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花冷え(2000GW・九州)・後編

えびの高原キャンプ場

 林道にて感動的な遭遇をした後、一人で人吉ループの旧道ダートを探索し、大昔の道路標識に感動しながら、えびの市内に戻ってくると留守電が!!
「指宿の近くに、感動的なテン場を発見して、前日から滞在している。来なさい」
との事。
何が感動的かは判らないけど、感動出来るなら感動するに超した事は無い。
正体不明の感動を求めて、指宿を目指す。

 辿り付いたのは、開聞岳近くの山の山頂。
そこに広大な芝生地帯が有ったのだ。
目の前には開聞岳、そして薩摩半島が地図どおりに見える!!
確かに感動的な眺めである。
キャンプ場では無いので水が無いのが残念だけど、それを差し引いてもオツリが来る様な眺望である。
 満天の星、クッキリ見える天の川、眼下には地図どおりに広がる夜景!!
何一つとっても感動的な光景なのだけど、いかんせん風が強い!
従って寒い!
気温自体は低くは無いのだろうけど・・・・
 凍える寒さにルービも進まず、暖かい寝袋に入っている我が姿の光景が脳裏を行ったり来たり。
たまらず、土産物屋(?)の残骸(?)の建物の中に逃げ込む。
おおっ!!こりは暖かい!!
よォしっ!飲むぞォ!!
そして・・・・・・
お約束の飲みすぎ。
 当然、朝からアタマはガンガンである。
予定していた、コシキ島行きのフェリーに乗れる気配は全く無く、しかたが無いので、朝ルービ・朝ワイン・朝焼酎まで・・・・・
撤収が13時過ぎになったのは言うまでも無い。
 午前中のモウロウとしたアタマで、
「今日はえびのに行くぞぉ!!!」
などと叫んだ際には、過去に必ず苦しんだ寒さに対する学習能力が発揮される訳も無く、結果としては自虐的に、えびの高原に向かって走り出すのであった。

 えびの高原。
恐らく、九州で一番寒いキャンプ場であろう。
それを経験的に知っているというのに、寒さにヒクヒクと凍えているだけでは余りにもアホである。
当然、レンタル毛布・薪などを用意しての完全武装したのは言うまでも無い。
がっ!!それでも寒いのである。
みんなで囲む焚き火とは別に、自分専用のプチ焚き火まで現れ・・・
それでも数名は、あまりの寒さにキッチリ眠れなかったらしい。
おそるべし!!えびのの冷え込み!!!

 今年のGWは、いつに無く寒いのかも知れない。
なぜなら、いままでこれほど、九州で桜を見た記憶が無いのだ。
ちょっと標高が高いあたりは葉桜に飾られ、キッチリとした標高が有る場所などは、見事な満開なのだ。
来る途中の中央道の諏訪あたりでも、イヤと言うほど桜を見てきたと言うのに・・・・・・
まあ、桜って、何気無くオメデタさを漂わせる花だから、「見れて良かった!!」などと、素直に感激しておく事にしましょうか・・・・


阿蘇・坊中キャンプ場での宴 ココで再会した「王様」
 再び坊中に到着。
組長じきじきの呼び出し命令なのであった。
到着してみると、サイトはすごい大混雑!!先日の雨の時とは大違い!
まるでレッドバロンの様に並ぶバイク・・・・
次々と現れる豊田組の面々!!
更に、何と「王様」まで登場!!
(この人、ワタクシと数年間に渡って何度も北海道で遭遇している。北海道以外で会うのは始めてなのです)
 さらに近くに居あわせたライダーを加えての宴会、これが少しヘンなのである。
何がヘンって??「他力本願」がモットーな豊田組、誰もランタンを持って来ていないのだ。
組長の電池式ランタン・「次郎君」が唯一の明かり。
従って、遠くから見ると誰も居ない(もしくは、小人数しか居ない)雰囲気の暗がりに、実際にはウジャウジャいるのである。
まるで怪しい宗教の暗闇修行のような状態!!
近くを歩く人が、あきらかにギョ!!っとしているのが判るありさま!!
 一人、また一人とテントの中に消え、たまちゃんが眠りに入った頃に・・・・
くずなりさんが豹変!一気に狂暴化!!
「おらぁ!テントから出てこい!!飲むぞぉ!!!」
ぴょ、ひま、二名が表に引きずり出され、K山商会もたたき起こされ、たまちゃんはテントを覗かれる始末!!
おそるべし!くずなりパワー!!
(注意:ごく一部、脚色されております)

