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レイニー・レイニー・ブルー/柄刀 一

2004年発表 カッパ・ノベルス(光文社)
「人の降る確率」
 とっさの計画にしては妙に細かいところまで考えられているのが笑えますが、まずまずの出来だと思います。特に、詠司少年の目を死体に向けさせないために熊谷を動かすところなどはよくできています。

「炎の行方」
 まず、死体の“出現”によってアリバイが成立するという状況がユニークです。そして、火事場の混乱と立ちこめる煙を利用した大胆な計画も面白いと思います。

「仮面人称」
 トリックだけをみると、C.ディクスンの某作品((以下伏せ字)『魔女が笑う夜』(ここまで))に通じるところがありますが、朱乃の着けた左半面だけの仮面という小道具が効果的です。そして、演者と観客の逆転という構図が印象的です。

「密室の中のジョゼフィーヌ」
 鍵が壊されていた理由が秀逸。もう一つの事件との絡みは面白いのですが、ややまとまりを欠いているように思います。

「百匹めの猿」
 ミステリ部分は蓋然性の殺人で、これ自体はまずまずだと思います。問題は“解決”場面で、『アリア系銀河鉄道』のようなファンタジー・ミステリと考えればいいのかもしれませんが、あまりにも唐突に感じられます(初読時にはわかりませんでしたが、南美希風(『OZの迷宮』など)らしき人物まで登場していますし……)。作中で紹介されるトンデモ理論が伏線になっているといえるのかどうか……。

「レイニー・レイニー・ブルー」
 “北かいどうの、ねっかい”というネタはなかなか面白いと思います。ありそうな間違いでもありますし、“北かいどうの”とわざわざ書いてあるのが手がかりになっているところもよくできています。
 人間消失の真相は、ミステリとしては完全に反則ですが、これはこれで悪くないでしょう。

「コクピット症候群」
 同じ酸欠死でありながら、アパートの一室でのガス中毒からダイビング中のエアー切れへと、状況が一変してしまうところが非常に鮮やかです。203号室だけでなく、103号室でもガスを出していたというトリックは巧妙ですし、被害者の髪が濡れているのをごまかす手口も見事。

2005.04.11読了

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