Heart strings       
     **** 心の琴線 ****

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  心の隅っこに残っていった思い出のかけら、季節の残像、風景、愛しきものたち、わたしの感覚。

 夏は緑の風の中で                     

 ストレスがたまり放題のこの都会、ビルの窓から木が一本見える
 だけでも、多少のストレスが癒えるらしい。
 それだけ緑というのは、現代社会において重要なストレス解消
 アイテムだ。

 今私が住んでいるマンションは、バス通りに面した騒音の
 うるさい場所に建っている。
 窓など開けていると、救急車やパトカー、消防車のサイレンの音、
 バリバリバリバリバリとマフラーを外したバイクのふかし音、
 そしてバスやトラックの騒音に、排気ガスの匂い、
 そんなものが次から次へと耳や鼻に飛び込んできて、
 それはもう、ストレスを感じさせてくれる宝庫のようだ。
   
 太陽の照り返しがきつい、アスファルトに囲まれた街では、
 ヒートアイランドとの名前の通り、鋼鉄の高炉の中ですべてが溶けて
 消えていくような錯覚さえを起こさせる。

 そんな蜃気楼が立ち上りそうな町中にいると、心の底から木々の
 緑が恋しくなる。
 窓のない建物の中にいると、緑の風の中を歩きたくなる。
 夏草のモワッとしたあの青臭い匂いを、鼻孔いっぱいに
 吸い込みたくなる。
  
 ああ、願わくば夏は緑の風の中で、
 緑の木陰のデッキの上で、ゆっくりとゆっくりと昼寝をしたい。
 緑の風の中で、ひと夏ゆっくりと過ごすのが、
 私の人生最大の夢。
 ああ、願わくば何時かは。 


 

  

 

 

 

 I LOVE ICE CREAM                  

 お菓子の中で何か一番好きかと聞かれると、
 考えるまでもなく、「アイスクリーム」と答える。
 それも乳脂肪たっぷりの濃いバニラアイスが好きだ。

 実は今日も吉祥寺へ出かけ、「ああ、暑い」と駅前の
 某アイスクリームショップへフラフラ入り、
 「キャラメルリボン」なるネーミングのついたアイスクリームを
  注文した。
 濃厚なバニラアイスの中に、トロトロのキャラメルソースがリボン状に
 入っている超がつくほどの甘い味だが、私にはこれがたまらない。

 このような嗜好のため、シャーベットやフローズンヨーグルト、
 かき氷のさっぱり系はあまり得意ではない。
 もちろんあまりにも暑い日中に外で食べるとしたら、
 これらを注文するとは思うが、
 かき氷でさえアイスクリーム入りの練乳がけにいってしまうので、
 どちらにしても、結局はこってり味に軍配が上がる。

 子供の頃、一番好きだったのがホームランバー。
 そして海の家で食べた想い出アイスは、
 懐かしの赤と緑の水玉模様パッケージの明治バニラアイス。
 BGMは、黛ジュンの「天使の誘惑」がぴったり。
 小学生時代に一番食べたのが、グリコのイチゴとバニラが
 半分づつのカップアイス、永遠のアイテムとしては、
 根強い人気のジャイアントコーン。

 そして今年、イチ押しはバニラアイスの中にゆで小豆が
 たっぷり入った「アイスまんじゅう」。
 (実は前からあったが、店頭であまり見かけなかった)
 これは売り切れ続出中ってことで、お店で見つけたら
 即買いだめするべし。
 
 ああ、今年の夏もアイスで始まり、アイスで終わりそうな。。
  

 

 

 

 

 

 

 

 夢見るガーデニング                      

 最近とみに土いじりがしたくなってきた。
 「DEAR SNOWY」を始める前に、いきなりガーデニングに
 凝った時期があったが、それはお店を彩ろうという目的が
 あったためで、よくポット苗を買ってきては鉢に植え替えた。
 しかし、ただそれだけであった。
 くちなしの苗木をお店の庭に植えたのは、4年ほど前。
 その花はお店を閉めた年に初めて咲いたが、
 今年もまた、あの小さな庭でよい香りを漂わせているのだろうか。
 
 さてマンション住まいだと、なかなかガーデニングには凝れない。
 広いルーフバルコニーでもあれば別だが、
 我が家にあるのは、小さなアイビーの鉢植えが数個だけである。
 それも「DEAR SNOWY」時代の名残りだ。
 来年あたりには、食い気だけでラズベリーやブルーベリーを
 やってみようか、とは考えているものの、
 なんだか鳩やカラスについばまれそうで、現実はなかなかうまく
 いかないかもしれない。

