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湯あがりウエディング(後編)

宴会芸ではありません。いちおう、披露宴です(東京健康ランド)

ドタバタ

 当日の朝を迎える。
レンタルのウエディングドレスも届いているし、記念品の『名入りタオル』も準備完了、リーフレットも完成している。
このリーフレット、安くあげる(タダで制作する)為に会社でコッソリとコピーしてしまうツモリだったのだけれど、ちったあマトモに見せる為には表紙は色紙を使いたい。
色付き上質紙は値段も高く、会社には在庫も無い。
そこで発見したのが「クリーンルーム用の無塵紙」、うっすらとした水色で丁度良いではないか!
こりは使える!!
と言う事で、全てパクリで完成したシロモノなのであった。
もっとも、他の社員の帰宅をミエミエに待ってからの作業だったので、バレバレだったのかもしれない。
まあ、その位は御祝儀代わりに許しとくれよう!!

 10時の開店を待って安売り量販紳士服店に。
新婦がウエディングドレスを着るからには新郎がフツーのスーツという訳にも行かず、もともとマトモなスーツさえ持っていないブザマな新郎なので、この際に一番安い礼服を買っちゃおうと言う事なのだ。
「いらっしゃいませ。礼服ですか?それでしたら、この型が一番出ておりますが・・」
折り目正しく微笑んで、静々とにじり寄ってくる店員。
量販店と言えども、接客はキッチリと教育が行き渡っている様だ。
その教育はカンペキらしく、高いヤツしか薦めない店員。
「もっとチンケなヤツをお願いしますよう!!!」
「承知いたしました。チンケなヤツをお求めですね。それでしたらこの型が一番チンケで御座います。お客様にもお似合いの様で御座います。御試着を・・・いかがでしょうか?見事なチンケっぷりで御座います。ケッ!!!で御座います。」
実際には、そんな正直な気持ちは心の中にしまった様で、キッチリと対応してくれたのだけれど・・
「有り難う御座いました。おクルマの所までお持ちいたします。」
じぇんじぇん重い物じゃ無いのにぃ!!
かえってコッパズカシイ&イヤミだよう!!

指令

 荷物満載のクルマを健康ランドの駐車場にブチ込み、速攻で昼飯。
宴が始まったら、次に何かを食えるのがいつになるかは判らないのだ!!
しっかり食っとかなければなるまい。
ついでにルービもちょこっと飲んでしまう。
こちらの方はどれだけ飲まされるか判らないというのに・・
 午後1時、新婦・朱蘭は美容院に。
司会者等との打ち合わせは3時からである。
その間、新郎に与えられたおシゴトというのは・・・・
司会などのスタッフが、何やら1時からコッソリ集まるという極秘情報を入手したのだ。
「彼らが何を企んでいるのか調査せよ!!」
と言う朱蘭様の指令に従い、消息筋から聞き出した会合場所のデニーズに潜入!!
居た居た!!
確かに集結しているではないか!!
「ゲゲゲ!!!ひ・ひまアニィ、な・なじぇここに・・」
「だめだよう!!新郎がこんな所に来ちゃ!!イロイロ準備が有るだろう!!」
口々に、あからさまな邪魔物扱いを始める面々。
「なんだよう!!何か本人が居ちゃマズい事でも有るのかよう!!」
「べ・べつに・・」
そうは言う物の、ソワソワしながら互いに顔を見合わせて、苦悩の表情を浮かべる面々。
ついに意を決した、司会者ぽっぽや
「アニキィ、悪いけど・・・・ハッキリ言ってジャマだぜぇ!ぶっ殺すぜぇ!」

会場入り

 アッサリとデニーズを追い出され、仕方が無いので健康ランドに向う。
ここでボーっとしているのもヒマなので、一人で荷物類の搬入を開始。
フロントのオバちゃんが飛び出してくる。
「何ですかぁ?宅配便の配達ぅ?こっちから入って来ちゃダメでしょっ!!」
「ち・違いますぅ。今日の宴会の荷物を中に…」
「あらそう、荷物は宴会場に入れといて良いわよ。でも随分早く来ちゃったのね。」
「は・はあ」
「宴会は5時からだから、それまでお風呂にでも入ってなさい。支度があるから、荷物を置いたらいつまでも宴会場に居ちゃダメよぉ!!」
どこに行っても邪魔物扱いされる、「主催者」兼「主賓」なのであった。

 イジけていても仕方ないので、荷物を担いで宴会場に。
まだ準備は始まっておらず、誰も居ない大広間。
ステージの真ん中には例の樽酒がひっそりと置かれ、それを見守る様に、整然と並べられたテーブルとおびただしい数の座椅子の隊列によって、超大広間の座敷が埋め尽くされている。
今までこれほど大規模な宴会を見た事が無い。
しかも自分達が主役の宴会なのだと思うと、おもむろに緊張が走る。
「果して、ホントにこれだけの人々が来てくれるのだろうか・・・・・」
一抹の不安と言うよりは全くリアリティーを感じられないまま、現実的世界であるアロハムームー空間と薄暗い無人の虚空間を、荷物を抱えてせっせと往復する。

