書簡集リスト
          12月11日 1.42PM (手書きの手紙をカナ遣い、誤字などそのまま入力)

 機械がとうとう指のいふことを聞かなくなりました。仕方なしに指を使ひます。手紙もそろそろ書けなくなるのでせう。使へるのは舌ばかりです。
 そのうち物も言へなくなるでせう。さうなる前に一度会ひたい。目で物を言へれば上等です。
 欲はますますなくなりました。椅子に坐ってゐるのもシンドイのです。かといって座机に坐ってゐると立つことができなくなるのです。
 どうしていいか別りません。寝たきりになるのですか。下のものをとりかへるのでは五月も介護はできないでせう。信仰も何の役にも立ちません。散歩はできません。車椅子を使ふ力もありません。風呂にも入れません。それでも食事を2回はします。尿と糞にまみれて週2回はキレイにしてもらへるのでせう。
 いっそ安楽死を望みます。入院して時間死がもう一つの道です。五月は自分の住むところがなくなるのでそれは考へたがりません。
 ただ書いてゐても仕方ないのです。どうせかけなくなるのだから。
 それにしてもテレビ世界は躁だらけ。おちついてをられません。早く消えないかな。一分一厘も関心がないのです。

                           ―◇―

 人間が顔をしかめたり笑ったりみんな無意味です。さういふことも書くこと自体が無意味です。それで結局ゼロにします。
 残るものは無音・無画です。
 酒はうまくもまずくもなく、只酔ひます。そしてションベンの恐怖です。一合止めの理由です。
又無飲に戻ります。火の7.18PM。時間を刻んで生きてゐるのがふしぎです。これぢゃ大抵の人は死のことを忘れてしまひます。そのように人は創られてゐるのでせう。
 シラフに戻りつつあります。
 でも足のヨロヨロは変わりません。天気がわるく、寒く散歩には出ないのです。ねた切りになりますか。
 そして8時にミン剤をのみます。
 今は7.29。
 これだけ無に徹した人間はめったにゐないでせう。インターネットの正反対です。

 7.34だがミン剤をのまうか。どうせ効かないのです。
 9時14分 寝酒に転じました。枕もとに便器があるのを頼りに。あとは神まかせです。これも冒険です。酒で身体のかゆみがにぶって睡気オンリーになればいいのです。
 昔は成功したが、今は? 裕次郎みたいに猛烈な酒症で劇死といふことは私にはなささうです。
 兄貴は認めないかもしれないで 弟は夭折の天才だったかもしれません。「上を向いて」もさうだが夭折の天才は多い。
 長生の天才は良寛がゐる。いまはの際で「死にたくない」と言った人。
 みな私とはちがう。私の結論をみたい。もう相当フラフラしてポータープルトイレに行くのも危かしい。
 切れました。終わります
                                                    LYN



(B5無地用紙に6枚)
アリサン!