ロバート・J・ソウヤー短編紹介

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Iterations

2002年発表 (Quarry Press・未訳
[『Iterations』単行本カバー(Susan Hannah)]

[紹介と感想]
 ソウヤー初の短編集で、1980年から2000年までに発表された作品22篇が収録されています。それぞれの作品には、ソウヤー自身によるまえがきが付されています。
 個人的ベストは、「The Hand You're Dealt」(SFミステリ)、「Forever」(恐竜もの)、「Star Light, Star Bright」(宇宙もの)あたりでしょうか。

 一部の作品については、印象に残った文章を引用しておきます。


The Hand You're Dealt 配られたカード

 スペース・コロニー〈メンデリア〉で起こった殺人事件。被害者は、客の遺伝情報を読み取って未来を告げる占い師だった。出生時と成人時に占い師のもとを訪れることが義務づけられ、誰もが自分の適性に合った職業を選び、また将来の健康に注意することができるこの世界で、一体誰が、なぜ占い師を殺したのか……?

Here, in Mendelia, you play the hand you're dealt.
ここメンデリアでは、配られたカードのままで勝負しなければならないのだ。

 回り道をすることなく最適の職業を選ぶことができるユートピアのようでもあり、ある程度とはいえ未来が定められてしまうディストピアのようでもある、遺伝情報による占いが発達したコロニーを舞台にしたSFミステリです。ソウヤーらしいというべきか、作り込まれた動機が秀逸で、見事なホワイダニットに仕上がっています。

 なお、この作品は邦訳されています(内田昌之訳 SFマガジン1998年1月号掲載)。

Peking Man

 アメリカ自然科学博物館のアンドリュース博士のもとに、北京にいる解剖学者・ワイデンライヒからの荷物が届いた。待望の北京原人の化石だ。だが、梱包を解いた彼は失望を余儀なくされた。中身は化石の現物ではなく、石膏で型を取った模型にすぎなかったのだ。しかも、そのには不自然な様子が……。

 第二次大戦中に発見された北京原人の化石は、戦争の混乱の中で行方不明となり、現在では模型のみが残されているようなのですが、その北京原人ネタと“これ”を組み合わせるとは予想外です。

Iterations

 私は、“もう一人の私”を殺そうとしていた――この世界は実在していない。コンピュータによるシミュレーションにすぎないのだ。そして、シミュレーションの繰り返し、少しずつ違った“私”が存在する。違った選択を行ってきた、無数の“もう一人の私”が……。

"You can't kill me," he ― I ― said. "I'm you."
「お前に私を殺せるはずがない」彼――私――が言った。「私はお前なのだから」

 ひと味違った“並行世界”ものといえるでしょうか(ラリイ・ニーヴン「時は分かれて果てもなく」『無常の月』収録)などと比べてみても面白いかもしれません)『さよならダイノサウルス』の“タイムトラベルは可能でなければならない”というアイデアを彷彿とさせる、詭弁めいた論理展開がユニークです。そして、主人公が“もう一人の自分”を殺そうとする動機は秀逸です。

Gator

 ニューヨークの地下、下水道に降りて作業をしていた男が、何かに足の肉を食いちぎられるという事件が起きた。男は、ワニの仕業だと医師に告げる。“下水道に潜むワニ”は、単なる都市伝説ではなかったのか? 話を聞いた爬虫類学者は一笑に付したが、医師が傷口から摘出したを目にすると……。

 これまたいかにもソウヤーらしい作品です……と書いてしまうと、勘のいい方には途中の展開が読めてしまうかもしれませんが、終盤は一ひねりされています。何ともいえない雰囲気のラストが印象的です。

The Blue Planet

 火星に送り込まれた無人探査機〈マーズ・ポーラー・ランダー〉が交信を絶った。火星で一体何が起こっているのか? 相次ぐ無人探査機の事故に、NASAは有人探査機を送り込むことを決定するが……。

 1999年12月に起きたNASAの火星探査機<マーズ・ポーラー・ランダー>の事故の際、カナダの新聞から依頼を受けて24時間で書き上げられた作品です(なお、初出時の題名は「Mars Reacts!」でした)。ラストの台詞が何ともいえない余韻を残しています。

