持ってしまいます。
ガルシア=マルケスほか 木村榮一ほか訳『美しい水死人 −ラテンアメリカ文学アンソロジー−』福武文庫 1995
備考:南米現代作家の17つの話が収められた短編集。”この短編集は、1987年にサンリオから出版された『エバは猫の中 −ラテンアメリカ文学アンソロジー−』をもとに、作品の一部を差し換え、解説に少し手を加えたものである”とのことです。
*感想
こういうわけのわからない話が好きな私には、久々に楽しめた内容でした。面白かったものとそうでないものがありますが、幻想文学的なもの、不条理な話などが好きな人には面白く読めると思います。
中でも好きなのは「記章 バッジ」という話。友達にかいつまんで話したら、大ウケしてくれました。また、「羽根枕」という世にも恐ろしい話を聞かせたら、「怖くて枕にタオルを巻いて寝たよー」と怒られてしまいました。
『魍魎の匣』と比べると、おどろおどろしい雰囲気が弱いです。でも、その分、あまり気持ち悪くならずに読めました(笑) とっつきの面で言ったら一番いいかもしれません。やはり、『魍魎〜』はちょっと別格ですね。
しかし、複雑に絡み合う謎を、出来すぎだなーと思うような接点でもって、えいやっとつなげてしまい、しかし、面白く読ませてしまう、というのは大した力量だと思います。
*あらすじ(裏表紙より)
大破局のショックで部分的記憶喪失に陥った如月烏有は、寺社に繰り返し放火して回復を企る。だが焼け跡には必ず他殺死体が発見され、「次は何処に火をつけるつもりかい?」との脅迫状が舞い込む。誰が烏有を翻弄しているのか?
烏有に絡む銘探偵メルカトル鮎の真の狙いは?
*感想
するりするりと読めてしまいました。私としては前作『夏と冬の奏鳴曲』の解決編(?)を期待してたところなんですけど、残念ながら叶いませんでした。きちんと順を追って読まれたほうがいと思います。『翼ある闇』がまだだったら、それを最初にのがいいと思いますし。時系列は遡る形になるんでしょうけど。
”桐璃”と””付きですね。烏有を中心とした物語の進行の中で、烏有の記憶が戻らないことから、桐璃が果たして桐璃なのか(この文章自体が既に変だよなあ)、それも不明な為でしょうか。
53ページ終わりで、「桐璃が編集長の親戚か何かで、よく編集部に遊びにきている(らしい)」だの、137ページの終わりからのメルカトルと烏有の会話で、メルカトルが意味ありげに編集長のことを良く知っている、と言いますね。年齢も30代後半ということも書かれていて、まさに「もし和音が生きていたらそうであろう年齢」なんですね。
しかし、うーん、何かこう、思わせぶりにしといて肩すかしくらったようでスッキリしないんですよねー。桐璃は片目がない、ってわけでもなさそうだし何だか、烏有が前作で部屋から連れだした桐璃と今回の桐璃って別人みたい。
土を掘り返す夢。前作で、烏有は、自分のことを「うゆうさん」と呼ぶほうの桐璃を振り切って「うゆーさん」と呼ぶ、片目を取られた桐璃を助けに行くのでしたね。で、「うゆうさん」と呼んでいた方の桐璃を土に埋めた。
結局、烏有の記憶もきちんと戻ってないし、メルカトルは烏有にクイーンの国名シリーズを読ませたりするし、あーもう、作者の口から直接いろいろな事を聞きたいっ(笑)
『翼ある闇』『夏と冬の奏鳴曲』を読み返すべきかなー。でも、読み返しても謎は変わらない気はするなー。
ふぅ。でも、こういうの嫌いじゃないんですよねー。
綾辻行人『鳴風荘事件 −殺人方程式U−』光文社カッパノベルス 1995
*内容紹介(裏表紙折り返しより)
長い髪を切られ、殺害された”予言者”美島紗月。友人・深雪とともに現場を訪れた妹・夕海はショックのあまり入院。−−六年半後、夫・明日香井叶の双子の兄・響を連れて信州・海ノ口を訪れる深雪。そこで彼女は、死んだ紗月と瓜二つに変身した夕海と再会した。ところがその夜、宿泊先の別荘「鳴風荘」で、夕海は何者かに殺された!
しかも、六年半前の紗月と同様に髪を切断されて。誰が何のために?