 夢は100坪ほどのイギリス風邸宅。庭には四季の花々。
 バラの花のアーチに、ウエリカムリース。
 木々の葉が風にそよぎ、大好きな白い花だけを集めた
 ホワイトガーデンの中でテーブルを置き、お茶を飲む。

 うーん、どう考えても夢以外のなにものでもない。
 それじゃせめても、人様の素晴らしいガーデニングHPの中で、
 夢を見させていただたこう。
 
               
アルバガーデン 

画家・宇藤カザンさんの「イギリス花便り」
フランス・ブルゴーニュでイングリッシュガーデンを作られていたが、
イギリスに移住され、新たにイングリッシュ・ガーデンに
チャレンジされる予定らしい。
四季折々の花々がそれはそれは美しいHP。

 

 

 

 

 

 

 ギンガムチェックの初夏                    

 少しばかり暑い日差しに、さらさらした風が通りすぎる午後、
 なぜかギンガムチェックの服が着たくなる。
 綿素材のブラウスやワンピースに、素足で白のスニーカー。
 ちょっと田舎っぽく装う。

 まだ私が子供の頃に観た、イギリスの映画「小さな恋のメロディ」
 主人公の女の子、メロディが着ていたのが、
 水色ギンガムチェックのミニワンピース。
 ロンドンのパブリックスクールの制服だ。
 当時小学生だった私は、とにかくこの制服にあこがれた。
 ワンピースからは、スラリとした長い足が出て、
 可愛いいこと、この上ない。

 その時の印象がとても強かったせいか、
 未だにギンガムチェックはあこがれの柄である。
 自分の持っている洋服の中でも、ダントツに好きなのが、
 紺のギンガムチェックワンピース。
 綿なのでとっても着やすく、ジャバジャバ水で洗えるのもいい。
 そのワンピースに、20年も着込んだGジャンを羽織り、
 白い花のコサージュをつけて、白のスニーカーを履く。
 特に今年は、フォークロアが流行っているから、
 その上に、白いレースのカーディガンを羽織っても可愛い。

 人がなんと言おうとも、70、80歳になっても、
 「着てやろう」という意気込みを持つほど、
 私にとっては、ギンガムチェックは永遠のアイテム。
 目指せ!ギンガムチェックが似合うおばあさん。
 それって、とっても可愛いいわよね〜
 (バケモノと呼ばれない努力は、一応しよう・・・)

 

  
 カリフォルニアの青い空                    

 1970年代前半、私はラジオから流れるアメリカンポップスの
 シャワーを全身に浴びていた。
 ヒッピーとドラッグとベトナム戦争のそんなアメリカではなく、
 当時流行っていたアルバート・ハモンドの歌う、
 「カリファルニアの青い空」のタイトルのような、
 陽光きらめくアメリカにあこがれた。

 当時住んでいた街の近くには、アメリカンスクールがあったり、
 オシャレな平屋のアメリカンハウスが建ち並んでいたり、
 世の中では、やたらとハーフの女の子たちがもてはやされ、
 多感な10代初めの女の子にとっては、日本で見るアメリカが
 素敵に思えた時代である。

 FENから流れる「アメリカンTOP40」、毎週土曜日夜になると、
 ラジオ関東で「アメリカンTOP40 日本語版」をやっていたっけ。
 D.Jは湯川れい子さんだった。
 そして私は、そのすべてのランキング
をご丁寧に書き写していた。
 1974年ぐらいから2年間は、ほとんど毎週聞いていたと言っても
 過言ではない。だから日本のラジオ番組から流れるアメリカン
 ポップスで知らない曲はなかった。
 当時はアメリカでヒットしてから、やっと日本にたどり着き、
 発売ということが多かったような気がする。
 だから日本に来る頃には、「あ〜ら今頃」なんて思っていた。

 当時アメリカが一番行きたい国だった。
 しかし残念ながら未だに一度も訪れたことはないが。
 夢は夢で、思い出は思い出で、あこがれはあこがれで、
 そのまま心の引き出しに仕舞
っておき、時々こそっと開けて
 見てみるのが、一番良いのかもしれない。
 いつまでも色褪せない私だけの宝物として。

 今、CDからは「カリフォルニアの青い空」が流れている。
 
 

    

 

 

 

 彼女はフレッシュジュース                   

 「彼女はフレッシュジュース〜、彼女はフレッシュジュース〜」
 1975年資生堂・春のCMである。
 春になると必ずこの歌を思い出す。
 画面の中では、確かモデルのマイティがブランコを漕いでいた
 記憶がある。 歌っていたのは、りりぃだっけ?
 化粧品のCMは、春は口紅、夏はファンデーション、
 秋はアイシャドー、冬は基礎化粧品と相場が決まっていた。
 特に資生堂とカネボウは、競ってキャンペーンを行い、
 印象に残っているCMがいくつある。

