第五章  メグミさんとの出会い

お医者さんには小学生の女の子がいました。めぐみさんといいます。
でもお父さんは“めぐみさん”を略して“メグサ”と呼ぶのです。
めぐみさんは無理に略さなくてもいいと思っていましたが、大好きなお父さんのことですから我慢していました。
めぐみさんは可愛い子羊がきたのでとても喜びました。そしてこの子羊が病気だと知ると、とてもかわいそうに思いました。そして点滴をしている間、両手で握手をしているように子羊の両腕を持ってやりました。そして時々子羊の背中も撫でてやりました。
子羊のP坊は最初は 不安そうにお医者さんやめぐみさんの顔を見たり、キョロキョロと周囲を見渡していましたが、やがて疲れていたのか、スヤスヤと眠ってしまいました。
めぐみさんは子羊が風邪をひかないように、小さな毛布をかけてやりました。


              第六章 カラスのカー子

翌朝早く、P坊は目を覚ましました。最初は自分がどこにいるのかわかりませんでしたが、やがて船の長い航海のことやニュージーランドの牧場の出来事を思い出しました。“お母さん羊はどこにいるのかしら” P坊はお母さんを呼んでみました。しかしお母さんの返事はありません。
P坊は淋しくなって シクシクと泣き出してしまいました。
“なーんだ立派な大人かと思ったら まだまだ子供じゃあないか”
突然 頭の上で大きな声がしました。
見上げて見ると 鋭いくちばしをした黒い鳥が P坊を見ていました。
P坊は今までに赤い鳥や白い鳥、黄色や青色の鳥は見たことがありましたが、こんな黒い鳥は初めてです。
“ぬれば色といってもらおうじゃないか。とても高貴な色なんだぜ”その鳥は舞い上がるとくるりと回転して P坊のところへやってきました。
“あたい、カラスのカー子っていうんだ。小さい頃から お父さんもお母さんもいなかったけれど、こんなに大きくなったんだぜ”と言いました。
P坊はカラスのカー子とすっかり仲良しになりました。
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