*感想
実はあんまり期待せずにいたのですが、あら、と思うほど良かったです。綾辻行人というと、文章をひねくりまわしていてキザったらしいという印象がちょっとあったんですが(嫌いではない)、そういうのがありません。
特徴がなくなってしまう恐れはあるけれど、こういうのだったら毛嫌いされずに読まれそう。犯人指名まで二転三転する推理も面白かったし、終わり方も良かった。『殺人方程式I』よりも断然仕上がりが良いと思いました。(Iのほうは、直前に呼んだ法月綸太郎の作品の印象が強くてあまり高く評価できなかった)
リチャード・ハル 大久保康雄訳『伯母殺人事件』創元推理文庫
1960
Richard Hull, THE MURDER OF MY AUNT , 1935
*内容紹介(表紙より)
遺産を狙って伯母の殺害をたくらむ「ぼく」が試みるプロバビリティの犯罪!二度三度と執拗な殺人計画の前に、伯母の命は風前の灯かと見えたが--俄然、後半にいたって物語は意外な展開を見せ始める。
*感想
どこかしら「おかしみ」のある雰囲気でした。「人を殺す」という内容にしては、緊迫感、ドキドキ感が希薄で、逆にユーモアさえ感じてしまうような内容。
本人は真面目にがんばって(?)いるようなんだけど、伯母さんの方が一枚上手なんですね。実は最終章にある秘密があるんです。うむ〜。
しかし、私は、このエドワードに同情を感じてしまいました。好意を持っていたのは、どちらかというと殺す側のエドワードだったわけです。確かに伯母さん、口うるさそうなんだもん。
F・W・クロフツ 大久保康雄訳『クロイドン発12時30分』創元推理文庫
1959
Freeman Wills Crofts, THE 12:30 FROM CROYDON , 1934
*内容紹介(裏表紙より)
クロイドン発パリ行きの旅客機がボーヴェ空港に着陸したとき、同機に乗っていた富豪のアンドリュウ老人が死んでいた場面から始まる本編は、一転して中年の工場主チャールズ・スウィンバーンの目を通し、犯行の過程を刻明に追っていく。彼が用意した鉄壁なアリバイ!
*感想
(倒叙推理小説の三大傑作の)3冊読んだ中で一番良かったと思うのは、これです。整っていたというのでしょうか。さすがクロフツ、緻密に書かれています。毒入りの錠剤をつくる描写などは、頭が下がるほどです。他人になりすますために引いた伏線にも。しかし完璧すぎたと言うべきか。
一番同情できました。最初に、殺人なんてとんでもない、と自ら反省するのに、次第にはまりこんでいく様子がなんとも哀れ。
フランシス・アイルズ 大久保康雄訳『殺意』創元推理文庫
1971
Francis Iles, MALICE AFORETHOUGHT , 1931
*内容紹介(表紙より)
英国の片田舎に住む開業医ビクリー博士は、妻を殺害しようと決意し、周到な殺人計画を練り上げる。予定通り妻は事故死と見なされるが。息詰まるような法廷の攻防。そして意外な結末!?
*感想(ネタバレあり)
一番期待してたのに、そのわりには、、、だった作品。でも、ネタバレ以降書いてあることを考えると、割と読んでみても良いかもね、とも思います。前半、殺人を決意するまでが退屈なんです。「まだ殺さないの?」って感じ。女たらしぶりや田舎の人間関係を読んでいると、ぐったり疲れてしまいましたし。
ビクリーの奥さんがもっと悪女で、殺すに値するんだったら、まあ説得力もありますが、このビクリー自身が悪いやつなんで読んでいても同情できないんですね。
***以下、ネタバレ注意***
結末のデニスの死はまったくもって偶然だと思います。329ページ最後から330 ページ冒頭にかけて、下水設備の改造をくどいほどすすめたのに拒否してたのでうんぬん、とあります。結局、殺そうと細菌を服毒させたのと同じ病気で「偶然」彼が死んでしまったというわけで、ビクリーは「無実の罪」でもって死刑に処せられたんですねえ。うわ〜。でも、実際にそれ以前に殺人は犯しているわけですが。故意に行った殺人では罰せられず、無実の罪で罰せられた、ということですね。皮肉〜。でも、それが裁判で負けたというのが確かに不思議。そういう点から言うと、「うわ〜」という意外性は一番強かったと言えるでしょう。
95/2/25
村山由佳 『キスまでの距離 おいしいコーヒーの入れ方I』 集英社ジャンブジェイブックス
1994
するーっと読めてしまう。高校3年の男の子と5歳年上のいとこの恋愛話。のびのびしてて、悪くない。
95/3/30
村山由佳・志田正重 『もう一度デジャ・ヴ』 集英社ジャンプジェイブックス
1993
漫画と小説の一体化。おもしろい試み。
95/5/2
芝田勝茂 『きみに会いたい』 あかね書房
人の心が読める女の子と、同じ能力を持つ”男の子”の交流。原子力発電の勉強にもなる・・・かな?
