Heart strings 1   
    **** 心の琴線 ****

   Heart strings2      Heart strings3     Heart strings4

  心の隅っこに残っていった思い出のかけら、季節の残像、風景、愛しきものたち、わたしの感覚。

 雛祭り                                      

 右の写真は、私がまだ7ヶ月の時。お雛様の初節句に撮ったものだ。
 家の中にあるお人形を全部並べての記念撮影である。
 この写真を見ていると、こんな首の座っていない赤ん坊時代が、
 自分にもあったということが、なんだかとっても不思議で・・・。

 一人で生きてきたような顔をしていても、祖父母がいて、親がいて、
 親戚がいて、助けてくれる沢山の友人たちがいて、
 今日のこの日まで、私は生かされてきているのだ、
 と改めて感じざるを得ない。
 こういう写真を見ていると、自分が生きてきた数十年の記憶が
 グルグルと回って現れては消えて、現れて消えて・・・。
 
 そうそう雛祭りの話。この間遊びに来てくれた友人が、
 お雛様が近いからと、とってもかわいい春の小さな和菓子を
 おみやげに持ってきてくれた。
 箱の中には、桃の花や、山吹の花のような練りきり、若草色の大納言、
 春を彩り、かたどった小さな和菓子たちが、お雛様の飾りのように、
 ちんまりと並んで納まっており、食べるのが勿体ないくらいであった。
 
 季節を大切にする日本人の心。
 いろいろな春を思い出しながら、惜しむくらいに、楽しみながら、
 味わいながら。


 
 ミルク・マジック                                 

 眠れない夜、ミルクをレンジでチンして、ハチミツを少したらして飲む。
 コーヒーの時とは、ちょっと違う安堵感。
 ささくれ立った神経が一口飲むごとに、少しずつ少しずつ納まっていく感じ。
  最後まで飲み終えると、ファーっとあくびが出た。
 不安な気持ちも、憂鬱な気持ちも、心と身体が暖まると不思議に
 引いてゆく。
 明日になれば、またきっと、落ち込んだり、悲しんだり、悩んだり、
 怒ったり、楽しんだり、笑ったり。
 とりあえず、そんな感情たちをなめらかな状態に戻してくれる、
 私のナイトキャップ、ミルク・マジックの安定剤。
 
 
 

   
 なごみの瞬間                                  

 窓ガラスを通して入ってくる午後の日差しは、きらきらと明るい。
 もう春が、そこまで近づいてきている証拠だ。
 何も予定が入っていない午後、コーヒーを入れながら、
 チェロの小品集を聴く。コーヒーのいい香りが部屋中に漂い、
 ヴァイオリンの高い音とは違う、木を切るようなゆったりとしたチェロの
 低音が響く。曲はバッハの無伴奏。

 部屋の空気がかすかに震えながら、音と共にだんだんと溶けてゆく。
 陽の光りと、空気と、音と、香りと、私の心の一体感。
 魂が感じる「なごみの瞬間」。
 そして、安心の「気」に包まれる。
 これは、きっと、神様がくれた、束の間のプレゼント。
 

 

       
   
 Breakfast Bread                              

 朝食はいつもバタートーストである。
 それにコーヒーがつくだけの、いわゆるコンチネンタルブレックファーストと
 呼ばれるもので、食後、たまにヨーグルトなどをつけたりする時もあるが、
 毎日あきもせずに、ほとんどバタートーストとコーヒーというスタイルで、
 一日が始まる。

 普段の食事は一日2食はパン、ご飯は1食でいいと思っているぐらいに
 パンが好きだ。
 だからヨーロッパへ旅行すると、豪華な夕食よりも色々なパンが食べられ
 る朝食の方が楽しみだったりして、結構チープである。
 
 イギリスのホテルでは、薄い食パンがトーストされ、斜めか半分に切られて
 トースト・ラックに挟まれて出てきて、「あー、厚切りトーストが食べたい」
 と思いつつ、薄切りのパンを口に入れながら、かのリンボウ先生(林望)
 著作の「イギリスはおいしい」を思い出し、「イギリス人はこのままでは
 食べないのね、パンがこんなに薄くって半分に切ってあるのは、これに
 マーマレードや、チーズや、人によっては目玉焼きなんか乗っけて食べる
 からって。日本人はパンもご飯と同じ主食として考えるので、厚切りトース
 ト一枚が十分主食になるけれど、イギリス人はパンをなにかをのせるため
 の台として考えているから、こんなに薄く、そして半分か斜め切りになって
 いるって書いてあったわ、ああ、そう考えれば文化って色々」と、
 頭の中で人様の書いた文章にうんちく垂れながら、薄切りトーストの味を
 堪能したりする。