Wiping Out

 不幸なファーストコンタクトをきっかけとして、人類とアルタイル人は全面戦争に突入した――そして今、人類の宇宙船隊が最終兵器を携えてアルタイルIIIへとやってきた。迎え撃つアルタイル人の宇宙船隊。激しい戦闘の果てに、待っていた結末は……。

The Answer is no. It is not a mistake.
答は“ノー”だ。間違いではない。

 宇宙戦争の場面を中心としたスペースオペラ風の作品です。“プテラノドン”・“ケツァルコアトルス”・“ランフォリンクス”という、いかにもソウヤーらしい宇宙船のネーミングにはニヤリとさせられますが、途方もなく重い結末には言葉がありません。

Uphill Climb

 新しく開発したロボットを地球に売り込みに来たキンタグリオ族のオブノ。だが、そのロボットには、急な坂道や階段を登ることができないという欠点があった。しかし、オブノと取引しようとする地球人キヴリーは、なぜかそのままロボットを売り出したのだ……。

 『占星師アフサンの遠見鏡』に先立って発表された、キンタグリオ族の登場する作品です。とはいえ、舞台や状況は大きく異なっていて、直接の関連はありません。不可解な行動を示すキヴリーの真意が明らかになるラストは感動的です。

Last But Not Least

 マットは体育の授業が嫌いだった。特にクラスを二つのチームに分けて行われる球技が大嫌いだった。両チームのキャプテンが一人ずつほしい選手を選んでいくのだが、マットは最後に一人残されるのが常だった。そしてある日、キャプテンに指名されたマットは……。

Cartwright's rolled eyes said it all: he wasn't picking Matt Sinclair ― he just happened to be the last guy left.
カートライトの落ち着かない目がすべてを物語っていた。彼はマット・シンクレアを選ばなかった――彼はただ、最後に残っていただけだったのだ。

 ヤングアダルト向けのホラー・アンソロジー用に書かれた非SF作品です。とはいえ決して超自然的なホラーでもなく、不当な扱いを受けてきた少年の心理とその逆襲が描かれています。ある意味、怖いのは確かですが。

If I'm Here, Imagine Where They Sent My Luggage

 一体どうしてこんなことになってしまったのか? トロント宇宙港からアルタイルIIIへと向かうはずだった私は、予想外の事態に巻き込まれてしまった……。

 非常に短い、ショート・ショートといってもいいような作品です。ラストの一文はやはり、主人公の運命を暗示しているのでしょうか?

Where The Heart Is

 宇宙探査旅行を終えて、ようやく地球に帰ってきたハント。彼にとっては6年の旅だが、その間に地球では140年が経過していた。盛大な出迎えを期待していたハントだったが、トロント宇宙港に人々の姿は見えず、彼を待っていたのは奇妙なロボットたちだった……。

"I would have waited a millennium."
「私は1000年でも待つつもりだったわ」

 出迎えの人々の不在という謎はすぐに解けてしまいますが、そこで明らかにされる世界の姿は、これまたユートピアというべきか、ディストピアというべきか……。主人公の最後の選択にも、個人的にはやや疑問が残ります。

Lost in the Mail

 石油化学専門のジャーナリスト、ジェイコブ・コインは、毎日郵便配達夫から直接郵便を受け取るのが常だった。だが、次第に郵便の中におかしなものが紛れ込み始める。彼が入学しなかったトロント大学関連や、専攻しなかった古生物学関連の雑誌……。彼が選ばなかったもう一つの人生の幻影なのか……?

