団塊の世代に提言
文部科学省公認登録技術士(コンサルタント)阪本慶二

        

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        会社倒産の日 帰りに飲み屋で         

 立ち飲み屋 穀潰し共の乾


帰りに立ち飲み屋に寄る習慣
は失せない。
その顔触れも決まっている。
本田、西田、松本製造部長、
私、それに女子社員も加わ
る。
 松本部長は最年長である。
「ま、乾杯といこう」
本田は、いつまでもこざわり、
「サギ共の乾杯か」
西田、
「穀潰し共の乾杯や」
女子社員は、その意味が分
からない。
「サギ?。穀潰しって何よ」
「物を買って金を払わんや
つ、だましとるや
つはサギや」
「私ら、そんなことをした覚え
がないわ。私らはサギに会っ
たようなものよj
「なるほど、うまいことを言う
な。そう言え
ば我々もサギに会ったりサギ
をしたりしたこ
とになるな」
「人聞きの悪いこと言わんとい
てよ。他のお客きんが聞いて
いるわよj
「良い格好なんかしなくても良
いようになっ
てしまっているよ」
「次に穀潰しって何」
「仕事をせずに月給をもらうや
つらのことだ
よ」

社員は会社の財産

「私も同類になるの.昨日まで
一生懸命に働
いてきたのに、穀潰しなんて、
ひどい。従業
員は会社の財産や、と言われ
てきたのに」
 本田は、カウンターをたたい
て、
「ハツハッハ、面白い。会社か
ら一切、持ち出したらいかん
財産が抜け出して、今、飲ん
でいる。地裁はどう言うかな」
「アルコールの匂いをかいだ
だけで、ふざけるのね」
 年長者は話題を変えて、
「それはそうと、本田課長、今
日納めるよう
になっていた製品のことはか
たがついたか」
「うん、山崎汽船から電話が
かかってきたか
ら清算会社のことを話した」
「相手は納得してくれた」
「いやいや、怒っていた。こち
らは、私の力
ではどうにもなりませんので、
と、そればか
り繰り返した、それ以上何も
言えなかった」
「うん、それだけしか言えん
な」
「相手も困っているやろうけれ
ど、どうしよ
うもない」

倒産談義

「とにかく、明日から得意先や
債権者から電
話が殺到する。おしかけてく
る。難儀なこと
や」
 女子社員は男共と違う。
「債権者が来たら役員さんに
会ってもらえば
よいわ、社員の責任ではない
わよ」
 資材や機械の購入も担当し
ている私、
「いや、そうはいかない。物を
買うときの交
渉を私一人でやってきた物が
ある。役員が関係していない
物がある.債権著は私のとこ

に来る」
「どれくらいあるの」
「さあ、四、五万ぐらいのところ
から数百万
のところがあるから三千万ぐ
らいかな、四カ
月の手形を切っているから、
はっきり分から
ん」
「手形を渡している分は私の
ところで分かる
わ、明日調べておくわ」
「たのむ.ところが、昨日、入
った機械は、まだ請求書も来
ていないし、内の資産になっ
ていない。こういうのは返却し
ようかと思うのだがね。これは
サギやと言われたら答えよう
がない。このほかにも、まだ
手形の決済ができていないも
のがある。所有権がこちらに
移っているかどうか分かりにく
い物もある。
 今だったら、それらの機械を
良い値段で引
き取ってもらえる物もある」
 こういうことについても女子
社員の考え方
は違う。

 白い目

「そんなことしたら、従業鼻は白い日で見る
わ。自分だけ良い子になろうとしているよう
に見るわ。従業員のことを見捨てて得意先を守ろうとしているように見るわ。私たちの退職金になる資産を少なくすると反対するわ」
「そう言われるとつらい。だけどね、こちら
は、注文書も出さないで、電話一本で、何十万も何百万円もする物を納めさせたこともある」
「それは、役員さんに責任をとってもらった
らいいは」
「いやいや、役員と購入先の連中は会っていない、私だけが会って交渉してきた相手もある、役員に言ったら、俺は知らんと、そっぽを向くだろうよ」
「逃げるのがうまい役員が多いこと、こういうことになると余計に逃げたくなるだろうね」
「まったく、まったく 役員でなうても、だ
れしもよ」。
  