 フランスのホテルでは、おきまりのクロワッサン。たいていは温めてあるの
 でバターたっぷりの風味がきいている。しかし、さらにその上にバターを塗
 ってコテコテにくどくして食べると、熱いカフェオレとの相性もさらに抜群に
 なる。(と私は勝手に思っている) そのクロワッサンも、中心にチョコやカス
 タードクリームが入っているの
あって、これもまたアツアツで中のクリーム
 がトロトロになっているのを朝から食べられるのも、甘党の私にとってはう
 れしいことで。

 ドイツやイタリアで食べたパンはどれも固かったが、噛めば噛むほど味が
 出てくるという感じであった。
 どこの国だか忘れたが、ヨーロッパの聖歌隊の男の子たちが、公演で来日
 した時、「日本のパンは柔らかくて、甘いからイヤだ」と言ったそうだ。
 あの固くって質素な味のパンを毎日食べていれば、そう思うのも当然だろ
 う。

 私の場合も、バカの一つ覚えのように某メーカーの食パンを食べている。
 最近はどこでも、食感や微妙な味わいにこだわっているところが多いが、
 一度これだと決めるとあまり浮気はしないようで、とりあえず今の味で
 結構満足している私なのだ。
 
 
 
  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白とグリーンの花束                              

 花屋さんに入って、まず目がいくのが白い花。
 友人へのプレゼントのブーケやアレンジも白とグリーンを基調とした
 色合いを選ぶことが多い。
 どうもごちゃごちゃした色合いはあまり好きではなく、
 特にピンクに紫、ピンクに青といった組み合わせ等が苦手なようだ。
 色の好みは結構うるさく、例えばピンクならば普通のピンクではなく、
 ベビーピンクのように少しオレンジが入った方が好きだし、
 黄色も山吹色は苦手なのに、カナリア色はなぜか好きで、
 そして白も純白よりかは、生成がかっている方が好きなようである。 

 だから私が花束を作ってもらう時は、差し上げる方
の好きな色合いを
 考えなければいけないのに、やはり自分の好きな基調の色合いとなって
 しまうことが多い。
 
たまにお店の人に「かわいい感じで」と抽象的な説明でブーケなどを
 作って貰うと、出来上がった色合いを見て「あっ、最悪・・・」と思うことも
 しばしばあるのだが、しかし、それがかえって持っていった方に
 喜ばれたりして、人の好みとは様々だと思い知らされるのである。

 色合いの好みがほとんど一緒という友人がいる。
 私の誕生日には必ず花を贈ってくれるのだが、まるで私の好きな色合いを
 手に取るが如くのセンスで、毎年いただくのを楽しみにしている。
 ポップな色合いを好む人、パステルな色合いを好む人、
 ダークな色合いを好む人、私のように同色系でまとめるのが好きな人と、
 色彩の好みも本当に人それぞれで、だからたまに同じ色彩感覚の人と
 出会うと、なんだかとってもうれしくなってしまうのである。 
 
 
 

 
 アンティークのアクセサリー                            

 華奢で、はかなげで、妖精のような雰囲気の人にあこがれた。
 もちろん女性である。なにしろ自分はその正反対にいるものだから。
 1月の初め、某デパートで4日間お仕事をした時に、その雰囲気に
 ぴったりの女の子がいた。
 年の頃はまだ20ちょっと過ぎぐらい。髪型はかなり短めのワンレングス、
 髪の毛の色は、もちろんきれいな栗色。160cmぐらいの身長に、
 体重は多分42,3キロぐらいで、肌は透けるように白かった。

 その女の子のいたブランドバッグ売場は、おしゃれな制服があり、
 白か黒のTシャツに、パリのカフェにいるギャルソンの制服風、
 黒のロングエプロンを腰から巻き、黒の靴下に黒のローファー、
 靴下のさりげない下がり具合が、その女の子の細い足を強調していた。

