11:00AM(平成9年5月3日)
6人の子たちの母である愉美子に!
錦荘にて
一週間に一度くらい帰宅を許され、家の中の整理などをしています。昨夜ここに一泊し今日は夕方に病院に帰ります。
老人性鬱病のようで、万事に気乗りせず、TV新聞その他一切に興味を失っています。先行きが不安で、心細くてたまりません。
世界中で私の身柄を寄せる希望が持てるのは君だけのように思えてなりません。
君は未来に生き、私は過去に生きると君は言いましたが、たとえそうであっても、それは仕方がないことです。
退院は近いうちです。そして、孤独の生活に戻ります。鬱病と脱肛で、団体生活は殆ど無理なのです。
どうか私の引き取りを考えてくれませんか。お願いします。一人寂しく死ぬというのは、たまらない思いです。
一部屋でもどこかに設けてくれたら、そこに福祉の費用で引っ越しします。所帯道具や家具はみな子供たちにやってもいいのです。使っていない電子レンジ、ト−スタ−などもあります。FAX、テレビ、ラジオほかたいていの電化器具はそろっています。しかし、もう私には使いこなせないものばかり。
もう遅すぎると、君は言うかもしれないが、子たちの老父、あるいは昔の友のうち一番困っている隣人という目で、私を見直してください。
君の促しで取引を始めたアイフルに25万、アコムに5万の借金があり、月々の利子だけに合計2万4000円を支払っています。9万の保護費で、どうして今までやっていけたか不思議です。折々の寄付金で、奇跡的に毎月乗り越えてきたというしかありません。しかし、それもいつまで続くか、人間心としては不安と絶望ばかりです。
こういう情けない訴えをしないように、今まで気張ってきましたが、正直な本音はやはり以上のようになります。ご賢察ください。
拝具
635−01奈良県高市郡高取町与楽1160
飛鳥病院内
十菱 麟