日本の経済政策

 

小渕政権時代の経済政策

 

(この原稿は1999年作成・2003年加筆です)

日本経済再生の条件

供給サイド重視の政策から消費サイド重視の政策へ

 日本経済は小渕内閣の経済政策によって一息つき景気下降局面がひとまずは収まったかに見える。しかし、経済の根本的なデフレ循環が解決されたとは未だ認識できない。マーケットにおける消費(需要)の力不足が基本的には解決されていないのが一番の問題である。小渕内閣の経済政策を以降検証してみたい。

(1)保証協会の保証枠増枠

不況の深刻化により倒産などが増加中だった。一件の倒産により倒産企業の取引先に与える影響は大きい。売掛金の未収発生など最悪の場合は連鎖倒産が発生する。この損失の連鎖を途中で断ちきった功績は否定できない。しかし、企業にとっては融資を増額できたと言うことはB/Sにおいて負債の増加である。また保証を受けた企業が万一倒産し、保証協会に損失が出た場合、その負担は最終的には税金で賄われるものだ。すなわち一時的には倒産の発生を抑えられるが、経済や景気にとっては明らかにマイナスの要素として働くものである。これが近い将来日本経済にとって、マイナスのベクトルとして働き始める恐れがある。

(2)公共投資の増額

公共投資によって企業に仕事を与えた。しかしそれが終わってしまえば民間のマーケットには仕事は少ない。民需の力が弱いことに対する政策が為されていないからである。この政策も基本的には企業の延命策に過ぎない。公共投資の財源は国債の増発であり、将来の国民への負担の増加である。国債の償還は税金で行われるのである。

経済政策について

 発展途上国時代は人件費の低価格や為替レートの優位性などで安い製品を作ることができたので作れば売れた。輸出もできた。国民の所得も増加傾向だったので国内販売も好調だったのである。先進国となった後も高度経済成長時代(特に為替レートが1ドル=130円よりも円安の時期)はある程度にたような状況であった。 しかし今は作れば売れる時代ではない。人件費はアジア諸国に比べて相当高く、欧米諸国に近い。また、為替レートにおける円の過小評価は完全に過去のものである。国内的にも国民の目も肥えてきて、安いだけの製品では売れない。それなりの品質でかつ低価格でなければ売れない。品質と価格の面で、消費者に選ばれる製品を作る企業でなければ生き残れない。このような経済環境の変化により、有効な経済政策も変わらなければならない。
発展途上国時代から高度経済成長の時代にかけて、長年続いた自民党政権と官僚による経済政策は、おしなべて労働者や消費者の観点ではなく、企業サイドに立った政策であった。このような生産・供給サイドにたった経済政策は作れば売れる時代には有効に機能したが現在のようにマーケットにおいて消費者サイドの購買能力が極端に衰えている状況では全く機能しない。

 小渕政権の生産・供給サイド重視の経済政策で、企業だけが一時的に元気を取り戻して生産・販売活動を行っても民間マーケットで売れなければ問題解決にはならない。経済政策により企業の運転資金や設備資金の調達が可能になり(企業財務にとっては負債の増加)、既存の製品の継続生産や新規製品の生産が可能になったとしても、マーケットにおいて消費者サイドの購買能力が乏しければ製品が売れないために

 企業財務の悪化 → リストラ・倒産の増加→ 国民の所得の減少と連鎖していき、更なるデフレ循環を呼び起こす可能性が大きい。
 すなわち、現在の状況で有効な経済政策は、国民の購買能力のを高めるような消費サイドに立ったものでなければならない。
 国民の可処分所得の増加 → 製品が売れて過剰在庫・過剰設備の減少・解消 →  企業収益・財務の良化 → 賃金の回復・雇用の良化 → 国民の可処分所得の 回復・増加
 すなわち、消費サイドに立った経済政策はデフレ循環を断ちきり、景気の良好な循環を呼び起こす力を持っているのである。ここで認識してもらいたいのは国民の可処分所得の増加により売れるのはすべての製品ではなく、消費者により選ばれた製品だけであることだ。「製品が売れる」の段階で、自由なマーケットによる選別が行われ、より良い製品を効率的に生産し、よりリーズナブルな価格で提供できた企業だけが生き残れるのである。残念ながら消費者に選ばれる製品を作っていなかった企業は市場から退場せざるを得ない。しかしこれが自由競争の原理であり、ひいては国際競争力を高めることにもなるのである。消費者に選ばれる製品を作っている企業かどうかによらずある程度等しく平等に企業を救ってしまった小渕政権の政策とはここは違う点である。

 


 以上の考察から私は現在日本経済に対し採るべき政策として、大幅な所得税減税を提唱したい。国民経済の現状を考えると低所得層にも厚いものにしなければならない。現在のような恐慌が起こりかねないような大不況の状態にあっては先行きの見とうしが非常に不透明である。単年度の減税では消費者の財布の口は堅く閉ざされて減税により増加した可処分所得は消費に回ること無く返済や貯蓄に回ってしまうだろう。日本の財政状況を考えれば恒久減税が難しければ少なくとも最初は最低5年間の期限付き減税でも良い。これでかなり消費が上向くだろうと思われる。そして、最初は期限付きで始めても、経済の循環が良い方向で回り始めれば恒久減税に切り替えられる可能性さえ秘めている。もちろん、一時的には財政赤字が増大する。しかし、公共事業などで赤字を増大させるよりはこちらの方が経済には良い薬となるはずである。


(以上は1999年作成原稿)

(以下2003年4月・2004年2月加筆)

 付加価値は販売されてはじめて(実現するものであることを考えれば、需要不足からきている日本の不況に対しては需要サイドに立った経済政策が重要なのは間違いない。しかし、所得税の減税の財源を赤字国債でまかなわなければならないとしたら、最大の不安はすでに著しく積み上がった国債残高と人口の減少傾向である。減税などの消費刺激策で景気が上向いたとしても、国債残高を償還できないうちに再度景気が減速するようなことがあればもとの木阿弥である。国債は我々の世代の借金を将来の世代が負担するもので、人口の減少を考えれば1人あたりの負担額が増すことになる。これが将来の経済、景気に多大な悪影響を与える可能性がある。

(1)減税の財源を国債よりも行政のスリム化に求める。(無駄な規制をやめる.。天下りなどの禁止や官僚組織の見直しなど))

(2)景気を回復させ、安定的に導く理論・ノウハウの早期確立により、早期に巨額の国債問題を解決する。

(3)景気を回復させるために、公共投資は無駄な建設工事などを止め、「将来への投資」を行う。

※「将来への投資」の意義については、公共事業はどうあるべきかの章を参照

 この3点が重要だと思います。
 


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