 福沢諭吉の言 その二
      世の中で一番寂しいこと

「そうね、ところで、部長さん、明日、会社
で、私たちは、どのような仕事をしたらよい
の」
「分からん、昨日までは、明日やる仕事の予定をキッチリ立てることができたが、今日かは、わからん」
「あぁ、そうだ、福沢諭吉が言ったという言を、もう一つ思い出した。世の中で一番寂しいことは、する仕事が無いことや、ということや」
「ほんとね、今のような立場におかれてみて、本当に、寂しいこと、と言うのが、よく分るわ。もう一つといったけれど、他にもあるの」
「うん、世の中で一番悲しいことは、うそを
つくことだ、とのことや」
「そう、でも、今、私はうそをつくことを、
そのようには感じていません。私たちは、今、うそをつかなくても良いから。でも、うそをつかなくても良いときは平和なときだと感じるわ。明日から男の人たちは、うそや誤魔化しのような、心ないことを言わなければならなくなるかも知れませんね」
「平和なとき、心ないこと、とは、うまいこ
とを言う、全くだ。だが、今日、その平和を
破って、心ない大うそをついてきた。悲しいことだ。これまで諭吉の言を軽く聞き流していたが、今日は、今は心に響く。一番寂しいことというのもね」
「明日から、悲しい寂しい日になってしまう
の」
「寂しいことがあっても悲しい日にしないよ
うにしなければならない」
「そういう事から逃れられるのは、ここの飲み屋に居るときだけになってしまう」
「ここで毎日飲んでいたら、債権者に恨まれるわよ」
「そうやな、世の中が狭くなった。心も狭く
なってしもうた。帰ろう」





             ジャカルタで工場建設 技術指導
 
ジャカルタ 
 習うこと見逃したらあかん
 酋長に魅せられて

 技術士の資格をとり勤めて
いるとき、某商社部長が機械
メーカーの部長を連れてきて
言う。
「ジャカルタへプラント建設と
技術指導に行っていただきた
いのです。期間は一年ぐら
い。P社という会社へです。P
社の社長は酋長の子孫で、ラ
ジャーさんと言いましてね、イ
ンドネシヤ語のラジャーは英
語のキングと同じだそうです」
 ジャカルタは暑い、なのに、
キングの魅力に惹かれ、暑さ
を忘れさせられてしまい、即
刻、引き受けたくなった。
 だが、酋長の子孫が社長の
工場だったら、現地の人々だ
けが居るのだろう、インドネシ
ヤ語だけが通じるのだろう。
われ、インドネシヤを知らな
い。それでは、彼の国で技術
指導なんかできっこない。

正社員がやりたくない仕事

機械メーカー部長に、
「おたくの社員に指導に行っ
てもらったらよいのではない
ですか」
「ええ、でも、うちの社員は
日々の仕事に追われていま
す。その仕事を一時、他の社
員にやらせて外国へ行き、帰
ってくると彼の仕事がなくなっ
ていますから、皆、行くことを
嫌います。それに、うちの社
員ぱ機械のことしか知りませ
ん」
社員がやりたくない仕事。こ
れが、門外業務者がやるべき
仕事。それに、幅広い技術経
験を要する仕事。これが技術
士業務だ。
「ちょつと考えさせてください」
「ええ、急なお願いですから。
考えていただいて」
とのことで、この場は終わっ
た。
              
            l略

ジャカルタの日本美人(道草)

 買い物を済ませて帰ると、
支店長宅の食堂
に、ジャカルタ駐在日本婦人
たちが集まって
いる。 二十歳代から四十歳
半ばの女性たち、十名ばかり
で寿司を造る。
 日本語とインドネシヤ語で
井戸端会議をし
ながら。
 会議のなかで、
「ナシ」
と艮く言う。
「ナシ、とは何ですか」
「御飯です。ナシも知らないの
ですか。男の
人たちは良いね、英語が通じ
る所で仕事をし
ているから。私たちの仕事場
では、この国の
言葉を知らないではとおらな
いのよ」

「私の仕事場も英語が通じないのです」
「インドネシヤ語を習わずに指導に来たのですか」
 二少女と同じことを言う。
「通訳を手配してくれるとのことだったから。
来てみたら英語の通訳でした。仕事場で必要な言葉を教えてほしいですね」
 三十歳過ぎのイブ、
「私も英語が通じると主人に言われて来たの。ここに来て二か月なの。一番後輩です。最初に覚えた仕事場での言葉は食べること。ご飯はナシ。お米はブラス、水はアイル。魚はイカン、だったかな」
 彼女の先輩らしきイブ、
「野菜はサマル、サマラン。じやがいもはク
ンタン。すいかはスマンカ。牛乳はスス。お
菓子はクエ。覚えやすい言葉があるのよね」
「覚えやすい言葉ですって。ちょっと待って
ください書きますから」
次の先輩らしき人、
「そうね、それにひかれて次々覚えた。本を見ないでこの国の人々と付き合っているうちに、無理無く、なんとなくわかり、覚えるようになっていったわね。サケはサレム。コロッケはクロケツト。歯磨きはシカットギギー。薬はオバツ。石鹸はサブン。お花はブンカ――――――」
 あらあら、この先輩は後輩に教えようとし
ているのではないだろうか。私にだけではなく。
 別のイブ
「つぎに知っておきたかったのは住まいのこと、家 ルマー、部屋 カマル、ドアー ピントゥ、電気 リストリツ 電灯 ランプ、水風呂 マンディ、トイレ クチル」
 あらあら、後輩に教えようとしているのだろうか、いやいや、そうではなさそう。
 言い方、態度は、自分の智識をひけらかそうとしているのでは無い。
先輩たちは、教える義務も責務も義理もない、自分たちの経験のうちから良いものだけ、、自分が必要だったことを相手に知らせてあげようとしているようだ、無理に覚えよと言っているのではなく。よって、こちらは、返って知っておきたくなくる。