 昔から好きだった金子功さんの洋服も、華奢で妖精のような女の子が
 着ると本当にステキで、特に金子さんの奥さんの立川ユリさんは、
 ファニーフェイスではありながら、妖精的な雰囲気をいつまでも持っている
 人だった。(この前代官山で見かけたら、すっかりオバアさんになっていて
 驚いた。でもやっぱり妖精的(魔法使い的?)なオバアさんであったが)

 そんな繊細な雰囲気を求めては、よくアンティーク屋さんにも出かけて、
 パリの蚤の市あたりで売っていそうな、ちょっと凝った刺繍入りの
 ブラウスやガラス玉をはめ込んだアクセサリーなどを買い集めていた
 ことがある。もちろん、自分のお給料の中から買えるものなので、
 ブラウスでもせいぜい1〜2万ぐらい、アクセサリーならば数千円ぐらいの
 ものだったが。

 アクセサリーは50年代に作られた、いわゆる「ジャンク」類で、
 ここ10数年ほどこの手のアクセサリーは、あまり流行ってはおらず、
 ほとんど身につけることもなかったのだが、ちょっと気になって飾り棚の
 中で眠っていたものをひっぱり出してみた。

 その年代に作られたデザインや風合い、可愛い色合いはずっと普遍的で、
 ただ見ているだけでも、持っているだけでも、なんとなく楽しい気分に
 なれるのが、私のお宝の良いところなのかもしれない。 

 しかし今思えば、私の場合、あの当時あこがれいた雰囲気は、
 いつまで経っても「無い物ねだり」だったみたいで・・・・。
 
 
 

 
 愛するハーモニー                                

 春になると、なぜか必ず聴きたくなる曲がある。
 1972年にコカ・コーラのCMで、日本を初め全世界で流れていた、
 イギリスのバンド・ニューシーカーズの「愛するハーモニー」だ。
 その当時、いつもTVから流れるこのCMを「ああいい曲だ」と
 思いながら聴いていたものの、どこの誰が歌っているのかまでは
 把握しておらず、その後、月刊「明星」や「平凡」についてくる付録
 「YOUNG SONG」等の歌本で曲名や歌手を知ったのだが、
 ついにレコードを手にすることはなかった。 

 ちょうど住み慣れた東京から、神奈川へ引っ越した時期で、
 学校も友人もすべて変わり、おまけに引っ越したと同時に病気をしたため、
 新しく入った学校も早々に1ヶ月も休んでしまい、病気の辛さと不安と、
 環境の変化とでかなりのストレスを感じていた記憶がある。
 そんな時、いつもこのCMがTVで流れるとなぜか心が和んだ。
 曲のイメージとCMが流れていた季節から、勝手に「私の春の曲」と
 決めていた。多分歌詞は「春の歌」とは似ても似つかない内容だと思うの
 だが・・。 
(どんな歌詩なのかは、未だに知らない)

 そして月日は流れに流れて、ビクターから出ていた70年代ヒット曲ばかり
 を集めた(それも全部日本でのヒットを中心にした)CD13枚セットの中に
 この曲が入っていることを知り、その他にもどうしても欲しい曲がいくつか
 入っていたので、1999年11月に3万幾ばくかを出して購入してしまった。

 約27年の月日を経て、やっと「愛するハーモニー」の曲を手に出来たの
 である。
 ああ、長かった・・・・。

  

 

 

 春の苺                                       

  果物屋さんでは、たくさんの苺が出回っている。
 赤い苺はかわいい女の子のようで、春を呼ぶ色彩だ。
 お菓子屋さんでも少し早い季節を先取りし、
 店頭にはおいしそうな苺のお菓子がたくさん並ぶ。
 もちろん苺も、苺のお菓子も一年中あるにはあるけれど、
 今の季節
の苺は、モノトーンの冬色の中、春の光と暖かさを
 感じさせてくれる。

 苺のショートケーキ、苺のミルフィーユ、苺のスフレ、苺のミルクレープ、
 苺のパフェ、苺のアイスクリーム、ナポレオンパイ・・・・。
 手の込んだお菓子は数々あれど、昔、苺はミルクにお砂糖を入れて、
 スプーンでつぶして食べるのが定番だった。
 その場合、つぶす時にちょっとでも気を抜くと、ビシャとミルクがかかり、
 結構やっかいな食べ方ではあったのだが、つぶした苺とミルクとお砂糖が
 混じり合った、ピンク色のハーモニーが何とも言えず可愛く、
 いつも惜しむように、大切に飲み干した記憶がある。
 
