この原稿を持って、いくつかの出版社を訪ねたが、どこでも断られた。原稿にすら目を通そうとしないところがほとんどであった。
平成六年秋、「大宅壮一ノンフィクション賞」にも応募し、原稿のコピーを送った。
二千二百枚の原稿を一部持って、あちこち歩くだけではどうにもならないのを感じた。少なくとも数十部のコピーが欲しかった。そこでワープロを買い、一年がかりで打ち込んだ。それを印刷、製本し、やっとこのようなかたちになった。また、大量の原稿も、わずか二枚のフロッピーディスクに納まってしまい、原稿を紛失したらという心配からも開放された。
「機関」の正体をつきとめるために走りまわっていた頃は、その「機関」の正体といったものは、一切、私の耳に入ってこず、ただそれは、どんな人、組織をも押え込むことのできる力を持った者たちであるということしかわからなかった。
「訴その十六」の発行を最後に、訴えることをやめ、あとは、風にもてあそばれる枯葉のように仕事を転々としていた。その期間の半分は失業していた。しかし、その間に本書の発行を準備していた。
たたかいを通して、まわりの複数の人々の口から「機関」の正体として、それとなく「内閣情報調査室」という名称が私の耳に入ってきていた。またある人は、「内閣情報調査室」のことを「日本のCIA」とも言った。
1996年(平成8年)5月3日
沢
舘 衛
うじ虫のよろこび
発 行 1996年(平成8年)7月21日
インターネットへの公開 2001年 1月 1日
著 者 沢 舘 衛
発行者 沢 舘 衛
著 者 (2003年12月 撮影)
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