いやいや。期待していたよりも、あっさりとして面白くなかった。もっともっと小さい人が読んだ方が心にしみるかも。
斉藤由貴 『NOISY』 角川書店 1994
前々から斉藤由貴の才能というものはすごいと思っていて、とにかくコトバの使い方がなんともいえない。ピリピリと神経の細かそうなナイーブな面が見えかくれしてて、読んでいて胃が痛くなりそうだけど、追ってしまう”ものかき”の一人であります。
映画「LOVE LETTER」
中山美穂主演のこの映画、馬鹿にするべからず。私は本当に心から美しい映像と内容だと思った。もう一度みてもいいなあ。ちょっとうますぎるよなぁ、っていうくらい、スバラシイ。ウツクシイ。パンフも良くできていて読みごたえあり。川本三郎の文章絶品。
95/8/13
レイモンド・ポストゲート 黒沼健訳『十二人の評決』ハヤカワ・ポケット・ミステリ#179
1954
Raymond Postgate, VERDICT OF TWELVE , 1940
ハーバート・ブリーン 西田政治訳『ワイルダー一家の失踪』ハヤカワ・ポケット・ミステリ#104
1953
Herbert Brean, WILDERS WALK AWAY , 1948
前者は、割とおすすめです。陪審員12人の、被告に対する有罪か無罪か、の意見交換も面白かったのですが、前半の人物紹介がいい。裁判の対象となる事件自体も、かのクイーンの名作を思い起こさせるもので、なかなか。
フランシス・アイルズ 鮎川信夫訳『レディに捧げる殺人物語』創元推理文庫
1972
Francis Iles, A MURDER STORY FOR LADIES (BEFORE THE FACT) , 1932
映画「断崖」の原作です。『殺意』よりも、こちらの方が出来が上のような気がします。
江戸川乱歩編『世界短編傑作集3』創元推理文庫
1960
アントニー・ウイン「キプロスの蜂」、パーシヴァル・ワイルド「堕天使の冒険」、E・ジェプスン&R・ユーステス「茶の葉」、アントニイ・バークリー「偶然の審判」、ロナルド・A・ノックス「密室の行者」、C・E・ベチョファー・ロバーツ「イギリス製濾過器」、マージェリー・アリンガム
「ボーダー・ライン事件」 ロード・ダンセイニ 「二壜のソース」、アガサ・クリスティ「夜鶯荘」、ベン・レイ・レドマン「完全犯罪」
この『世界短編傑作集』は、はずれがないですね。短編嫌いの私でもすらすら楽しく読めてしまう。つぶよりです。今回は、あの有名な「二壜のソース」をとうとう読んでしまいましたが、うわさにたがわず、奇妙な味! 確かに名作(?)だ〜。
エラリー・クイーン編『日本傑作推理12選(V)』光文社文庫 1986
松本清張「箱根初詣で」、生島治郎「時効は役に立たない」、赤川次郎「沿線同盟」、栗本薫「商腹勘兵衛」、戸板康二 「山手線の日の丸」、阿刀田高 「趣味を持つ女」、小泉喜美子 「被告は無罪」、都筑道夫 「小梅富士」、伴野朗「草原特急の女」、斎藤栄「天女脅迫」、菊村到「妻よ、やすらかに」、小松左京「共喰い−ホロスコープ誘拐事件」。古本屋でたまたま見つけたクイーン編の短編集も、楽しめました。I、IIも読んでみたくなりました。
95/9/5
『後宮小説』酒見賢一(新潮文庫)と『らせん』鈴木光司(角川書店)を読みました。『後宮小説』は、噂には聞いていたけど、やはり楽しめました。好きですね、こういうの。”歴史物”(?)というだけで、敬遠してたんですが。難しさはなく内容の楽しさにひきつけられました。
『らせん』は、読み進めていくと『リング』の続編という作り方で、『リング』を読んでいないともどかしくなるかな? そうでもないかな。一気に読ませるところはあると思います。
フレドリック・ブラウンの『悪夢の五日間』も読みましたけど、期待しすぎました。ちょっと物足りなかったです。
95/12/**
村山由佳『青のフェルマータ』集英社 1995
デビュー作が一番良かったなあ、と、新作を読むたびに思ってしまう。でも、見限れない人です。