フクロウ飼育の基礎知識(1)

心構え 飼い方 環境 個体
 体重測定 温度 行動 鳴き声 水浴び 掃除
爪切り 換羽 発情 病気 ロスト その他トラブル

ご注意:
 このページは、フクロウを飼おうと思い立ってから実際に飼い始めて今に至るまで、色々と学んできた知識や、経験から考えたことをまとめてみたものです。必ずしもすべてが正しいとは限りませんし、これで十分だというわけでもありませんので、くれぐれも鵜呑みにしてしまうことのないよう、お願いいたします。

心構え(予備知識)
・はじめに
 フクロウを飼うのは、決して簡単なことではありません。犬や猫のように完全にペット化されているわけではなく、また飼育方法も一般のペットほどには確立されていません。も(基本的には)ペットフードのようなものはないので、生のお肉、具体的にはマウスなどをさばいて与えることになりますが、抵抗を感じる方も多いでしょう。
 安易な気持ちで飼うべきでないというのはフクロウに限った話ではありませんが、ペットとして一般的な生き物というわけではないのですから、飼う前にも、そして飼い始めてからも絶えず勉強が必要だと思います。ネットで、あるいは書籍などで、まずはフクロウがどのような生き物なのかを理解するところから始めてみましょう。

・“しつけ”は?
 フクロウは訓練された犬のように言うことを聞いてくれるわけではありません。トイレのしつけなどは不可能だと考えて下さい。フクロウの行動を制限できるのは人間の都合ではなく、餌と外敵(危険)だけだといってもいいでしょう。
 フクロウをしつけようとして叱ってみたら、どうなるでしょうか。やってみたことはありませんが、おそらくまったく通じることなく、むしろ叱った飼い主を“敵”だと認識し、近寄らなくなる可能性が高いのではないかと思います。
 それでは、例えば都合のいい場所で糞をしてくれた時に餌をあげるようにすればいいかというと、それも難しいでしょう。おそらく、単にそこを“餌が出てくる場所”と認識するだけではないでしょうか。
 したがって、無理やり人間の都合に合わせるのではなく、人間の方がフクロウに合わせたフクロウ優先の生活を考えるべきでしょう。

・“なれる”とは?
 “なれる”、あるいは“なれている”という表現をしばしば目にします。この表現からは、犬のように馴れることをイメージしがちではないかと思うのですが、“人になれているフクロウ”とはどういう状態なのでしょうか。
 例えば、我が家のジェフくんは、餌の時に手に呼ぶ(フィストコール)ことができます。が、触られるのは嫌がります。これは“馴れている”のでしょうか?
 もともと他者が常に存在することが前提となっている社会的な生き物(例えば犬のような)ではないのですから、“嫌なことはされない”という安心、いわばニュートラルな感覚まで持ってくることはできても、それ以上はなかなか難しいのではないでしょうか。
 餌の時に人間の手に飛んでくるのは、餌の魅力と人間の手に止まることへの抵抗とを秤にかけて、そこまではOKと譲歩(妥協?)しているから。餌以外の時に人間に近寄ってくるのは、安心を前提にした好奇心の表れ。そのようなところではないかと思います。
 つまり、“慣れる”ことはあっても、“馴れる”ことはないのではないでしょうか。要は何がいいたいかといえば、過度の期待は禁物ということなのですが。

・危険?
 フクロウは肉食の猛禽類です。小型種であっても、爪やくちばしにはそれなりの威力があります。極端に体重を落としたりしていなければ、人間を襲うことはまずないとは思いますが、急に飛んでくることもありますし(例えばこちらを参照)、小さなお子さん(あるいは他のペット)がいる家庭では注意が必要でしょう。また、屋外に連れ出す場合も同様です。

・フクロウの寿命
 健康であれば、小型種でも10年から15年、大型種ではそれ以上にもなるようです。生き物を飼う以上、自覚が必要なのは当然ですが、それだけ長く付き合うことになるわけですからなおのこと、それなりの覚悟を持って飼うようにしていただきたいと思います。


どのような飼い方をしたいのか?
・はじめに
 個体の説明よりも前にこれを書いているのはなぜかといえば、飼い方によって適した個体が決まってくるからです。典型的な例としては、“ハリー・ポッター”のブームで人気のシロフクロウ、これを室内で飼うのは非常に困難です。つまり、どれほど飼いたいと思っても、室内飼育のみ可能な環境にはシロフクロウは向かないのです。また、種類を問わず、WC個体後述)の場合にはいわゆるペット的なコミュニケーションを求めることは難しくなります。
 このように、どのような個体を飼うかを決める前に、どのような飼い方がしたい/できるのかをよく考えておく必要があります。