そして開宴へ

 3時。
スタッフ達が集結し、一気に慌しくなる。打ち合わせが終る頃に前後して、参列者の姿もポツポツと見え始る。
ひとっ風呂浴びてタムロしているお馴染みの面々の姿に安心感を覚え、ついつい加わってダベるうちに参列者は更に増え、あちらこちらで同窓会的な懐かしの御挨拶なども聞こえてくる。
何か他人事の様な気分になり、何気にウダウダ過していると・・・・
「そろそろ支度しなきゃ!!」
そ・そうであった。
控え室では、既に朱蘭様のウエディングドレスの着付けが終り、まるくすから化粧を施されている所。
慌てて礼服に袖を通そうとすると、さすが新品!!
値札やらタグやらが七夕の様にぶら下がっている。
更に慌ててブチブチとそれらを千切りまくる横では、まるくすと朱蘭がオロオロしている。
「ベールの付け方が良く判らないよう!!あーでもないこーでもない!!」
速攻でTBBが呼び出される。
なにしろ彼女、2週間前にウエディングドレスを着たばかりなのであった。

 司会のぽっぽやが覗きに来る。
「お〜いっ、準備は良いか?そろそろ始めるぞぉ!ぶっ殺すぞぉ!!おぅおぅおぅっ!!」
くどい様だが、「ぶっ殺す」は口癖である。
いつもと違う「おぅおぅおぅっ」の部分は、朱蘭様の晴れ姿に見とれてしまった歓声なのであった。

入場!!

 新郎新婦入場に備えてピッチリ閉じられた宴会場のフスマの向こうからは、開宴を告げる司会者の声が響き渡る。
そしてそれに続く結婚行進曲!!
い・いくぞぉ!!!
控え室から廊下にでる。
おおっ!!健康ランドの宴会係の皆様が集まっていて、拍手で出迎えてくれているではないか!!
何と言う暖かい対応、有り難いよう!!
(物珍らしかっただけなのかしらん・・・・)
そんな従業員の皆様に見送られて、いよいよフスマを開けて入場。
「おおおおおおおっ!!!!」
大歓声に包まれる会場!!
ホ・ホントに大勢の皆様が来てくれたよう!!
感激だよう!!

 雲の上を歩く気分でステージの上に。
おびただしい数のカメラの砲撃を受け、どんなツラをしていれば良いのかオロオロする。
新郎新婦の御挨拶、婚姻届の証人・いそび氏による内山牧場での入籍報告に引き続き、お約束の誓いのチュー!!!
再びカメラが集結する。
「ハイッ!こっち向いて!!」
「今度はこっち!!」
「こっちもぉ!!!」
そうそう何度もチューするのはコッパズカシイよう!!
え〜いっ、そりならば・・・
チューをしたままオルゴール風に体をグリグリ回転させる、この後に及んでもBAKAな夫婦なのであった。


自走式高砂

取り囲んでるのは風呂の客ではありません。参列者です  だからぁ! 披露宴なんだってばぁ!

 フツーの披露宴であれば・・・・
一番奥にお二人様用の席が有り、新郎新婦は見世物としてデンと構えて座っているものである。
しかし我々にはその様な席は無い。
自分達で皆様の席を回り、キッチリと全員に御挨拶をする所存なのであった。
 フツーの披露宴であれば・・・・
新郎新婦の席の下には密かにバケツが隠されていて、次々と襲い掛かるお酌攻撃から新郎新婦の宇宙人化を防ぐ、核シェルター的な防御兵器となっているのだ。
しかし我々にはその様な物は無い。
まさか首からバケツを下げて挨拶回りをする訳には行かず、お酌攻撃を正面から受け止めなければならないのであった。
いよいよ挨拶回りの開始!!
150人の皆様全員に御挨拶するまでは、何とか正気で過さねばなるまい。
こりは気を引き締めて望まなければ・・・・

 おっとぉ!!いきなり出だしから難関!!
朱蘭の大学サークルの面々が、手に手にビール瓶を持って待ち構えている!!
特にK松氏が要注意らしい。
「ごめんなさい。まだまだ回らなきゃならないから・・・・」
正攻法の防御で、最小限の被爆で切り抜ける朱蘭。
その分攻撃の鉾先は新郎に!!
なんのなんの!!まだまだこの位・・・
 引き続き穏健派の皆様の御挨拶をこなしながら前進!!
そして次の難関、豊田組系U氏の一派が待ち構えている。
「良いではないかぁ!!」
次々とお酌の機銃掃射!!!
幸いにして皿に注いでもらった為、量的にはダメージが少ないぞぉ!
 またまた平和な御挨拶が過ぎ、今度はG氏の一派。
おおっ!!手にしているのは「残波」ではないか!!
こりは核兵器だぁ!!
「おらぁ!!飲めぇ!!飲まんかい!!」
これがブリブリ旨いから困ってしまう。
しかしここで魂を売る訳には行かない。
攻撃は最大の防御なり!!しかも頭脳的ゲリラ作戦に限る。
「こ・こりは旨い!!旨すぎる!!」
必要以上に感激の意を表す。
所詮、このあたりは飲兵衛の巣窟地帯、
「どれどれ!!」
次々と周りから手が伸びて来て、哀れ「残波」はアッサリと空になる。
一瞬にして失われた秘密兵器の空き瓶を抱えてガックリするG氏を後に、更に御挨拶道中は繰り広げられるのであった。