 そして翌朝、元気に林道ツアーに出かける面々から見捨てられて、生ゴミのように転がりながら、さらにルービを買いに行ってまで飲み続ける約3名・・・
更に、わざわざ他のキャンプ場から駆けつける者まで。
勿論ルービ持参!!
それが誰かは、おそらく想像どおりです。


いよいよ、久留米ラーメン
 坊中を後にして、やまなみハイウエイを目指す。
九州ツーリングの醍醐味とまで言われる道、何度通ってもワクワクするのだ。
しかも、こんなに晴れた状態で走れるのは96年以来!!いったるでぇ!!!
がっ!!すごいクルマ・バイクの数!!
延々と続くノロノロ走行!!こりでは何か楽しくないよう!!!
部分的に渋滞まで発生し、連なるバスの排気攻撃に晒されながら、北側の終点に到着してホッとする。
 ここのPA風休憩所で一休み。
そういえば今日は5月5日の子供の日、売店から流れる「こいのぼり」の歌を何回も繰り返し聞かされて、宗谷岬や富良野を思い出す。
宗谷や富良野の、ゆったり系の曲でさえ耳に残って仕方が無い程なのに、なにせこちらは勇ましい曲すぎる!!
たまらず逃げ出し静かな山村の道を走り出したというのに・・・・
 気が付けば、「こいのぼり」を口ずさむ自分に気が付く。
怪しい宗教団体の洗脳の科学的根拠はこういう事なのね。

 ひたすら北上!!のツモリだったけど、ちょっぴり寄り道して西を目指す。
目指すは久留米!!
久留米といえば『とんこつラーメン』なのだ!!
博多が元祖みたいに言われているけど、発祥の地は久留米であると聞けば食いに行かねばなるまい。
道路標識を見たら「久留米まで97km」!!
こ・こりはちょっぴり寄り道のレベルでは無い!!
でも遅いのだ。
アタマの中は既にラーメン化してしまったのだ。
 舗装路ばかりの苦節2時間半、遂に久留米市内に突入!!
ただし、何の情報も無い為に、どこにどんな旨い店が有るのかは全く不明。
最初に目にしたラーメン屋『とんこつラーメン金龍』、これはチェーンらしく何処にでも有ったような気が・・・・・
パス。
それにしてもラーメン屋が少ないというより無い!!
こりはいったい・・・・
 程無く発見したラーメン屋、敷地も店構えも広いけど、コキタナさを感じるぞぉ!!
どうしよう・・・・・
おっ!!!駐車場にタクシーが3台も停まっていて、運ちゃんらしき集団が食っている!!
こりは旨いに違いはあるまい!!
「タクシーの来る店は旨い」という定石が有るではないか!
 店に入るなり、強烈な臭い!!
まさに糞尿系!!
し・しまったぁぁぁ!
東京でも一回、強烈トンコツを食った際にニオイに負けて食い切れなかった敗歴があったのだ。
速攻で店から逃げ出そうとした矢先、
「いらっしゃあああああいっ。ご注文わぁぁぁぁ!!!」
爆発的な叫び声!!
んもぉ大音響の「こいのぼり」どころでは無い!!
「おらぁ!!とっとと座って注文しやがれ!!」
とも聞こえてきそうな勢いに、思わず
「ラ・ラーメンひとつぅ・・・」

 メニューには「ラーメン」としか書いてなかったけど、まさか醤油や味噌味が出て来る訳も無く、当然の様にトンコツラーメンが運ばれてくる。
細くて硬いストレート麺、キクラゲと焼豚の簡単な具、レンゲが無いのは「替え玉」がフツーの九州系ラーメンならではですな。
ところが・・・
ん・んまいではないか!!
臭いなんて、一瞬にして気にならず!!!
チャーシューも、いわゆる煮豚ではなく焼豚だぁぁ!!こりもんまい!!
 替え玉を頼みたいのをグッとこらえ、スープを一気飲みして店を出る事にする。
なぜって??そりは・・・・
そう。これから北に40km、博多ラーメンと食べ比べしなければならないのだ!!!
「久留米VS博多トンコツ勝負、勝者を決めるのはこの俺だぁぁぁ」
などと心は勇ましく、気合を入れて店を出る。
久留米の味はキッチリと舌に刻み込んだぜぇぇ!!!
「ありあとございましたあぁぁぁぁぁ!!!」
ドキドキドキッ!!ま・またもや爆音攻撃!!
それはまるで
「よそに行くんじゃねぇぞぉ!!このやろう!!」

