あれこれ(その1)

ジェフくんの一日 トラブル 距離感 接近 糞とペレット


 飼育中のできごとや、思いついたことをあれこれと書いていこうと思います。間違いや、悪影響を与えそうなことがありましたら、遠慮なくご指摘下さい( owlish@msj.biglobe.ne.jp まで)。


1.ジェフくんの一日 (2002.01.26)

 まず朝〜午前中は水浴びの時間。数日に一度、人間が眠っている早朝か、留守にしている間にこっそり水浴びします。濡れた羽根では飛んで逃げることができないので、絶対安心な時しかやらないのです。
 昨年の大晦日から今年の元日にかけて徹夜していた時に、ジェフくんの部屋から水音が聞こえてきたので「よっしゃ!」と観察に行ったのですが、ジェフくんは慌てて水入れから飛び出してしまい、私が見ている間ずっと警戒している様子。仕方なく隣の部屋に戻ると、しばらくしてからまた水音が聞こえてきましたが、今度は邪魔しないように一生懸命我慢。というわけで、私はいまだに水浴びの姿を見たことがありません(涙)。

 昼〜夕方は木箱の中でぼーっとしているようです。

 夕方になると、木箱の扉を開いて部屋の中に放すようにしています。しばらく飛び回った後、お気に入りの場所へ行って眠ります。熟睡している時には、なぜか顔は横向きです。
 部屋に放す時間を限っているのには、二つの理由があります。まず一つはの問題です。ある程度場所が決まっているとはいえ、一日中放していると被害が甚大になってしまいます。そしてもう一つは、ジェフくんへの精神的な影響を考えてのことです。いくらプリント個体でも、四六時中巨大な生き物(=人間)と接していれば、なかなか神経の休まる暇がないのではないかと思うので、少なくとも木箱の扉を隔てた安全な空間で落ち着くことのできる時間を作ってあげたいのです。

 お気に入りの場所で寝たり起きたりを繰り返した後、夜(最近は深夜になっていますが……)はようやくの時間です。この頃になると目をぱっちりと開いていて、「ぴゅう!」と鳴き声を上げます。どうもこれは、“お腹がすいたから、早く餌の準備して!”と訴えているようです(人の顔を見ながらだったりしますし)。たまにジェフくんが鳴く前に餌の準備を始めると、それまでおとなしくしていたくせに慌てて「ぴゅう!」と鳴き始めるあたりがお間抜けです。

 餌やりは基本的にフィストコール(手に呼ぶ)。我が家の場合は、夫婦でかわりばんこに呼びます。狭い部屋なのですが、できる限り色々なコースを飛ぶことができるように気をつけています(ジェフくんが飽きてしまったりするので)。高低差をつけるのも有効なようです。
 必要な量を食べさせたら、木箱の中に呼びます。ある程度満足すると、自分から木箱に入ることもあります。入ったら扉を閉めて終了。所要時間は、餌の準備(解凍してさばく)に30分弱、餌やりに30分弱というところでしょうか。やがてジェフくんは、止まり木にくちばしをガリガリとこすりつけて掃除を始めます。

 道具などを片付けたら消灯。ただし、暗くなってもジェフくんは寝るわけではないようです。人間が寝るときにも、止まり木から止まり木へと飛び移る音が聞こえてきます。さすが夜行性

 ジェフくんの一日は、だいたいこんな感じです。




2.トラブル (2002.01.26)

 先日、ちょっとしたトラブルがありました。部屋に放していたジェフくんが妻の腕に止まったところまではよかったのですが、妻が着ていたトレーナーの袖を思いきりつかんで放さなくなってしまったのです。「これは自分の獲物だ!」と目で訴えています。さてどうしたものか……?

 とりあえず、私も手伝ってトレーナーを脱がせることに成功しました。これで妻は自由の身です。あとは二人で懸命にフィストコールをしたのですが、やはり餌なしではつかんだ獲物(トレーナー)ほどの魅力は感じられないようです。挙げ句の果てに、トレーナーをつかんだまま飛び立とうとします。「どのくらいの重さかわかってるかい?」小一時間問い詰めたいところですが、そうもいきません。ジェフくんはさすがに飛ぶのをあきらめたのですが、トレーナーを隅っこにずるずると引きずって行ってかじり始めてしまいました。これは何とかしなくてはいけません。

 私の頭の中を、ウェブ上で得た知識と動物堂での経験が走馬燈のように駆けめぐります(ちょっと違うか……)。「暗くすればおとなしくなるはず……」

 早速懐中電灯片手に明かりを消していきます。トレーナー(とジェフくん)の位置を確かめてからおもむろに懐中電灯も消し、暗闇の中でトレーナーの反対側の袖をジェフくんの頭があるあたりにかぶせます。暴れている様子はありません。トレーナーを軽く引っ張ってみると……手応えがありません。手放してくれたようです。そのままトレーナーを一気に回収し、少しずつ明かりをつけていくと……ジェフくんはちょっとびっくりしているようですが、パニックの気配はありません。“獲物”がなくなってしまって悲しそうにも見えましたが、やがて何事もなかったかのようにぱたぱたと飛び回り始めました。何とか作戦成功。