     カラチでプラントギャランティ 
              出発前商社員との話し合い

どんぶり勘定・プラント勘定
 物造り持論

 数日経って、商社員が電話
でお宅にお伺いしたいと言っ
てきた。彼の商社員とは永い
付き合いで、無下に断れな
い。しかし、家に来られて粘ら
れるのは困る。よって、駅前
のすし屋で、ビールを飲みな
がら難しさを説こうとしたので
ある。
 商社員二人と機械メーカー
社員がやってきた。彼らは、
物造りのことを知らない。まし
て、プラントのギャランティの
難しさも知らないから私の考
えを説明しておく必要がある。
「手作業を含め、何もかも引っ
括めてやるのは、どんぶり勘
定をすることになります」
「どんぶり勘定とは」
「日本の飲み屋へ三人揃って
入ると、一枚の
伝票を持ってくる。だれが金を
払うのか問わ
ないで。食べる方は名々、好
きな物を食べる。
料金は一枚の伝票に記され、
払うときは引っ
括めて払うことになり、あとで
割り振りしにくくなり、等分して
割り勘にする。私が、これまで
行った外国では一人ごとの伝
票をつくり、払う人に渡す」
「それと、プラントのギャランテ
ィとの関係は」
「個々の機械の生産量を表示
していて、それ
を確かめるのは容易だが、プ
ラントを引っ括
めての生産量をギャランティ
するのは難しい。
それに、手作業があると熟練
度が問題にな
りますから、さらに、やっかい
になる。

和定食と洋定食 物造り持


「どうだか、詳しいことは知ら
ないが、和定
食と洋定食の遠いが気にな
る」
「プラントギャランティの話をし
ているのに
飲み屋の話がでたり、定食の
話になったり」
「このはうが分かりよい。専門
的になると味
がなくなる。和定食は、造りや
煮物、肉、吸
い物、御飯を揃えて出し、食
べる方は、あれ
これ並行して食べまわす。早
い人は十分たら
ずで食べ、急がない人は一時
間かかって食べてもよい。
洋定食は,一品毎に出してくるから並行食べができないようになっている。ほかのことでも同じような習慣があるのかも知れない。どちらが良とかか悪いとか言えないが、これは、ちょっと、例えにならないかな。でも、並行作業ができるときとできないとき、やろうとする人と、やる気がない人で適いが生じる。物造りのときは機械の稼働率も変わる」

ワイフと子供 物造り持論

「機械の能力が同じでもですか」
「同じ洗濯機を使ってワイフが洗濯するのと子供が洗濯するのとの適いですよ。ワイフは洗濯機が動いている間に次の洗濯物の用意をしたり、干し物をしたり。機械が止まると、すぐに洗濯物を入れ替えて機械が止まっている時間を短くする。子供は、そこまではできない」
「そのうちに、ワイフに追い付くのでは」
「追い付こうとする。だが、失敗をするから、ワイフは一つ一つの作集を確実にできるように数えてから次に、速く出きるように教えようと考えている。ここが、問題なのです。確実にを長く続けていると馴れてしまって、速くをプラスしにくくなる。馴れ、習慣ですね」
「確実、に、速くをプラスする時期が大事
だということですね」
「そうです。余分なことを言いましたが、今
ほかに急ぐ仕事を抱えているから」
 と、取り敢えず、代理の二名に先発してもらうことにした。