 今は苺の糖度がかなり高いので、そのまま食べることが多くなった
 ようだ。その他にも甘〜いコンディスミルクをかけて食べるのも
 やめられないおいしさで、書いているうちに、なんだかとっても苺が
 食べたくなってしまった今日の私である。


 

 
 70's FUN                                       

 70年代を丸ごと10代で過ごしてきた私は、ご多分に漏れずTV大好き
 少女だった。そして、あこがれていたのが海外TVドラマの主人公たち。
 ちょっとでもカッコイイ男の子が出てくると、もうそれだけで胸がワクワク
 踊った。
 当時放送されていた番組は、「ルーシー・ショー」、「奥様は魔女」、
 「ザ・モンキーズ」、「じゃじゃ馬億万長者」、「ニューヨーク・パパ」etc、
 そして、その中でもダントツに好きだったのが、「パートリッジ・ファミリー」。
 
 5人の子供と父親無しの母子家庭であるパートリッジ家は、
 家族でバンドを組み、ドラマの中でも人気者の設定で、音楽の旅回りをして
 いた。母、長男、長女、次男、次女、三男の他にマネージャー役の
 キンケードさんという三枚目が加わり、毎回賑やかなストーリー展開で楽し
 ませてくれた。

 しかし私の場合、内容を楽しむというより、むしろ長男役のデビッド・
 キャシディを見るために、チャンネルを合わせていたという感じだったのだ 
 が。しかし、このデビッド・キャシディは本当にカッコよかった。
 甘いマスクに、甘い歌声、ブラウン管の中でニッコリと微笑
だけで、
 ハートは、メロメロのグニャグニャ。
 人気があったのは、アメリカは元より、日本、イギリスでは船の中にいる
 デビッドを追っかけて、川に飛び込んだファンもいるくらい熱狂的だったとか。

 その他に忘れてはならないのが、パートリッジファミリーの音楽。
 「悲しき初恋」や「さよなら初恋」等、放映された70〜74年
(アメリカで)
 の間には、何曲かのヒットにも恵まれた。
 しかしアイドルの悲しいサガか、放映が終わった後、いつの間にか、
 記憶の彼方に消え去られてしまったようである。

 しかし、アメリカでは昨年放映30周年記念ということで、ドラマのビデオが
 発売されたり(残念ながら日本では未発売)、デビッドも50代の壮年に
 なりながら、ライブをこなしたりと活躍しているらしい。
 
 
 60年代後半から70年代前半にかけては、ベトナム戦争や反戦運動、
 その他政治的、世相的にもアメリカは決して底抜けに明るい時代では
 なかったはずで、今となっては光と影、陰と陽を感じさせずにはおれない
 のだが、少女時代の私はそんなこと
を考える頭など、みじんも持ち合わせ
 てはおらず、ただひたすらに遠い外国の生活、外国のカッコいいに男の子
 にあこがれていただけの幸せ者であった。

 私の70’sに乾杯!

  クリックすると、パートリッジファミリーの画像と
テーマ曲が聴けます。


   
 

 

 

  

 at seventeen                                 

”17才の頃 私は真実を知りました。
 美人コンテストの女王たちや かわいい笑みを浮かべた女学生たち
 早く結婚して 落ち着こうとしている こんな人たちのところに
 春が訪れるのだと・・・・・・ 美人でもなく 魅力的でもない私は
 家に閉じこもってしまうよりないのです それでもずっと遠い昔
 もっともっと若かった頃 私のようなキレイでない女の子たちにも
 夢だけは輝いていたものです ”

 1974年にアメリカでヒットした、ジャニス・イアンの「at seventeen
 (17才の頃)」の訳詞である。
 つぶやくように歌うジャニス・イアンを知ったのは、いつも聞いていたFEN
 からだった。土曜日の午後になると、「American Top40」という番組で
 毎週の全米TOP40チャートが聞けるのである。
 当時、アメリカンポップスが大好きだった私は、勉強そっちのけで、
 いつもこの番組に聞き入っていた。 
 