"Perhaps," said the Pope, but I knew in an instant that he was lying.
「たぶんね」と“法王”は言ったが、私はすぐに彼が嘘をついているとわかった。

 古生物学者になりそこねた科学ジャーナリストという、ソウヤー本人の経歴を彷彿とさせる主人公と、“法王”というあだ名の郵便配達夫との間に繰り広げられる不思議な物語です。“もう一つの人生”の影に動揺する主人公の心理に焦点が当てられていますが、最後に描かれている郵便配達夫の哀しみも印象的です。

Just Like Old Times 爬虫類のごとく……

 コーエンはティラノサウルスの頭の中にいた。連続殺人犯として死刑判決を受けた彼は、新たに開発された時間転移による安楽死を命じられた。それは、過去の人物の心の中に送り込まれ、その行動に何も干渉できないまま、ともに死を迎えるというシステムだが、コーエンは恐竜に乗り移ることを選んだのだ……。

"Kidding is not my forte, John. Killing is. I want to know which was better at it, me or the rex."
「ふざけるのは趣味じゃないんだ、ジョン。“殺し”だよ。俺とティラノのどっちがうまくやれるのか、知りたいんだ」

 密かに“人狩り”を続け、最後にはティラノサウルスの頭の中に送り込まれることを自ら選ぶコーエン。その独特のキャラクターにはインパクトがあります。また、ある意味壮絶なラストが強く印象に残ります。

 なお、この作品は邦訳されています(内田昌之訳 SFマガジン1997年7月号掲載/中村 融・山岸 真編『20世紀SF6 1990年代 遺伝子戦争』(河出文庫)収録)。

The Contest

 長い争いに疲れた二つの強大な存在は、ある賭けで勝負を決めることにした。それは、“ジョン・スミス”という名の何から何まで平均的な男を選び、その言動がどちらの側により強く振れるか、というものだった……。

 本書の中で最も古くに書かれたショート・ショートです。何とも情けないラストがユーモラスです。

Stream of Conciousness

 地球に不時着した宇宙船は大破していた。操縦していた異星人は、頭部に大きな傷を負い、意識を失ったまま死にかけていた。直ちに救命ヘリが呼び寄せられ、医師たちは手探りの状態で治療に当たったのだが……。

 ユニークなファーストコンタクトもの、といえるでしょうか。治療に際して、生物学的な推論を積み重ねて異星人の生理を少しずつ明らかにしていく過程は圧巻です。

Forever

 シズー族の天文学者・チョロは、偉大な先達と同じように、新しい惑星を発見して自分の名前を永遠に残したいと考えていた。長い観測の末にようやく彼が発見したのは、新しい惑星ではなく小惑星にすぎなかった。だが、その小惑星は地球を直撃する軌道を進んでいたのだ……。

 『占星師アフサンの遠見鏡』を思い起こさせる、恐竜天文学者を主役とした作品です。天体観測を通じて世界の危機を知った天文学者が、一族に警告を発するという展開はよく似ていますが、ラストが何ともいえない哀しみを誘います。

 ちなみに、冒頭には“古生物学者ジェイコブ・コイン”(「Lost in the Mail」参照)の文章が引用されています。

The Abdication of Pope Mary III

 300年の長きにわたってローマ法王の座についていたマリアIII世が、遂に退位することになった。彼女は、ベンメルギー博士の実験結果を認めなかったことを悔いているという。それは、神の存在を証明するものだった……。

 長編『Calculating God』から派生した作品、といえるでしょうか。同じように神の存在の科学的証明をテーマとしていながら、宗教の側に視点を置くことで、まったく違った雰囲気に仕上がっています。

Star Light, Star Bright

 太陽の周りを取り巻くダイソン球の内側から、フロンティアを求めて外側へと移動してきた人々。そこで生まれた子供たちは、大人には見えない光の点を夜空に見いだしていた。その謎を解く鍵は、ダイソン球を築き上げた古代人たちの残した文書にあった……。

 ダイソン球(→Wikipedia)の外側に暮らす人々が、失われた古代文明と宇宙の秘密を再発見する物語です。人々の視覚に関する考察は非常によくできていると思います。また、“ニワトリ”ネタがユーモラスな雰囲気を付け加えています。

Above It All

 スペースシャトル〈ディスカバリー〉に搭乗していたラッカム大佐は、緊急の任務を受けて、ロシアの宇宙ステーション〈ミール〉へと向かっていた。唯一の乗組員が自殺を図ろうとしているというのだ。ようやく〈ミール〉にたどり着いたラッカム大佐を待っていたのは、室内に漂う無数の乾いた血の滴。そして……。

