606 京都市左京区○○○町0000
愛する恋しいお貝に!
                                        在鳥屋970129/0154
 蟻さんが美麗な恋文用の紙を贈ってくれましたので、それを使います。
 あなたは本当に立派な二枚貝ですね。帆立貝よりも、やはり浜栗のほうです。
 ホタテは大味で、特に近ごろは養殖物ばかりで、つまりません。蛤の養殖はあまり聞きませんが、きっと朝鮮あたりの清い海で育ったものを輸入しているのかもわかりません。 僕もときどき外から蛤を買ってきて、塩汁にします。本当は、三つ葉でも浮かべたいのですが、手元にアラヘンし、それだけのことに再外出などする「気」はないので、ただのお塩。

 昨夜は日女からまたファクス来。4000円もする何やら解らない「たまごっち」という玩具です。あなたとの天理デ−ト成らずで浮いたお金をそれに充てます。とにかく、ねだりぶりがストレ−トで、申し分なしです。ほかの21人の子女はそんなことをしなかったよ。(あの子は特別。)

 君も特別。そりゃキミ、『AZのエロス』を見ると、それぞれのオンナがすべて「特別」のように輝いて見えるかもしれない。でも、本当はみんなフツ−の女だったのかもしれない。だから、神定めの期間が過ぎると、みなどこかに行ってしまった。
 おKよ、君はどこか違う。それを11月あたりから毎日考えてきました。集中です。お計かお刑かお軽か知らないが、僕の可愛いKKはやはり神妃(シンピ)と見えてきた。神妃は同居しないでいいのだからラクです。(クリシュナの事跡を参照してくれ。元三に頼めば、一番いい参考書を送ってくれるよ。その際、リンリンと鈴の音を鳴らしても鳴らさなくても、どちらでもよろし。)

 僕のハマグリ君! 昔の浜にはいくらでもあのクリがあった。足でクリクリすれば、感触で採れた。クリトリの秘訣などなかった。クリの巣などあちらこちらにあった。浅蜊はすこし汚い海の浜にいたよ。だから、江戸の人は「アッサ−リ死んじまえ」と、行商人の売り声を聞いたそうだ。蛤は庶民のお口には入りませんでした。欲しければ、きれいな海まで歩いて、そこで採るのだな。家族ぐるみで。
 品川のお台場あたりは駄目だから、家族は川崎にでもピクニックしたのではないかね。
 おっつかっつの嫌いな亭主は、こう言いました。「おい、九十九里浜まで旅をしないか」女房おハマは、「あい」と答えて、一人おんぶして、ふたりの子供の手を引いて、旅に出ました。途中何泊もします。ご亭主・リン助は何やら博打で稼いだような大金を持っていました。ところが、東金(とうがね)の宿に一家が泊まったとき、不運がリン&ハマを待ち構えていたのです。いい賭場がありました。田舎じゃけん、江戸のベテランにはチョロイ儲け場と見えました。それが運のつき。付きだか尽きだかわかりゃしまへんが、そこに女がからみました。壺振りの弐拾弐〜参歳の女が「絶世の美女」で内股をチラチラさせるもので、リンスケの勘は大狂い。宿の払いも出来ず、翌朝は家族5人が入牢(ジュロウ)の憂き目となったのです。

 その後のお浜の涙ぐましい努力の物語は長くなるので、この際、省略します。要は、リンスケが完全にハマグリに降参することによって、一家全員が江戸に帰ることができたという奇跡の話です。(小説家なら、この辺を詳しく書くよ。)

 この便箋には神秘的な写真を貼ります。それを剥いで、あなたの財布に入れておいて下さい。またもや奇跡が、東京で発生します。ではさようなら。

                                               りんごのおりん

追って書き
 その紙は私のワ−プロに合わないので、単に添えるだけにします。東京にレタ−するときペンでお書きなさい。
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