歳時記時の移ろい

       三月  弥生

雛祭り      華やかに 今を盛りと 咲ける花
         
                    白き顔にも 深き翳あり


若くて生命力あふるる雛の横顔に、心なしか不安な翳を見るのは、すぐれた人形師の技なのでしょうか。はたまた見る者の心のせいでしょうか。
私達にもこの雛のような若い時がありました。
しかし、仕事と育児に忙しく、今からみれば夢幻の出来事であったとしか思えません。
妻は今でも、子供達が小さくて可愛いかった頃の思い出のこもった玩具や写真を大事に持っています。
しかし、それらの品々の多くは既に朽ち、写真も昔日の彩りを失いつつあります。
いずれはそれらを知る人の記憶とともに風化し、消滅してしまうものでしょう。
人の世の常を知る故に人形師も、見る人も翳あるものにひかれるのでしょうか。

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