 宇宙ステーションを舞台にしたホラーです。あらゆる犠牲を払ってはるかな高みへと押し上げられた宇宙飛行士を待ち受けていたのは何なのか? 恐怖とともに、非常に考えさせられる作品です。

Ours to Discover

 人々が鋼鉄のドームの中で暮らす時代。変わり者のウィザーズ老人が見つけた、奇妙な青と白の服には、廃墟で見つかった旗と同じマークが描かれていた。ウィザーズ老人はそれを見て“トロント・メイプルリーフス”という言葉を思い出したのだが、誰もそれが何かわからない。エリック少年は“メイプルリーフ”を探し回ったが……。

"If we could find out what a maple leaf was, maybe times would be good again."
「もし“メイプルリーフ”が何なのかわかったら、またいい時代になるかもしれないよ」

 ソウヤーの母国であるカナダを讃える作品。かなり短いですが、ノスタルジーを感じさせる雰囲気、そしてラストの鮮やかさが印象的です。

 なお、“トロント・メイプルリーフス”についてはこちらをご覧下さい。

You See But You Do Not Observe 未来からの考察――ホームズ最後の事件

 マイクロフト・ホームズと名乗る科学者によって、2096年へと連れてこられたシャーロック・ホームズとワトソン博士は、重大な謎を解くことを依頼される。それはフェルミのパラドックス――異星人の不在という問題だった。最新の物理学の知識を身に着けたホームズが、最終的に導き出した驚くべき真相とは……?

I asked him if he had a brother called Sherlock, but his reply made little sense to me: "My parents weren't that cruel."
私は彼に、ひょっとしてシャーロックという兄弟はいないかとたずねてみたが、彼の返答は意味不明なものだった。「私の両親はそこまで残酷ではなかったよ」
 (内田昌之訳 SFマガジン1996年10月号より)

 アンソロジー『シャーロック・ホームズのSF大冒険(下)』に収録されたシャーロック・ホームズのパスティーシュで、未来に連れてこられたホームズが宇宙的なスケールの謎を解くという、ある意味で非常にソウヤーらしい作品です。本格ミステリというわけではありませんが、プロットの展開も意表を突いたもので、面白いと思います。ラストも印象的。

 なお、この作品には「ホームズ、最後の事件ふたたび」という題名の邦訳もあります(内田昌之訳 SFマガジン1996年10月号掲載/山岸 真編『90年代SF傑作選 下』(ハヤカワ文庫SF)収録)。

Fallen Angel

 アンジェラは怯えていた。サーカスの曲芸師の一家に生まれた彼女は、幼い頃から空中に張られたワイヤーの上で芸を行ってきた。彼女は落ちるのが怖かった。墜落して半身不随となった兄・カルロのようにはなりたくなかった。その彼女の恐怖につけ込んで、悪魔が契約を迫ってきたのだ……。

 “悪魔との契約”という古典的な題材を扱った、ファンタジックな作品です。少女の強い恐怖と、悪魔と神の間での葛藤が鮮やかに描かれています。

The Shoulders of Giants

 地球型の惑星を求めて、タウ・セチへと向かう植民船〈パイオニア・スピリット号〉。冷凍睡眠による長い旅を経て、ようやく目的地にたどり着いた乗員たちを待っていたのは、植民に理想的な惑星だった。しかし、そこにはすでに都市が築かれ、電波による信号が……。

"If we see farther," he said, "it's because we stand on the shoulders of giants."
「もし私たちが遠くまで見通せるとすれば」彼は言った。「それは巨人の肩に立っているからなのです」

 予期せぬ出来事に遭遇した植民者たちの悲哀、そして〈パイオニア・スピリット号〉という名にふさわしい不屈の精神が見事に描き出されています。ラストの登場人物の台詞も泣かせます。


見上げてごらん。 Looking Up

2011年発表 (はるこん実行委員会翻訳班・訳 はるこん・SF・シリーズ2011)

