新車ファンvs旧車ファン

02年2月10日


ストリート・レイシング・サイドカー

背景はヤマハ本社

 
 ここで新車と呼んでいるのは「買ったばかりの車」と言う意味ではなく、俗に「今車」などと言われている現代の車のことです。私などはとにかく走ることを第一に考えてますからオートバイも自動車も旧車を所有したことはありません。
もっともスーパーセブンは限りなく旧車に近い新車であると言えるでしょう。旧車ファンはどちらかと言うと走ることより車をいじることに重点を置いています。

 オートバイの世界にも自動車の世界にも新車ファンと旧車ファンとがいますが、この二つの世界ではお互いの関係が少し違います。 
自動車の世界では新車ファンは旧車ファンを尊重し、ある意味では尊敬もしていますが、オートバイの世界では必ずしもそうではなく、新車ファンは旧車ファンを少々煙たがっていたり、あるいは半ば無視したりしています。

 こうなるにはそれなりの理由があります。先ず自動車の旧車は大抵それなりの風格を持っていて素人目にも立派に見えます。
当ページ00年10月10日に紹介したティアルT59はブガティのグランプリレーサーT59のレプリカですが、これなどは直接出会ったら誰でもが「わーお」と思うくらい立派です。

 自動車と言うものはもともと素人にもわかる見た目のカッコよさを実現することを念頭に作られています。

 ところがオートバイの場合にはオートバイのブガティと呼ばれるビンセントでさえ、よほどオートバイに興味を持っている人でなければ、これがオートバイ旧車の世界では大変な名車であることなど気付かないでしょう。

 私は時々(2年に一回くらい)環八内回りから第3京浜に乗るビンセントと出会いますが、ちょっと見にはこれが世界に名だたる名車であると理解するには少々貧弱にさえ見えます。
ですから三京の保土ヶ谷PAにビンセントが駐車していてもほとんどのオートバイファンはその価値に気付かないでしょう。

 オートバイの旧車はなかなかその価値を正当に理解してもらえません。

 恐らくはこうした理由からでしょうが、オートバイの旧車ファンは新車ファンを本音では小馬鹿にしているようなところがあります。新車を「大量生産で生れた価値のない車」と考え「バカチョンバイク」とか「プラスティックバイク」などと小馬鹿にします。

 私自身これまでかなり多くの旧車ファンとお話したことがありますが、旧車ファンのこうした本音は旧車ファンに接しただけでも感じ取ることが出来ます。
例えば若い新車ファンが旧車ファンに接触した際に新車を馬鹿にされるようなことがあれば、そしてそう言うことは往々にしてあり得ることなのですが、恐らく「もう旧車ファンには近づかないようにしよう」と考えるでしょう。そして旧車ファンはますます自分たちの殻に閉じこもると言うことになります。

「凡庸なクルマに乗る凡庸な者達にこのクルマの良さが分かってたまるか」と言うような屈折した美の世界がそこにはあります。美は時として阻害から生れます。

 自動車の旧車ファンは新車を小馬鹿にしたりはしません。それは自動車の旧車を正当に評価してもらえると言う事もあるでしょうし、なにより自動車の旧車ファン自身が日常生活において自動車の新車のありがたさを知っているからです。

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 ただしこのところ、以上で述べたような状況に変化が現れています。先ず10年ほど前でしたかレトロブームと言うのがあり、その後私などが若い頃に盛んに乗っていた70年代のオートバイを愛用する若い人が出てきました。こうした若い人は別に旧車ファンと言う訳ではなく「旧い車がかっこいい」と言う感じで乗っています。オートバイの世界でもとうとう旧い車が正当に評価され始めていることは喜ばしいことです。

 

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