 まるで選手に脅されてしまった若手審判員のように、オロオロと、そして弱々しく糞尿のニオイのゲップをしながら・・・・
博多に向かう、九州の遅い夕方なのであった。


日田あたりの山中
 GWの博多、まさに「博多どんたく」真っ盛りの賑わいである。
人混みと渋滞を掻き分ける様に進み、川端の屋台密集地帯に。
夕方の気配ではあるけど、時刻は既に19時を回り、居並ぶ屋台のノレンからは観光客(?)の背中が並んで覗く。
それを取り巻くように集まる人!人!人!。
 既に旅も終盤となり、一歩間違えればレゲエと化した姿で、楽しげに過す一般市民の列に加わるのも気が引けて、ラーメン食べ比べ作戦を断念!!
だって、バイクだけが唯一の言い訳で、バイクから一歩でも離れたら、まさにレゲエだと思われても弁解の余地はあるまい。
決して、久留米のバカデカ雄叫び攻撃に屈した訳では無いのだけれど、トンコツ勝負は久留米の不戦勝となる。

 博多から海沿いに北上!
海っぺりのキャンプ場を目指す。
マップルには未記載ながら、コンビニ立ち読みで確認済みのキャンプ場なのだ。
サイトから、海に沈む夕日を見る作戦だったけど、さすがにそれは間に合わず。
完全に日没後、「キャンプ場まで1.5Km」の看板を発見してひと安心!!!
ところが・・・・
 海岸添いだと思っていたのに、どうやら海沿いの小さな山のてっぺんに有るらしく、真っ暗闇の細い道をクネクネと登る。
到着した頂上にキャンプ場の気配など無く、挙動不審なクルマ(二名乗っているのにクルマから降りてこないで、いわゆる何かをやっている)がポツリポツリ居るのみ。
おかしい・・・
少し戻ってみる。
おおっ!
完全にゲートで封鎖された枝道に、「キャンプ場入口」と書かれた看板が腐ってる!!
コレじゃダメじゃんよう。

 キャンプ場不毛地帯の九州北部、マップル掲載の一番近いキャンプは、内陸にかなり入り込んだ山の中。
推定1時間はかかるであろう。
今夜はゲリラかな・・・
とも考えたけど、今夜は九州最後の夜、テントはしっかりと乾かして撤収したいから、朝にノンビリ出来る場所が望ましい。
そうなると暗くなってからのゲリラはリスクが大きい。
朝に見たら民家の庭だった!!!とか、
ゲートボールの老人会にたたき出された!!!
朝のラジオ体操を邪魔してしまった!!!
なんて事もあったのだ。
 暗闇の山中の県道をひた走り、次なるキャンプ場着は21時。
最後のダートを抜けた真っ暗闇の駐車場には、やはり挙動不審車が1台居るのみ!!!
そしてサイトまでは長大な階段!!
こんな時間まで走ったからには、これじゃ妥協は出来ないよう!!!
 一山越えた、渓谷の中のキャンプ場へ。
営業していないオーキャンっぽく、サイトも奇麗である。
他にファミキャン3組、とっとと設営して一人酒。

 最後の朝、晴天である。
メシを食って撤収を開始したものの、谷あいである為なかなか日が差してこない。
テントを乾したままノンビリと過していると、サイトのゴミを一つ一つ拾いながら歩いてくる老人と会話に。
「東京からか。何時間かかるかのう」
やっぱり陸走扱いか・・・
「ヨウガからじゃろ?」
ヨウガって??そりは一体・・・
「東名の用賀じゃよ!!そこから乗ったんじゃろうが!」
おおっ!ピンポイント的に詳しいじゃねえかぁ!!
「ここはゴミ持ち帰りじゃし、バイクじゃ大変じゃろう。全部引きとってやるから出しなさい」
あ・ありがたやぁ!!!!
この親切なじいさん、係りのシトかと思ったらキャンパーでした。

「コーヒー飲みます?」
今度はファミリーの若奥様!!
なんでそんなに優しいのぉ???
夫婦に女の子一人の家族。
さっきから遊んでいた子供がハーフっぽいと思ったら、旦那さんは外国人でした。
更に、給食風トレイに乗せられた朝食セット(ゆでたまご・サラダ・パンなど)までゴチソウに。
な・なぜ?こちとら走るレゲエですよぉ!!!
(哀れに思ったおメグミだったのかしらん・・)
 色々ゴチソウになったから言う訳では無いのだけれど、何とも気持ち良く、そしてシヤワセそうなファミキャン風景にまざまざと接してしまい、思わず自分の未来と重ねあわせてしまう。

果してそんな光景を演じる日が来るのだろうか・・・
それは幻想に終るのかもしれない。
意外と、目前に迫っているのかもしれない。

手を振ってくれる親子3人に見送られ・・・・・・
思わぬ形で終わりを迎えた、5回目の九州ツーリングであった。

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