 そして多感な10代の私は、まるで自分の気持ちを代弁してくれているか
 のようなこの曲に入れ込み、ずいぶんと心癒されたものだった。
 この歌詞の女の子は、ジャニス・イアンそのものであり、美しくもなく、
 魅力的でもない女の子でも、実は感受性が強く、心は傷つきやすく、
 そしてジャニスの凄いところは、その心の傷を聞く人の胸に染み入る歌に
 変えてしまうという、稀な才能があったということで、みずからの傷口を
 舐めるように、数々の歌を生み出し、またそれらの歌は多くの人々に
 感動と共感を与えてきたように思える。

 日本では、この曲よりも「Will you Dance?」や「Love is blind」が
 有名であり、かくゆう私も大好きなのだが、 
 でもやっぱり、いつでも無性に聴きたくなるのは、「at seventeen」。

    at seventeen (音符をクリックすると曲が聴けます)
 
 

 
 バービー人形                                  

 バービーが誕生して42年経つそうだ。
 私の世代より少し上の女の子が楽しんだお人形であるが、
 今やアメリカは元より、日本でも、世界各国でも、
 熱狂的ファンがたくさんいることで有名だ。
 特に初期に発売された数が少ない物には、かなりのプレミアが
 ついているとか。
 中には、最初から投機目的で収集している人もいるらしいが、
 あの切れ長の目をした大人顔と、ナイスバディのバービーは、
 子供よりも大人に好まれているような気がする。

 アメリカのフリーフォトでも、バービーが衣装を変えて、
 たくさん登場してくる。
 シロウトが「マイ・バービー・コレクション」などと銘打って、
 自分が持っているバービーを撮影した写真もかなりある。
 その中でかなりレアっぽい、可愛いバービーを発見してしまった。
 右の写真がそのお人形。
 普段、バービーなんて集めていない私でも、思わず「欲しい」と思った
 チャーミングさだった。
 

 

 
 静かな風景                                   

 昔から、写真にしても、絵画にしても、賑やかな物音が聞こえてこない、
 静かな風景に心惹かれるようだ。
 どうも今流行りの「癒し」系が好みらしい。
 音楽もしかり。お店でのBGMも、そんな曲ばかりをかけていたので、
 お客さまからも何度となく、「ものすごく落ち着く店ですね。
 時間が経つのを忘れてしまう。」と言われた。
 おまけに内装もパイン材を使ったナチュラル系の上に、
 窓から緑の木々が見える中庭があったので、尚更だったようだ。

 雪がしんしんと降り積もる風景、風が一瞬止んだような風景、
 なんだかうまく説明出来ないのだが、
 間とか、行間とかそういう空間を感じ取れるものに、
 どうも安堵を感じるようである。
 しかし、「癒し」を受けるほどストレスを感じていない、
 まだ3、4才の頃から続いている感覚なので、
 自分はどうしてこのような世界を求めているのか、なぜ好きなのか、
 いまだによく分からないのである。
 それは、もしかしたら遠い前世の記憶・・・。


 

 
 カントリー・ベア                                  

  お店を閉める時に取引先の方から、ハンドメイドのカントリー・ベアを
 いただいた。
 昔、アメリカンキルトやカントリー雑貨のお店をやっていて、
 今は、愛犬のためにハンドメイドのお散歩用バックなどを作って
 販売しているご夫婦からのプレゼントである。
 特にその奥さんの、アメリカンフォークアート好きは年期が入り、
 アメリカにも足げく出かけ、アンティークキルトや古い雑貨などを
 集めていたらしい。
 
 そんな奥さんの美的意識と眼鏡にかなった、ハンドメイドのカントリー・
 ベア。 お友達が作っているとかで、一枚一枚、手縫いのキルト地を使い、
 手足がちゃんと動く作りで、腕に止めてあるボタンも木で出来ていて、
 中が星形の凝った模様になっている。
 決して量販されていない、古き良き時代の手作りの暖かさが感じられる、
 こんなベアは、まだおもちゃの少なかった時代に、
 親から子供へと、大切に大切に伝えられていったのであろう。
 ヨーロッパのテディ・ベアとは、またひと味違った趣きで、
 私のお気に入りのひとつとなった。 
 

 

 
 ロンドンデリーの歌                                

  小さい頃、毎朝オルゴールの目覚まし時計で目が覚めた。
 鳴っていたのは、「ロンドンデリーの歌」、アイルランド民謡である。
 そのせいか今でもこの曲を聴くと 「三つ子の魂百までも」というくらいに、
 まるで条件反射の如く、子供時代の気持ちに戻ってしまう。

