無より
こでは仕方がないのである。新日鉄本社の翻訳嘱託をしていたとき、ある若い課長が言った。「ジュ−ビシさん、あなたはキリギリスみたいな人生をおやりですね。あとで困らないかと、僕は密かに心配していますよ。」私はその忠言を無視した。「アリさんよ、キリギリスみたいに跳ねたり歌ったり、君にできるかね」と心のなかで呟いていた。
 まあ宜しい。キリギリスに生まれたのは仕方ないにしても、少なくとも蟻を見下げるようなことはしないほうがいい。今生はキリギリスの勉強をやった。来世は蟻をやるか。

11.友人
                                       在天神940226/0150
 最近、私より一回り下の寅の人で、旭丘光志さんという人と仲良くなり、本当に喜んでいる。昨日は彼が昔、『少年ジャンプ』に連載した劇画の「山頭火伝」を一冊読んで感動し、何度も涙を流した。山頭火については或る程度知っているつもりだったが、思い違いがだいぶあることに気がついて、アサオカ・コウジさんに心から感謝した。
 この人は多才で、肩書きが沢山ある。そのなかには、私には意味不明のものも入っている。ADデザイナ−(ADはア−トディレクタ−かもしれない)、劇画家、シナリオライタ−、小説家、評論家、ノンフィクション・ライタ−。テレビ朝日の『特別機動調査隊』のシナリオを書いた人と言えば、知っている人もいるかもしれない。
 旭丘光志さんは1938年1月2日に樺太の豊原市に生まれた。少年時代はロシア人と交際していたようだ。サイババにも興味を持っておいでなので、私と今年9月9日にプッタパルティに行くかもしれない。ご住所は354埼玉県入間郡三芳町藤久保366(電話0492−58−4730)なので、お近くのかたは、私同様仲良くなっていただきたい。突然、本のなかで人の紹介をやり出すというのも、規格はずれのことだろうが、気に任せて書く「気書き」をやっていると、ヒョイとした拍子でこういうことになる。中川気功については『医療気功の衝激』(さわやか出版)を書かれたし、東洋医学に関心を持つ人々のためには『東洋医学の名医63人』(実業之日本社)を出版された。お目目とお顔が丸い、おひげの似合う人情家である。
 彼にはいつかこの奥豊後に遊びにいらっしゃいと、昨日は長い手紙を書いた。きっと来られるだろう。私は世渡りが下手だから、売れない本ばかり書いているが、書いたものを売る秘訣を彼から習おうと思っている。サイババは私の家族の貧窮のために、サイ写真から純金の粉を噴き出すというようなことはなさらないが、ごく自然な筋道で良い友人をつなげてくださる。2月11日に大分市の中川気功の体験講演会にゆかなかったら、旭丘光志さんを知ることもなかっただろう。人生は「出会い」で決まる。
 私はサイババに棚ボタを祈っていたが、彼はボタ餅をくれないで、天から貴重な友人を授けてくださった。思えば、生まれてから数知れぬほどの師友や妻たち、愛人たちや子供たちを授けてくれたのに、この罰当たりめはどの人をも粗末にしてきた。会者定離(エシャジョウリ)と仏教では教えているが、エシャジョウリをせよと命じているわけでも何でもない。人間がいつまでも迷いのなかにいると、そうなるよと気づかせてくれただけだ。運命やカルマを越えるのが近道である。これを解脱と言い、輪廻転生からの解放という。親が死んだら悲しむ。これは当たり前だろう。親が死んで大喜びする奴は、遺産でも当てにしているのだろう。

12.「意」の正体
                                       在天神940226/2114
 番外だが、私のスブトの友への手紙をこのあとに挿入する。
 奇妙な手紙で、内容は難解ではないかと恐れるが、分かる人には分かるだろう。
 この手紙は長いので、通常の章と違って延々と続く。
 手紙の相手の田原さんは、私が昭和30年代にスブドを退会してから入会した人だ。