 その後は、妻が問題のトレーナーを着ている時でもジェフくんは嫌がっているようには見えないので、幸い心に傷は残らなかったようです。ただ、時々袖口をじっと見ているようですが。“獲物”の様子をうかがっているのでしょうか。それとも「すっぱいブドウ」(イソップ童話)の気持ち?




3.距離感 (2002.02.28)

 フクロウとのつきあい方は、犬とも猫とも違った独特なものに感じられます。うちのジェフくんはCBプリント個体「基礎知識」参照)なのですが、木箱(ケージ)の扉越しに50〜60cmのところを通り過ぎただけで威嚇(顔を前に出し、翼を広げて体を左右に揺らす→我が家では“森永”森永製菓株式会社のロゴ参照)と呼ばれています)することもあれば、10cmの距離で見つめ合っても(寄り目になりそうです)平然としていることもあります。主導権はあくまでもジェフくんにあり、時間帯や状況などによって決まってくるようです。

 例えば、夜中や朝方などは威嚇されがちですし、寝起きはさらにその傾向が強いようです。逆に餌の前の時間帯はかなり接近しても大丈夫な場合が多く、向こうから近寄ってくることもあります。また、人間たちが隣の部屋に引っ込んでいると、「何してるのかな?」と気になっているような様子でのぞき込んでくる(戸は開け放したまま、ネットで仕切ってあります)こともしばしばです。

 うちの妻は犬を飼っていたので、最初はその反応の違いに戸惑う一方で、どこか物足りなさも感じていたそうです。私はといえば、犬よりはマイペースな猫を飼っていたこともあって、妻に比べると違和感は少なかったと思います。が、それでも、距離感が大きく変動するという状況はなかなか理解しづらいものがありました。しかし、その原因から考えてみることで、何とか少しは理解できるように思えます。

 本来は野生の動物、しかも小型ですから、ベースには人間に対するネガティブな意識(警戒心)があるはずです。プリント個体ならばインプリンティングによって低く抑えられているとはいえ、そのネガティブな意識があるからこそ普段は距離をおこうとするのでしょう。そして時おりそのネガティブな意識に打ち勝つほどにポジティブな意識が高まり(典型的には餌によって)、その表れとして自発的に近づいてくることになるのだと思います。もちろん、ポジティブな意識の引き金となるのは餌だけとは限りません。

 ネガティブな意識の時に近づいても警戒されるだけで、しかもその度合いが強まることにもなりかねません。いい関係を続けていくためには、絶えず相手の状態を見極め、距離を調節していくことが必要なのではないでしょうか。少なくとも、“好きなときに好きなだけ構う”という飼い方には向かない生き物だということは、念頭に置いておくべきでしょう。

 なお、妻から“ペットの飼い主というより、動物園の飼育係をイメージした方がわかりやすいのでは?”という指摘を受けました。これは確かにその通りかもしれません。“ペットと飼い主”という言葉からイメージされるよりはもう少しシビアな、しかし飼い主に対してある程度は親しみも示してくれるという、そんな微妙な関係です。




4.接近 (2002.02.28)

 前述のように、我が家では夕方から餌の時間まで、ジェフくんを部屋の中に放しています。この間、眠っていたり、ぼーっとしていたり(のように見える)、飛び回ったりしています。そして、時々は人間の方に接近してきます。本を読んだり、何か手作業をしていると寄ってくることが多いようです。

 “ようです”と書いたのはなぜかというと、妻の方にはちょくちょくあるのですが、私の時にはあまりないからです(涙)。しかし、しかし! 決して私が嫌われているわけではないのです。そう、餌をあげる時はもちろんのこと、他にも接近してくることはあるのです。それもほとんど私にだけ。観察の結果、その条件は少なくとも4つあります。

  1. 餌の時間が近い
  2. 私の左腕がむき出しになっている(長袖はダメ、袖をまくっていればOK)
  3. 私が特定の場所にいる(ちょっと説明しづらいですが)
  4. 私とジェフくんの間に妻がいない(障害になっている場合はもちろん、邪魔にならないように座っていてもダメ)

 以上の4つの条件が揃った時、かなりの高確率でジェフくんはやってきます。遠くからでも一直線に飛んできて、私の左腕に蹴りを入れてから、きれいに方向転換して去って行きます……蹴り……?