 仕事を持っていた母の朝はとても忙しく、このオルゴール時計と共に起き、
 私のお弁当を作り、家族の朝食を用意して出勤していった。
 おまけに母は、私とは似ても似つかない努力家で、
 朝の用意をしている間に、NHKラジオの英会話講座も
 聞いて勉強していた。
 
 家族が有り、仕事を持ち、それでも何かをやっていなければ
 気が済まない性格だったらしく、その他に能の謡、書道、生け花、お茶、
 和洋裁、レース編み、と師範の資格が取れるものはすべて取り、
 子供の私にも、自分と同じような完璧さを求めてきたのだが、
  いかんせん、どちらかと言うと父親似の私は、
  なにをするのにもトロく、母に厳しくされればされるほど、
 母に逆らうことが出来ない、口数の少ない内弁慶な子供に育っていった。

 そんな厳しい母も、ガンという病魔には勝てず46才の若さで他界し、
 母の死と共に、壊れて鳴らなくなったあの目覚まし時計が、
 外にうち捨てられていたのを思い出す。
 まるで母と一緒に、あの世へ連れ去られてしまったかのように。
 
 今でもロンドンデリーの曲を聴くと、母がいたあの朝の風景が、
 遠い彼方から蘇ってくる。

     ロンドンデリーの歌(音符をクリックすると曲が聴けます)

 

 
 2月の記憶                                     

 「鬼は外、福は内」
 冬の邪気を払って、春を待つ立春の節分。
 子供の頃は、電気を消した部屋の押入には「鬼」が隠れている、
 と思っていた。
 暗闇の中で、息を殺して私を見ている冬の鬼たち。
 だから思いっきり大きな声で、「鬼は外、福は内」と豆をまく。
 夏は不思議とこんな思いを持たないのだが、
 冬は暮れていく闇にも、丸裸となった木立にも、
 なんだか魔物が潜んでいそうな、そんな気配を感じる。

 冬を追い払って、春を呼ぶお祭りは各国にあるようだ。
 何年か前に旅行したフランス・ニースの「光のカーニバル」も、
 冬を表す張りぼての人形を燃やし、メインストリートに花を降らせて、
 春を呼んでいた。
 2月ともなれば、芽生えの春が待ち遠しいのは、どこの国でも同じらしい。

 節分は過ぎたものの、まだまだ東京は寒い日が続く。
 しかし気持ちだけは、なんとなく春に近づき、
  春が恋しくなっているようである。

 

  
 ドイツのリンゴパン                                  

 吉祥寺に「リンデ」というドイツパンのお店がある。
 昔、ここ武蔵野に住んでいた「リンデ」という女の子が、
 ドイツに戻ってからも、この街を愛し続けたのだが、
 残念なことに20才という若さで、白血病の為にこの世を去られ、
 その娘さんの思い出を大切に残したいご両親の尽力で
 出来たお店である。

 プリッツエルなど、ドイツ独特のおいしいパンがたくさん並ぶ中、
 私が一番好きなのはリンゴの入ったパン(正式名はちょっとわからず)

 アップルパイのような、でもパイではなくって、ちょっと違った
 微妙なリンゴのパン。
 
普通「アップルパイ」というと、パイ生地の中に、
 薄くスライスしたリンゴが敷いてあるのだが、この「リンゴパン」は、
 分厚く切って煮込んだリンゴの間にパン生地が入り、
 さらに干しぶどうが入り、それが何層にもなっている。
 もちろんシナモン風味で、一個食べれば、
 結構お腹にずしりとくる食べ応えだ。
 「リンゴパン」一つとってみても、なんだかとっても重厚で、
 やはり「ドイツの味」という感じがする。

 もちろん、その他にもたくさんのおいしいパンがあるので、
 近くにいらした方は、是非お立ち寄りを。
 1Fで買ったパンを食べられるよう、2Fはカフェになっている。
 (吉祥寺・サンロード西友向かい)


 

  
 極楽イタリア人になる方法                             

 NHK教育テレビ「イタリア語講座」なる番組を見ていた時期があった。
 日本人講師の他に、数人のイタリア人も出演していたのだが、
 お堅い番組の中で、カメラに向かってウィンクしたり、ジョークを飛ばしたり、
 一人だけとってもお茶目で、典型的イタリアーノな男性がいた。
 それがジローさんこと、パンツェッタ・ジローラモさんだった。
 今ではイタリア料理の本を出版したり、読売新聞でお料理の記事を
 連載したり、CMにも出たり、ドラマにも出たり、と大活躍していて、
 ご存じの方も多いかもしれない。

