書簡集リスト
特に西洋物をまんべんなく聴き、エンジョイー本の晩年を送っていました。上質のグルメで、彼の好みはみな私にもピタリと合うものばかりで、羨ましいかぎりです。あなたにはそれはど興味はないものかもしれませんが、東京の趣味人の生態、映画や演劇の回想、特に食事の内容などつまみ読みしたら、面白いところも出てくるかもしれません。少なくとも、政治家や学者の日記よりは面白いはずです。私は鬼平に感心して、著者の人を知りたかっただけですが、予想もしない西洋文物のコネサール(connoiseur)だったので、驚いたのでした。固有名詞が洪水のように氾濫していますが、私の知っているものなどはほんの少し。きっと、この面ではあなたのはうが情報の幅が私よりずっと広いでしょう。とにかく、いつか送りますのでパラパラ目を通してください。ああいう趣味人は京阪神には少ないのではないかなと思っています。
 田舎の村では、5時台には朝刊は届いておりません。まだ、5:26分でしたから。気温は17度だが、滅法寒く感じ、火燵は最高のボルトを出しています。これは結果的に、ほぼ周期的にやってくる不眠の行みたいなものです。意志でやっているわけではないから、行というのはおかしいね。外が明るくなると、何かホッとして大あくびをして、眠れるかなと思っています。これが昼間の翻訳中になると、もう絶対抵抗しがたい眠気となって頻繁に襲ってきます。身体を動かさない生活は本当にいけない。都会に住んでいたら、私は毎日どこか歩き回っているでしょう。田舎道の散歩というのは私はほとんどしないのです。1週間に一回大分市に出るようにしたら、ずいぶん生き生きしてくるでしょう。これはほとんど幽閉性ウツ病なのでしょう。5:36AM、さて眠りを試みよう。

 0519/0236。クスリが効きすぎたか、ほとんど眠ってばかりの昼間、それでもカイロプラクティックの今月分の仕事(400字]75枚)を完了し、もう寅の刻に入っています。聞きかけのテープが気になって、イアフォーンで最後まで聞きました。私が追い出されたあとのYの声が入っていました。いつの頃だったか、よく覚えておりませんが、三重町から帰ってからの次の日は余韻があって、あなたや妙真に手紙を書いたのは覚えております。モーツァルトを静かに聞いていて、突然あの叫びが入ってくると、誰でも全くショックでしょう。世界中の家庭騒動でテープ録音をするなどは殆ど希有でしょう。ヤクザの喧嘩だって、ナマ録などそこらに転がっていないでしょう。喧嘩の種子を撒いておいて、けしかけてやらせて録音ということはできるかもしれないが、本人も巻き込まれてやはり録音などは無理だろう。まあ、耳汚しどころではない、耳破りですが、聞いてみてください。ポイドの演奏のあとに始まります。やはりひどいのかなあ。あの程度の酔いでも、わが家ではヤパイのだと、私は納得しました。ご尊父への暴言などは、やはりシラフでは言わないだろうから、やはり乱酔か。あのあとはオフレコになっているが、街では別に暴れもせず、おとなしく帰宅しましたが、今度はYたちが家出をしており、大分駅で野宿をしたとあとで聞きました。
 あなたあての3本とHHあての1本が、バッグのなかで眠っています。二晩ねむることになる。あすはYが発送してくれるでしょう。時差を付けたほうがいいと思って、この「猫ごろし」テープはこの手紙と一緒に後から送ります。仕事の切れ目は1〜2日、畑に出てトウモロコシなど蒔こうと思っていますが、天気の具合でどうなるか。昼間あんなに眠かったのに、今はまた昨夜のように目が冴えています。昨夜ほどのウツではないが、さりとてhighというほどのものでもない。
 昼間、例によってDECOP社長から嵩にかかった電話あり。要するに「ヤルノカヤラナイノカ」だったので、ヤリマスと返事をした。やはりだいぶ怒っていた。どうして、世間の人はすぐ怒るのかな。妙真にしても、怒らすような手紙を書いた覚えがないのに、向こうの都合で怒っている。Yにしても誰にしても、怒らせる種子を私は蒔くのかもしれない。そして、私自身もたまには怒って、何かの形で爆発する。相手が怒っているときは、大抵静かにしています。ごくごくたまには言い合いもある。しかし、これは最低であり最強ということになる。くわばら桑原。
 絶対怒れない、また怒らないというのは、やはり一つの徳です。あなたはその徳を持っている。やはり偉いと思います。人間だから多少は怒ることもあるだろうが、私から見ると、あなたのはほんの微々たるもので、周囲にははとんど影響が
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ないでしょう。知らずして人を怒らせることもないでしょう。あなたは温厚な紳士で通っています。それだから、安心して妙真はあなたに噛みつくわけだ。怒らせようとしても怒らないから、張り合いがなく自分に怒っています。私はあなたを怒らそうなどと思ったことはない。妙真にも思ったことがない。Yにも。ほとんど誰にも。自分が怒れば、もちろん相手は火のように怒ります。桑原クワバラ。
 今夜は背骨を伸ばして横になり、シャーリーの2冊目を読み切ろうか。飽きたら、起きて続きを書くかもしれません。920529/0324。

 完徹して、朝7時ジャストです。土曜日、30日、5月、平成4年。委細は同封物にありますので、これはテープ(for徹)をREHEARしながらのワープロです。
 山さんの拘置所送りの宅配便3000円ほか、郵送するもの沢山。これもいつ着くかわかりません。At God's best timeにね。元三は一晩のチップで120ドルにもなったというから、昨夜からの(向こうは朝の9時頃)90分以上の長電話のお金も、今は彼困らないみたい。和子さんが韓国その他に伝道海外旅行中なので、羽根を伸ばしているのかもしれんが、元気でした。恐い奥方がお帰りになると、また落ち込むかもしれんで、心配です。USに若干あるretreatsの一つに3泊4日の研修で、女と
いう悪ろしいものとの対決コンプレックス(incestにも由来する)が雪解けして、
とにかく元気でありました。開いているうちにと思って、手紙と声の洪水をニューヨークに流したのです。RETREATから帰ったら、あの悪臭ただよう紐育まで天国に感じられたというから、本当に不思議。眼からウロコが落ちた体験でありましょう。
 しかし、彼が私に電話するきっかけを作ってくれたことに感謝しています。
 一つ前の晩は半徹で、3時間くらい半睡半醍で過ごしただけで、夜はフラフラになっていたのに、待ち兼ねた元三の電話で急に元気になったのは、まことに不思議。
 妙真のムクレのきっかけを作ったのも元三だし、いろいろ不思議。来年9月ごろ、アリゾナに行くかもと言ったら、アドレス教えてということで教えました。あそこで再会ができるかもしれません。
 もう一つ、私からアドレスを知りたがったのは、本阪分教会でした。
 今、B面の復習中。音が終わったら、この手紙も終わります。
 元三は和子さんがいるときは、タバコをやりたくなっても、戸外で吸うのですが、昨夜の電話中では、私に断わってスモークをやっていました。午後4時までは家にいて、のんぴりしているのです。朝刊配達は貧しい女に譲ったということです。これからは、彼はまたパパ関係の翻訳や、各国各地の人つなぎをやれるでしょう。和子さんの累積借金を崩すところまでは行っていないそうですが、生活費はだいぶ入れることができるようになったらしく、奥様は後顧の憂えなく海外伝道に飛び

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