[紹介と感想]
 SFコンベンション「はるこん2011」(→「はるこん2011 | HAL-CON Japan Site」)で発行された*1、日本では初となる短編集で、第一短編集『Iterations』から「Star Light, Star Bright」「The Shoulders of Giants」、第二短編集『Identity Theft』(未読)から「Come All Ye Faithful」*2が収録されています。加藤直之氏の装画にハヤカワ・SF・シリーズを模した装丁、内田昌之氏の解説、そしてソウヤー自身による各篇の序文と、なかなか贅沢な一冊です。

「星の光、星の輝き」 Star Light, Star Bright
 太陽の周りを取り巻くダイソン球の内側から、フロンティアを求めて外側へと移動してきた人々。そこで生まれた子供たちは、大人には見えない光の点を夜空に見いだしていた。その謎を解く鍵は、ダイソン球を築き上げた古代人たちの残した文書にあった……。
 ダイソン球(→Wikipedia)の外側*3に暮らす人々が、失われた古代文明と宇宙の秘密を再発見する物語。人々の視覚に関する考察は非常によくできていると思いますし、(短編ということもあるでしょうが)あえて“こちら側”が描かれているのも味わい深いものがあります。そして、“ニワトリ”ネタがユーモラスな雰囲気を付け加えています。

「神の御子は今宵しも(いざ集え、信者たちよ」 Come All Ye Faithful
 火星の植民地に住むただ一人の聖職者ベイリー神父のもとに、バチカンからのメッセージが届く。怪しげなテレビ伝道師が、火星の表面に聖母マリアが姿を現すのを天体望遠鏡で目撃したというのだ。奇蹟の真偽を確かめるよう要請されたベイリー神父は……。
 信者のいない火星の植民地にただ一人のカトリック聖職者、そして火星での“奇蹟鑑定”と、道具立てがまず面白いところです。短い分量のせいもあって結末はおおよそ見当がつきますが、それでも思わずニヤリとさせられますし、ぬけぬけとした最後の一文がまた絶妙です。

「巨人の肩に乗って」 The Shoulders of Giants
 地球型の惑星を求めて、くじら座タウへと向かう植民船〈パイオニア・スピリット号〉。冷凍睡眠による長い旅を経て、ようやく目的地にたどり着いた乗員たちを待っていたのは、植民に理想的な惑星だった。しかしそこには都市が築かれ、電波による信号が……。
 長い旅の果てに予期せぬ出来事に遭遇した植民者たちの絶望的な悲哀、にもかかわらずそこで発揮される、〈パイオニア・スピリット号〉の名にふさわしい不屈の精神がしっかりと描き出されています。さらに、思わぬ人物の口からこれまた予想外の、しかし心を動かされる台詞が出てくる結末が強く印象に残ります。
*1: 詳細については「見上げてごらん。 | HAL-CON Japan Site」を参照ください。
*2: この作品のみ原文も収録されています。
*3: (某国内SFと違って)高速回転していない世界なので、外側でも安心(?)です。

2022.02.28読了

その他短編

選択肢なし No Choice

 地球へ向けて、異星人の宇宙船から信号が送られてきた。最初は素数、次にドットによる簡単な画像。そして数学の問題。地球からも適切な返答が行われ、ファーストコンタクトは問題なく成功するかにみえた。だが、最後に送られてきたDNAに関する質問は、その意味を判じかねるものだった……。

 2000年11月3日~5日に行われたファーストコンタクト・シミュレーション「CONTACT Japan 4」にゲストとして招かれ、異星人側の設定を担当したソウヤーが、その設定をもとにSFマガジンに書き下ろした作品で、プロットはほとんどシミュレーションそのままです。異星人“アヒスト”の設定は非常に面白いと思いますが、それがプロットにあまり生かされていないのが残念です。問題のDNAに関する質問ですが、これは意味がわからなくて当然でしょう。このメッセージについては若干考察してみましたので、興味のある方はネタバレ感想をご覧下さい。

 なお、「CONTACT Japan 4」については、「SFオンライン」45号トピックスなどにまとめられています。ただし、異星人のメッセージの意味なども詳しく説明してありますので、この作品を未読の方はご注意下さい