造幣益の活用を考える

このHPでは「お金」について考察してきました。「お金」とは使用価値同士を交換するための潤滑油です。経済の目的は使用価値や効用が効率よく他者との間で交換されたり、社会的に再配分されることだと思います。そのような観点から、造幣益を活用した日本経済再生の処方箋を比較検討してみたいと思います。


スティグリッツ教授

要旨:ケインズ理論からデフレ理論への政策の転換が必要。これに基づき(1)デフレからインフレへの転換(2)円安誘導(3)銀行のバランスシート健全化の3本柱の政策が必要。補足説明すれば(1)については、デフレが債務の実質価値を増大させており、インフレにすることで個人消費が上向く。(2)日本は最大の債権国だから、円安になれば日本のバランスシートはおおむね改善される。また、デフレ圧力も逆転させる。(3)銀行には「金を貸す」という本来業務を行わせることが必要。
そして、私が提案するのは「政府紙幣」を発行して赤字支出の一部に充当することだ。発行量を適正水準にすれば急激なインフレは回避できるはずだ。政府紙幣は国債と違って債務として扱われない。破産的状況の日本の財政にとってはこの選択肢しかないのではないか。しかも政府紙幣は銀行の資本注入にも使える。銀行は「お金」を貸せるようになるだろう。

アラン・オーエルバッハ(カルフォルニア大学バークレー校教授)、ローレンス・コトリコフ(ボストン大学教授)

要旨:日本のGDPに対する政府債務の比率は先進国の中でも突出しており、政府支出の拡大や減税などは無理な状況。また、国民は放漫財政のツケを将来負担しなければならないことを自覚しており、減税を実施してもマクロ経済的な効果も期待できない。また人口の高齢化も先進国中飛び抜けて急速に進んでいる。また、現在日本は「流動性のわな」に陥っていると見られ、マネーサプライを拡大しても家計や企業、銀行がひたすら溜め込むだけになっている。
これを解決するのは一般原則には反するが、日銀が大規模な公開市場操作を行って国債を大量に買い入れるのだ。この財源として、紙幣の印刷(造幣)を充てる。これにより政府債務を将来に渡り返済・利払いの必要のない現金と日銀準備で置き換えるので多大な経済効果が期待できる。長期金利は低水準とはいえ0をかなり上回っている。将来的には短期金利の上昇を暗示している。したがって政府の有利子負債をいまなくして置くことは将来資金の節約になる。政府の財政改善により、家計は将来不安が軽減され消費は拡大される。

 

中山の試案

1.公共事業として日本の将来に対して効用を与えるような事業を行う。(介護施設の充実や成長産業に関するインフラ整備など)
2.また、紙幣を印刷して国民に配布する。(1)その規模は需給ギャップから推定する。超過供給を埋める程度の造幣であれば、インフレの可能性は低い。アラン氏らの提案では、日本の巨額の財政赤字を解消するだけの量を想定していると見られるが、そのような巨額の造幣はやはり急激なインフレを招く恐れが高いのではないか(2)造幣益を得るのは国民とする。日本政府の巨額の財政赤字は無駄な公共事業や放漫財政の結果であり、造幣益をその解消に充てるのは、紙幣を印刷して効用や使用価値のない公共事業を行うのと同じ事である。世の中に使用価値が増えていないのに、紙幣だけ増やしてはこれもまた貨幣価値の減少につながる恐れがある。また、銀行の不良債権処理に充てる考え方も賛同できない。不良債権となっている債務者企業はマーケットから選ばれていない企業が多いわけで、言い換えれば使用価値や効用を生み出していない企業である。(売れない製品・さーびすを提供)これもまた使用価値を産まずに紙幣だけ印刷しても貨幣価値の減少につながると推測されます。大事なことは造幣益を国民・消費者に還元することで、過剰な債務を抱えた家庭は返済にあて(銀行にとっては不良債権減少要因)、債務を持たない家庭は消費に当てるでしょう。そして間接的に売上増などで利益を得るのは消費者によって選ばれた企業であり、そのような企業に融資をしている銀行も利益を得ることになります。


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