 そのジローさんが披露する心温かきイタリア歳時記「極楽イタリア人に
 なる方法」(KKベストラセラーズ刊・文庫本有り)
 バカンスの話、故郷ナポリでの悪ガキ時代の話、こだわりのカフェや
 ワインの話、イタリア犬事情(特にジローさんの実家へ、日本から渡って
 いった「お行儀のよいお坊ちゃん犬」柴犬タロが、1ヶ月でお座りもお手も
 面倒くさいことは一切しない、気に入らないと怒り、機嫌がよいと
 やたらとはしゃぐ、それはそれは立派な「ナボリ風悪ガキ犬」へと
 変身するくだりはすっごく笑える)、などなどウィットに富んだ文章と
 楽しい話で、読み手をぐいぐいと引きつけていく。

 イタリア生まれのイタリア育ちが、溢れるイタリアへの思いを込めて書いた
 この楽しいイタリア本(ただしナポリ限定だけど)を読んでいると、
 なんだかそれだけで、底抜けに幸せな気分になれてしまう。
 私のイタリア教本。
 「続・極楽イタリア人になる方法」も有り。 
 

 
 見知らぬ国から                                   

 シューマン作曲「子供の情景」の一曲。このページのBGM。
 「子供の情景」で有名なのは7番目の「トロイメライ」。
 どれも優しい曲調のピアノ小品であるが、その中でも、
 特にこの「見知らぬ国から」(「異国より」とのタイトルも有り)が、
 聴いていて一番心安らぐ。
 すっかり年を取って、「おばさん」と呼ばれる今になっても、
 この曲が流れると、心は夢見がちだった少女時代に、
 いつの間にか戻っている。
 夢、希望、憧憬、甘酸っぱい記憶。
 まだ見たことのない異国に思いを馳せていた時代から、
 時は流れに流れても、子供の頃にあこがれた、
 あの遠い国への慕情は、いまだに変わってはいない。

 

 
 ゆきのひ                                        

 うえ  みれば むしこ
 なか みれば  わたこ
 した  みれば ゆきこ
 
 1966年に福音館書店から出版された、加古里子(かこさとし)の絵本、
 「ゆきのひ」の一文である。
 私が通っていた幼稚園では、希望者に毎月一冊づつ、絵本の購入が許さ
 れていた。うちの親も私の為に、それらの本を購入してくれていたのだが、
 その中で一番好きな絵本であった。
 残念ながら、当時のものは紛失してしまい、今手元にあるのは23年前の
 もの。人気があるらしく、初版から19刷も数えている。
 初雪から豪雪に至るまでの過程を、子供たちの雪遊びや、町や田舎の
 生活、吹雪の怖さ、雪の中で働いている人々を絡めて、
 詩情豊かに描いている。
 子供のころ、眠る前にいつもこの絵本を眺めた。
 楽しくって、それでいてホッとするのである。
 文句なく子供時代の一番好きな本。 
 
 

 
 夢は風の中に聞こえるあの音                          

 20年前に見た、元NHK演出家・佐々木昭一郎氏のドラマ、
 「四季−ユートピアノ− 夢は風の中に聞こえるあの音」。
 ドラマといってもストーリー仕立ての作品ではなく、若いピアノ調律師の
 A子さんが子供の頃に記憶した「音」を探す物語。
 調律棒一本で、小さな村の小学校にある古いピアノと出会ったり、
 町にやって来たサーカスの象と遊んだり、風の音や雨の音、
 季節の音を調律したり、なんだかとっても不思議な、そして感覚的な
 作品だった。
 でも一回見たら忘れられず、何回かの再放送も見た記憶が・・・・。
 佐々木昭一郎氏はその後、「川の流れはヴァイオリン」、
 「アンダルシアの虹」、「東京オンザシティ」、「夏のアルバム」、
 「プラハの鐘」、「ヤン・レツル物語」等、
 毎年一回必ずNHKで作品を発表した。
 寡作だが、熱狂的ファンがいる。もちろん私もその一人・・・・。
 

 

   Heart strings2     Heart strings3