第十三章  全黒大会

その年の秋、東京で“全黒大会”が開かれることになり、案内状が届きました。
カラスのカー子は「東京までなら、高速道路に沿って飛んで行けるよ」
子猫のニャンコは「貨物列車に忍び込んで東京まで乗せてもらおうか」と言いました。
P坊はどうして行ったらよいのか見当がつきません。
同じ頃、“東京モーターショー”が開かれ、めぐみさんが寝台特急“富士”に乗って上京することがわかりました。
P坊はめぐみさんに一緒に連れて行って欲しいと頼みました。
出発の日の夜、めぐみさんはホームの柱の陰で、P坊の両手足に黒い紐をかけました。
するとまるで少し大きめの黒い旅行鞄のようになりました。
列車が着くと P坊は少しだけ手足を出して引きずられるように列車に滑り込みました。
列車の中では、まるでさりげなく置かれた黒い鞄のように見えましたが、そのうちに寝台の下に入り込み、手足を伸ばしてゆっくり眠りました。


 
                 第十四章  オールブラックス

東京へ来てみると、折りよく ニュージーランドのナショナルサッカーチームの強豪“オールブラックス”が来日していました。
そこで めぐみさんは P坊の記憶を頼りに、P坊の生まれた牧場がどこになるのか、聞いてくれました。
「ペンギンの見られる所となると、ニュージーランドでもずいぶん南の方、南極寄りだな」一人が言いました。
「オーストラリア航路の船員を知っているから聞いてみてあげよう」他の一人が言いました。
「オークランドの近くに住んでいるトラックの運転手に友達がいる」もう一人が言いました。
オールブラックスのメンバーが帰国してから、Eーメールがどんどん届きました。
そして遂に P坊が生まれた牧場の名前が判りました。
“セント・マギー牧場”です。
P坊はとても喜びました。でも「おかあさんはまだ元気かしら」と心配しました。
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