スーパーセブン本家論争について

06年5月3日


 
少し前にある方からセブンに関するメールを頂きましたが、それによると90年代にあったいわゆる「本家論争」について「ケイターハムに乗る人がほかのセブンタイプを悪く言ったもの」という解釈がなされてました。

この問題について私の考えを述べたいと思います。

最近はあまり見ませんが確かに90年代にこうした論争がありました。まずこの論争が何故勃発したのかという問題ですが、これは90年ころから某自動車販売会社(以下A社とします)が新たにセブンタイプ車(以下B車とします)を販売するに当たり、カーマガジンやティーポ誌上で「B車こそチャップマンの遺志を受けた正統なセブンである」という宣伝を始めたことがそもそもの原因です。

A社によるB車の販売以前にも国内ではウェスト・フィールドが販売されておりましたが、その時には論争のようなものはありませんでした。ケイターハムに乗る人が意味もなくほかのセブンタイプを悪く言うということはありません。

A社の宣伝ではB車については「正統セヴン」「純粋血統」「蘇るチャップマンの遺志」と謡われ、、ケイターハムについては「さんまの頭も信心から」などと謡われておりました。「さんまの頭も信心から」というのはケイターハムをよしとする考えはさんまの頭を信心しているに等しいものだという強烈なものでした。

当時私はケイターハムを買う予定など全くありませんでしたが、これではケイターハムを愛好する人々が反論するのも無理はないと思いました。

さらに混乱を増幅させたのが95年に発売されたある自動車雑誌(以下C誌とします)で、このvol.3では「ポストケイターハムを探せ」と題する記事の中で次のように書かれていました。

「Mr.グラハム・ニアーンが故コーリンチャップマンと懇意だったとか、ロータス・シリーズ3を実質的に販売していたのは、当時ロータスのディーラーであったケイターハムカーズのみだった、とかいわれる歴史的なお話のために、ケイターハム=ロータスというような図式がいつのまにか出来上がってしまっているが、ロータスはロータスであって、ケイターハムはロータスではない。なのに、なぜケイターハムがロータスの正統のように言われているかといえば、そのスピリットにおいてケイターハムがロータスに一番近いからである」

ケイターハムがロータスと同一でないことは確かにその通りですが、ここではケイターハムが73年に正式にセブンの製造権を継承したという重大な事実が故意にかくされていました。

C誌は要するに「ケイターハムじゃなくてもほかのセブンタイプだっていいんじゃないんですか」ということを言いたかったんだと思います。私はそれは一つの見識だと思います。そういう考えがあってもいいとも思います。が、しかし、その持論を強調せんがために事実を歪曲することはジャーナリズムのとるべき態度ではなかったと思います。

事実はもっとも強力ですからこれを捻じ曲げた説を定着させようとした場合、一時的に一部の人々に歓迎されることがあったとしても、結局は混乱を増幅させるだけです。実際、C誌は3年後の98年vol..23ではケイターハムについて「すべての原点、ロータス・セブンの継承者」と書いています。C誌の当初の説を信じて行動した人の中には「こんなはずじゃなかった」と思った方も随分いたんじゃないでしょうか。

私はこうした問題については事実を事実として謙虚に受け止める姿勢がもっとも混乱や後悔を少なくする方法だと思います。最終的に定着するのは事実に忠実な解釈しかないからです。

ケイターハム以外のセブンタイプについてどう考えるかはその人の価値観によるでしょう。「クルマは走って楽しむものだから出所来歴なんて関係ない」と言う考えの人がいます。私自身はこの考えには必ずしも同調できませんが、しかし価値観の違いに関してここで異論を言うつもりはありません。人によっていろんな価値観があり得るでしょう。事実関係を十分納得した上で出所来歴などには拘らずクルマとしてのセブンタイプを楽しむというのも一つの楽しみ方だろうと思います。

私自身もサイドカーはOHTA BMW GTUを模したGTUスタイルのものに乗ってますが、これについては自分で十分に納得した上で乗ってます。(GTUスタイル考

走ることの面白さはケイターハムもケイターハム以外のセブンタイプもそう大きくは変わらないでしょう。スーパーセブン・メンテナンスファイルでメカニズム関係を書いておられる沼崎さんはそうしたスタンスでバーキンを楽しんでおられるようです。ただし沼崎さんがバーキンを購入されたときにはケイターハムからクラシックは販売されていなかったとどこかに書いておられたようにも記憶しますが・・・・。私自身も70歳を過ぎたら体にやさしいドンカーブートも悪くないかなと少し考えております。

なおセブンタイプについて各方面の人がどのように考えているかについてはカーグラフィック94年4月号に12人の著名人のミツオカ・ゼロワンについての考えが掲載されておりなかなか参考になると思います。いろんな考え方がありますね。

 

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