 ……決して排斥されているわけではありません。なぜなら、その直後に近づいていっても、ジェフくんは遠ざかる様子を見せないからです。顔を近づけてもOK。むしろ、興味津々のようにも見えます。この謎の行動について、我が家では様々な仮説が立てられました。

  1. 好奇心で近づいてくるが、私の腕に触れた瞬間われに返り、慌てて逃げていく
  2. 餌の時間が始まったと勘違いしている
  3. 餌のための予行演習
  4. 餌を催促している(“早く準備しろ!”)
  5. スリルを楽しんでいる

 これらのうち、4番目の仮説は明らかに間違っています。ジェフくんが餌を催促する合図は、「ぴゅう!」という鳴き声だからです。この謎の行動の前後には鳴き声はありません。また、2番目もおそらく違うでしょう。フィストコールと紛らわしい動作をしていなくてもやってきますし、そもそも私のいる場所が違っています。餌の時には妻がいるはずの場所なのです。一度場所を代わってみたことがあるのですが、ジェフくんは明らかに戸惑った様子で反応が悪くなりました。よってこの仮説もボツ。さらに1番目の仮説も、来る時の勢いのよさとその後の切り換えの速さがネックです。どうも最初から最後までが意図的な一連の行動としか思えません。

 残りは3と5ですが……どちらともとれます。時間帯の問題と、ほとんど左腕(フィストコールの時に止まる側)だけが標的になっていることから、餌との関連があるように思えます。一方、5も捨てがたいものがあります。蹴りを入れて去って行ったジェフくんは決して止まり木には止まらず、平らな場所に着地します。この時、スライディングしながらこちら向きにターンするのです(なかなか高等テクニックのような気も……)。この行動からは、一刻も早く私の反応を確認したいという強い意志が感じられます。よその家の呼び鈴を鳴らしてすばやく逃げ、出てきた人の様子をうかがう悪戯“ピンポンダッシュ”にそっくりなのです。

 結局、3と5の複合かとも思えるのですが……どなたかおわかりの方、教えていただけないでしょうか?

(2002.03.08追記)
 「のんびりHP」掲示板で、猛大さんよりレスをいただきました。上記の推測でおおむね合っているのではないか、とのことです。どうもありがとうございました。
 なお、この謎の行動については、その後一度大失敗してしまいました。調子に乗って20回ほどやらせてみた(通常は2〜3回まで)のですが、狩りの欲求を発散しすぎてしまったせいか、肝心の餌の時に非常に反応が悪く、苦労しました。今までになく周囲の環境に神経質になった様子で、盛り上がっていた気分が醒めてしまい、われに返ったという感じです。翌日からはまた元に戻ったので安心しましたが。




5.糞とペレット (2002.05.21)

 フクロウはトイレのしつけなどはできないので、放し飼いをしていれば当然、部屋のあちらこちらに糞をすることになります(無闇に叱らないようにして下さい)。

 糞には白っぽいものと焦げ茶色のものがあります。うちのジェフくんの場合、白10:焦げ茶色1〜2くらいの割合でしょうか。
 白い糞はそのほとんどが尿酸のようで、あまりにおいはありません。ただ、尿酸は水に溶けないこともあって、乾いてこびりついてしまうと取るのがやや大変になります。
 一方の焦げ茶色の糞は消化途中のもののようで、かなり強烈なにおいがします。気づいたらすぐに掃除する方がいいでしょう。

[特製トレイ]  基本的に飛びながら糞をするということはないようなので、必然的にお気に入りの止まり木などの周辺が一番大きな被害を受けることになります。したがって、その部分を重点的にカバーすれば多少は楽かもしれません(我が家の場合には、お気に入りの場所が多いのでどうしようもないのですが/苦笑)。ちなみに右の写真は、調味料入れの取っ手に人工芝を貼りつけて、中に新聞紙を敷いたものです。取っ手に止まったときに糞をしても、新聞紙の上に落ちるようになっているので便利です。

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[ペレット]  ところで、フクロウが落とすものは糞だけではありません。忘れてならないのがペレット(pellet)です。これは消化できない骨や毛を塊状に吐き出すもので、見た目は粘土を固めたような感じです。左の写真(隣は10円玉)は白いマウスを食べさせた次の日のものなので白っぽい色になっていますが、黒っぽいマウスを食べさせるとやはり黒っぽい色になって、ちょっとびびりました(笑)。糞とは違って汚い感じもなく、においもないようです。

 うちのジェフくんの場合には、なぜかヒヨコを食べさせた次の日は出しませんが、マウスの次の日にはほぼ間違いなくペレットを吐き出します。ペレットは健康のバロメーターの一つともいえるので、あまり何日も続けて出ないようでしたら、体調に気をつけてあげた方がいいのではないでしょうか。




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