・観察型飼育と交流型飼育
 観察型飼育とは、フクロウと距離を置き、観察をメインにした飼い方です。これに対して交流型飼育とは、フクロウとの“ふれあい”(例えば、手の上で餌をあげるなど)を求めるやり方です。どちらがいいか悪いかということはなく、飼い主がどちらを望むか、というだけのことです。ただし、前述のようにWC個体で交流型飼育を行うのは困難で、下手をすると個体の命を縮めることにもなりかねません(体重の落としすぎやストレスなど)から、事前に十分にご検討下さい。なお、観察型飼育の意義については、ちびろうさん「はがね&ちびろうの部屋」)の「観察飼育について」もぜひお読みになって下さい。
 ちなみに、我が家の場合には交流型飼育ですが、多少観察型飼育に近い部分があります。基本はケージ内で所定の時間だけ部屋に放しているのですが、人間が一緒にいる時間はさほど多くはなく、ネット一枚隔てた隣室からの観察が中心です。安心して部屋中を飛び回るのを隣室から眺めるのも十分楽しいですし、時々ネットの近くまでこちらの様子を見にきてくれるのはうれしいものです。

・ケージと放し飼い(交流型飼育の場合)
 観察型ではケージ内で飼育することになりますが、交流型の場合にはケージで飼う以外にも、一日中部屋で放し飼いにするという選択肢もあります。一見、放し飼いの方が自由で、フクロウにとっても好ましいように思われるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。人間との間を隔てる仕切が存在しないわけですから、常に心のどこかで警戒している状態にもなり得るのです。逆にケージをメインにする方が、フクロウにとってほぼ完全に安心できる空間があることになるわけですから、ストレスは少なくなるかもしれません。

・フリーフライト
 フクロウを屋外で飛ばすフリーフライトをやってみたいと思う方もいらっしゃるかもしれません。フリーフライトが可能なのは、ワシミミズクなどの大型種か、せいぜいメンフクロウなどの中型種まで。コノハズクなどの小型種はほとんど不可能に近いと思います。その理由としては、カラスなどの外敵や、体重が軽いために風で流されやすいといった危険が挙げられます。
 また、フリーフライトとは“自由に飛ばす”ことではなく、あくまでも飼い主がきちんとコントロールした状態でなければならないので、体重設定をかなりシビアにする必要があります。その点でも、小型種は不向きです。
 具体的なところについては、私自身がやっていないので詳しく説明することはできません。かなり難しいのは間違いないので、別途情報収集(専門家やショップに教わるなど)して下さい。
 いずれにせよ、フリーフライトにはロストの危険がつきものです。飼育するフクロウは外来種なので、ロストした場合に環境への悪影響が考えられるのはもちろんですが、それ以前にかわいいフクロウを危険にさらすことになるわけですから、十分にご注意下さい。

・繁殖
 初めての飼育でいきなり繁殖に挑戦しようという方はあまりいらっしゃらないとは思いますが、一応念のために。
 フクロウの繁殖はかなり難しいようです。できる限り自然に近い状態にしてあげないと成功はおぼつかないと思いますので、人間の介入は少なく、つまり観察型飼育に近い飼い方が望ましいでしょう。


環境
・ケージ
 完全放し飼い以外はケージがメインの生活空間になるわけですから、十分な大きさが必要です。我が家の場合、体長20cm程度のフクロウに対して70cm(W)×60cm(D)×80cm(H)くらいのサイズ(「動物堂アウルルーム」製作)ですが、大型種になれば当然もっと大きなケージを用意しなければなりません。
 もちろん自作も可能ですが、いくつか注意すべき点があります。前提として、ショップで使われていたものと極端に違ったものになってしまうと、せっかくやって来たフクロウがなかなか落ち着けない可能性もあるので、できるだけ似たようなものにした方がいいのではないでしょうか。実際に製作するにあたっては、まず、金網は羽根を傷めてしまうので使うべきではないようです。また、内部には止まり木を取り付けますが、きれいに加工された棒では足の裏を傷めやすくなるようなので、多少凹凸のある木の枝を使った方がいいかと思います。(ただし、拾ってきたものをそのまま使うとダニが発生する場合があるので、注意が必要です)。ケージの中でも自由に動けるように、止まり木は高さを変えて複数本ほしいところです。また、隠れる場所(部分的な目隠し板など)があると、より安心できると思います。
 ケージを設置するのは安定した場所であることはもちろんですが、できる限り高い位置にすることも重要です。フクロウが比較的高い位置を好むからです。

