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痙攣的 モンド氏の逆説/鳥飼否宇 | ||||||||||||||||||||||||
2005年発表 (光文社) | ||||||||||||||||||||||||
本書に収録された各エピソードは、いずれも“モンド氏”と“アイダアキラ”の物語となっています(下の一覧表参照)。
各エピソードにおける“モンド氏”と“アイダアキラ”の役割の変化は、何だか意味ありげではあるのですが……。 なお、“アイダアキラ”の元ネタは、「廃墟と青空」の冒頭に引用されているライナーノーツの筆者・間章(Aquirax Aida)だと思われます。また、イカにはいくつかの属がありますが、“Aida属”は存在しないようです。 | ||||||||||||||||||||||||
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・全体構造について
まず、他の作品の登場人物でもある谷村警部補らが登場している「人間解体」は、作中の現実レベルでの物語と考えられます。そして、これと整合する「電子美学」のラスト(所長であるクラウス殿下が老田美香を〈ハローガロ〉から救出する場面)も、作中の現実レベルと仮定します。 次に、前述の砂井田と八田の台詞(304頁)から“副所長の愛田亮”なる人物は現実には存在しないと推測できるので、「電子美学」における“愛田亮”が登場する部分は、すべて〈ハローガロ〉による仮想現実だと考えることができます。一方、入村徹・椹木貫・瀬古銀子の三人は実在するようですが、「廃墟と青空」・「闇の舞踏会」・「神の鞭」はそのまま仮想現実と考えていいでしょう。そして“愛田亮”が実在しないとすれば、「電子美学」冒頭の“アイダアキラ”が三人に話しかける場面(222頁半ばまで)もまた仮想現実だということになるのではないでしょうか。
ここで、「人間解体」における“クラウス殿下”(Aida aquirax)が そうすると、仮想現実に登場する“アイダアキラ”(相田彰・会田昶・英田暁・愛田亮)とは“ヒト―イカ”のインターフェイスに組み込まれた“クラウス殿下”の(擬似)“人格”だとも考えられ、結果として下の図のような構造が浮かび上がってきます。
そして、「廃墟と青空」から「神の鞭」までの“寒蝉主水”は、所長のクラウス殿下が“モンド氏”にちなんで仮想現実に組み込んだ設定とも考えられます。「電子美学」における“モンド氏”の存在が宙に浮いてしまう感はありますが、“愛田亮”として仮想現実に登場していた“クラウス殿下”が途中で(“殺された”のを機に?)“モンド氏”という設定に乗っかったとも解釈できるのではないでしょうか。 なお、この解釈が正しいという保証がまったくないのはもちろんですし、解釈しようとすること自体が野暮だということもいうまでもありません。 2006.05.26読了 | ||||||||||||||||||||||||
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