     ドイツ伝統の町アーレンで  技術修得
  
ドイツアーレン 
認めてもらったら確り応えな
あかん

ドイツ伝統の魅力

 ドイツのアーレンはドイツの
伝統を保ち続けていると見ら
れる町だ、そこえ行ってくれな
いかと問い掛けられたとき、ま
たまた、ドイツ語をしゃべれな
いことを念頭から無くしてしま
い、行きたくなってしまった。
その経緯から。
某社から電話、
「うちの専務と開発部長が用
があるのできてほしいのです
が」
とのこと。その社を訪ね、専務
と開発部長にお会いした。
その社の専務、
「ドイツのD社に、技術供与料
を払って技術修得できるよう
に契約している。よって、D社
へ技術修得に行ってもらいた
い。D社は、アーレンという町
にある。アーレンはドイツの伝
統を保ちつづけていると見ら
れる街だった 貴方は海外業
務経験があるので適任なの
だがね」
「どのような製品ですか」
「家庭用品の製造です。細か
い小手先仕事のことについて
は、若い者二人に修得させ
る。けれど、それより先にドイ
ツに行って、全般的な設備や
生産方式修得から始めてほし
い」
とのこと。
「技術修得して日本で工場を
建てるのでしたら相当長期の
業務になりますね」
「そうです。月勘定ではなく年
勘定になる永い仕事。中途半
端になるのは一番困る。途中
頓挫なく成功させなければな
らない、ドイツでも長く滞在し
てもらわなければならない。
だから、ちょつと考え見てく
れ」
とのことで、この場は終わっ
た。

伝統の町 アーレン(道草)

 これで、働く工場と、住まう
ホテルの様子
があらかた分かった。
 そのあらましを日本に報告
しようと、ホテルの部屋で手紙
を書いてるとき、我に返った。
 今、ドイツのどの辺りに居る
のか分からな
い。言葉に心を奪われて己の
居場所を見定めるのを忘れ
ていた。
 それが不安になった。山の
中で道に迷った
のと同じ感じになってしまった
のである。
 日本で調べて来るべきだっ
た。「うかつ」
だったと気付く。だが、日本で
はアーレンが
載っている地図は見当たらな
かった。
 ジュッセルドルフで地図を買
うつもりだっ
たが、迎え人と、通訳云々に
ついて、ごたご
たしてしまって地図のことを忘
れてしまって
いた。
 明日は、休んで、地図を買
ったり、いろいろと買い物をし
たり、水屋を探そう。
 
翌朝、朝食堂に行く。
 ボーイに、
「グーテン、モルゲン」
とあいさつしたら、けげんな顔
をして返事を
しない。
 皆があいさつを交わしてい
るのを聞くと、
「モルゲン」と「モーゲン」の合
いの子のよ
うに言っている。
 ときには頭に、小さく「グ」を
入れること
もある。
 ゆいいつ、知っていたドイツ
語の
「グーテンモルゲン」
も通じないのである。
 
 ゆいいつ、知っていたドイツ
語の
「グーテンモルゲン」
も通じないのである。
 
マッチと汽車(道草)

朝飯は、ドイツパンを三種類、
竹で編んだ
皿状の入れ物に入れ、コーヒ
ーとミルクを添
えてある。
 黒パンは見かけは良くない
が、食べ馴れる
とおいしい。それを二個食べ
て、駅で地図を
買うべく、フロントに行き、マダ
ムマスター
に駅を尋ねたが通じない。


 そのときホテルの前を列車が走った。それを指差し、両手を両脇でグルグル回し、
「シュツ、シュツ、シュー」
と、言って、両手を停めた。
 そのとき私は火がついていないタバコを指に挟んでいた。
 彼女は、
「オーオー」
と答え、マッチを「シュー」と摺ってタバコ
に火をつけてくれたのである。
 
あー 言葉は無用(道草)

あー 言葉は無用。しやべるまい。ポストオフィスを聞くまいと決め、ホテルを出る。
 前にレールが通っているから、それに漆うようにして行く。
 少し坂を登ると左手に風車小屋があり、右側には公園があって、樫科に似た木が立ち並んでいる。
 山奥ではないが、町並みを少し離れると緑がある。
 
エアーメイル 初笑い(道草)

公園の傍に郵便局があった。
 窓口に手紙を出して、
「エアーメイル」
局員は、返事をしない。
こちらは、カウンターに右手を突き、
「ドイツランド」
左手を突いて、
「ヤーパン」
次に右手を上げながら、
「プーン」
と言い、左手に載せた。
 局員は手紙に金額を書いてくれた。
 総ての局員はこちらを見物していた。
 局を出て、我ながら感じ入った。わずか三日の間にこのように即座にゼスチャー表現ができるようになったのである。
 だが待てよ、相手は
「エアーメイル」
を知らないと表現しなかったのに、こちらは、言葉は無用だ、通じないと決め込んで、カウンターを突き
「ブーン」
と言ってしまった。
 こののち、局に行くと、手紙を出して、
「ブーン」。
相手は、
「オー、オー」
と答えてエアーメイルにしてくれた。
 局員は、エアーメイル、ルフトポストは日本語で「ブーン」だと解釈していたのではないだろうか。
 この、また、のちのち、局で「プーン」と
称して手紙を出し、局を出て一人で笑うこと笑うこと、アーレンでの初笑いである。