・部屋
 ケージから外に出す場合、あるいは室内放し飼いの場合は、その部屋がフクロウのなわばりになります。できるだけ快適な環境を作ってあげたいところです……が、何よりもまず重要なのは、逃げ出す危険性のある隙間や出入り口をきっちりと塞ぐ(ネットを張るなど)ことです。フクロウの体は見た目よりもかなり細いので、「小さな隙間だから大丈夫」という考えは禁物です。
 前述のようにトイレのしつけなどはできないので、フクロウを部屋に放すとあちこちで糞をすることになります。フローリング、ないしフローリング風のカーペットを敷いた床ならば掃除が楽ですが、畳や絨毯ではかなり大変だと思います。
 部屋の中には止まり木をいくつか作ってあげましょう(「写真(その1)」及び「写真(その2)」参照)。移動できるものもあると便利です。ただし、必然的に止まり木の下はで汚れることになるので、注意(あるいは覚悟/笑)が必要です。
 逆に、止まられたら困る場所は、何らかの手段で塞ぐしかありません。特に注意すべきなのは高い場所で、ケージよりも高い位置に止まり木代わりになる場所があると、そこが一番のお気に入りになってしまい、なかなかケージに戻ってくれなくなる可能性もあります。
 それから、透明な窓ガラスにはフクロウが激突してしまうおそれがあるので、きちんとした対策をとっておく必要があるでしょう。

・周辺への配慮
 一番の問題は鳴き声でしょう。大型種などは特に、ご近所への配慮が必要になるかと思います。マンションなどの場合はなおさらです。
 なお、ペット禁止のマンションでこっそり飼うのはやめましょう。


個体
・種類
 フクロウには小型種から大型種まで、様々な種類があります。サイズにかかわらず、種類によってやや神経質な性格とおっとりした性格に分かれるようなので、そのあたりには注意する必要があるでしょう。
 また、生活スタイルの違いもあります。狭いなわばりに定着して暮らすものから、なわばりが明確でなく広い範囲を飛び回って餌を探すもの(極端な場合には渡り鳥に近いもの)まで、色々な種類に分かれているようです。もちろん、後者(シロフクロウなど)の方が飼育しにくいのはいうまでもありません。

・CB個体とWC個体
 見慣れない言葉だと思いますが、ショップではよく使われています。それぞれの個体の由来を表す言葉です。
 “CB”は“captive breed”の略で、飼育下繁殖個体、つまりブリーダーのもとで飼育されている親鳥から生まれた個体を指します。一方、“WC”は“wild caught”の略で、野生の状態で捕獲された個体のことです。CB個体はさらに、親鳥に育てられた“ペアレントレアード”と、人間が育てた“ハンドレアード”に分かれます。
 当然ながら、基本的に同じ種類であればWC個体よりもCB個体の方が値段が高くなります。が、WC個体がおすすめかといえば、そうではありません。野生のものを捕獲してくるため、状態があまりよくない(病気にかかっているなど)場合が往々にしてあるようですから、多少値段が高くてもCB個体の方が飼い主としては安心できるのではないでしょうか。加えて、合法的に輸入されているとはいえ、いずれもワシントン条約で制限されている稀少種ですから、野生個体の捕獲は生態系に大きな影響を与えることにもなります。
 また、交流型飼育を希望する場合には、そもそもWC個体は不向きです。

・プリント(ヒューマン・インプリンティング)
 まず、“プリント個体”(ヒューマン・インプリンティングされた個体)が交流型飼育に適しているというのは間違いないかと思います。が、“ヒューマン・インプリンティングとは何か?”というのは難しい問題です。
 “インプリンティング”といえば、卵からかえった雛が、最初に見た動く(大きな)ものについていく、というのが典型的な例として知られています(どの種類の鳥だったかは忘れましたが)。が、これがフクロウでもそのまま成り立つかというと、そういうわけではないようです。
 経験的には、人間を同種と認識しているわけではなく、孵化直後から人間に育てられることによって、人間に対する本能的な恐怖が(ある程度)払拭されている状態なのではないかと思っているのですが……。

・個体差
 いうまでもないことかもしれませんが、同じ種類であっても、あるいは同じプリント個体であっても、それぞれに個体差があります。飼う前に実際にショップへ行って、それぞれの個体の様子をじっくりと観察してみましょう。




基礎知識(2) / 基礎知識(3)
黄金の羊毛亭 > みみずく小屋 > 飼育の基礎知識(1)