アトラクション

ほうらっ! ウエディングケーキだって。(ソレを造ってくれた、よち夫妻) 
 
 何とか会場を一周。足元のフラツキは、震度2位で切り抜ける事が出来た!!
我ながら奇跡としか言い様が無い。
一息付くまもなく風雲急を告げるメインステージ!!!
おおっ!!!ウエディングケーキと共に、よち夫妻の登場だぁ!!!
 豊田組系メンバーの披露宴の度に、手作りウエディングケーキを作り続けるよち夫妻。
シヤワセな二人を祝う門出には無くてはならない伝統的ケーキが、遂に我が為のケーキとして目の前に現れたのだ!!!
シヤワセだよう!!!!
 シヤワセを送る使者である、よち夫妻がステージ上でスピーチ。
送り主の特権として、容赦なく我々にキワドい質問の砲撃を開始!!!
のハズが・・・・・
質問の内容を説明する為に、自らのアツアツ夫婦生活を告白してしまうハメに!!
こりは見事な、自爆的暴発なのであった。

 ケーキカットを終えてお色直し。
控え室にて束の間の休息・・・・・
何とかここまで乗り切ったぁ!!!!
ここで新郎新婦共に、健康ランド備品のアロハムームーに着替える。
朱蘭様のウエディングドレス姿がこれで見納めになる寂しさを感じながらも、こりは楽だぁ!!
一気にくつろいだ気分!!
これで気合を入れて飲めるぜぇ!!!!

 宴会場に復帰し、次のおシゴトは樽酒の鏡割り。
因縁の樽酒、心してのぞまなければなるまい。
お約束のボケをかましながら一気に叩き割り・・・・・
こうして、ワタクシの披露宴は終わったのである。

その後

こ・こりは・・・。とにかく披露宴なの!! 

 普通、鏡割りをしたまま終わってしまう披露宴などは聞いた事が無い。
勿論、この披露宴も例外ではなく、まだまだ続くのである。
新郎だけが終わってしまったのだ。
 見事に蓋が開かれた樽酒。新郎新婦の手によって皆様に注がれる訳だけれど、注いだら注ぎ返されるのがこの世の慣わし。
ここでどういう訳だか、朱蘭サークルのK松氏とのPK戦的なサドンテス注ぎ合いになってしまったのだ!!!

 お恥ずかしながら、そして残念ながら、ここから先は一切の記憶が無いのである。
このままでは余りにも締まりが無いので、皆様からの目撃談を総合すると・・・・・

・そのまま、朱蘭サークルの面々とクダをまく。
・そのイキオイで、大挙ステージへ!!朱蘭大学の応援歌を熱唱!!
・その応援歌が、エンドレスで延々と繰り広げられる。
・踊りまくってリードしていたK松氏が勢い余って大転倒!!後頭部を強打!!
・それを期に応援歌は終了・・・
・ここで何を思ったのか、新郎、いきなり新婦を抱きかかえる。
・何やらウケたので、悪乗りしてもう一度!!
・そのまま後方に倒れる。
・宴たけなわとなり、おひらきの挨拶。「私達はシヤワセです!」を連発!皆様を呆れさせる。
・「とにかくシヤワセです!!皆様も勝手にシヤワセになって下さい!」などと暴言を吐き、大量の座布団ミサイル攻撃を受ける。
・新郎、肩車をされて退場!!
・そのまま廊下に放り落とされる。

終宴

 場所を一般宴会場に変えてのオールナイトの宴も、朝日と共にお開きとなる。
退館時刻ギリギリまで至る所に転がっていたマグロは、いのぞーを最後に回収も完了。
様々な苦労(?)を乗り越えた我々の披露宴も、こうして幕を閉じた。
内山牧場での入籍発表の時と同様、最後はハチャメチャになってしまったけれど・・・・・
何はともあれ、ご協力頂いた皆様、参加頂いた皆様、有難う御座いました。
これからも宜しくお願い致します。

当分(永遠に?)、見苦しいアツアツ路線で行くと思いますが・・・・
お願い!!座布団を投げないで!!!!

ヨッパライにはマチガイありませんが、新婦なんです・・・
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