 70年代記憶に残っているのが、「春なのにコスモスみたい」、
 山口小夜子の「お目覚めいかが?」(これは口紅ではなく、
 リバイタルの基礎化粧品だったかな)
 「ボンジュールお目目さん」(カネボウ)、「光ってるね、あの子」、
 秋には「揺れるまなざし」なーんていうのもあったっけ。

 78年は、資生堂、カネボウ共に「バラ」をキーワードにして戦った。
 「君は薔薇より美しい」(もちろん布施明の歌に、モデルはその後
 布施と結婚して別れたオリビア・ハッセーbyカネボウ)、
 「劇的な、劇的な春です」(ベルばらだぁ!by資生堂)
 
 80年になると、カネボウが「レディ80」で、公募で松原千明を選び、
 渡辺真知子の「唇よ、熱く君を語れ」が大ヒット。
 (実は私は、レディ80決勝戦をテレビで見ていた。
 当時松原千明は京都の短大生であった←よく覚えていたって
 自分でもあきれる)

 南沙織がCMソングを歌った「くちびるにメロウカラー」、
 永ちゃんの「時間よ止まれ」、
 「燃えろ! いい女〜ナツコ」、「How manyいい顔」、
 「君の瞳は一万ボルト」、「春先小紅」、「赤道小町ドキッ」、
 「目組のひと」、「君に胸キュン」etc

 ああ、だんだん止まらなくなってきた。
 どうしてこんな化粧品のCMばかり覚えているのか。
 でもこの中で、もう一度是非見てみたいが、
 やっぱり「彼女はフレッシュジュース」なのである。


 

    

 

 

 

 雪の降る町を                           

 東京に降る雪は、大根おろしの如くである。
 しかし一冬にそう何度も降らないから、そんなぼたん雪でも、
 「雪だ、雪だ、雪だ」と心がワクワクしてくる。
 (北国の人が聞いたら、怒りそうだが)

 雪が降ると、下界の風景が一新する。
 普段見慣れた風景が、白一色に覆われ、
 まるで外国の町に住んでいるような気分になる。
 しかし、そんな気分を味わえるのもほんの一日だけ。
 たいてい翌日には太陽が上がり、積もった雪はデロデロに溶け、
 地面はビシャビシャ、散歩に出た犬のお腹もドロドロ、
 結局は、最悪な状態となる。

 何年か前の成人の日に、東京に大雪が降った。
 朝、店へ出勤のために、スノーウィを連れて積もった雪の中を
 かき分けかき分け歩き、普段は35分程で行きつくところを、
 1時間半もかかって到着したのにもかかわらず、
 どこの店も商売にはならないと見て、閉めているところが多く、
 仕方がないから、自分の店も「本日は休業いたします」との
 張り紙だけして、そのままさらに1時間半かけて帰宅した思い出が
 ある。

 やはり雪の降る日は、暖かい部屋の中から外を見ているのが、
 一番いいのかもしれない。
  夢は、暖炉のある部屋で薪をくべながら、窓からの雪風景を見る。

 しかしやっぱり、現実はなかなか・・・・。
 
  
 

 

 

 

 凍える夜                              

 犬の遠吠えが聞こえる夜、月は冴え冴えとし、
 空から冷気が降りてくる。
 パリンと音がしそうなそんな寒さ。
 空気は透明感を増し、通りを歩く人の声やパトカーの
 サイレンさえもいやにはっきりと聞こえてくる。

 子供の頃、こんな冬の夜に不安を感じた記憶がある。
 振り子時計のカチコチとなる音が、
 自分の心臓の鼓動と重なりドキドキしたり、
 風が窓を叩く音に「人さらいが来た」と布団をかぶって隠れたり、
 子供ながらの感覚でそんな不安を捉えていた。
 
 大人になっても、ふとした拍子に思い出す。
 こんな寒い夜には。
 
 
 

  
 クリスマスケーキの誘惑                     

 クリスマスといえば、ケーキ。
 ツリーがなくても、プレゼントがなくても、恋人がいなくても、
 何が無くとも、ケーキだけは必要だ。
 一人で過ごすクリスマスだって、とりあえずケーキだけは買う。
 むなしかろうが、むなしくなかろうが、ケーキだけは絶対に食べる。
 なにしろクリスマスにケーキを食べなければ、私の気が済まない。

 子供の頃のクリスマスケーキは、ピンクのパラの花びらと、
 仁丹のような銀色の丸い小さな粒々の飾りのついた
 バターケーキが主流であった。ロウソクはもちろん赤。
 チョコレートで出来たプレートと小さな家も乗っかっていたっけ。
 子供時代のン十年前は、今のように古今東西のおいしいケーキが
 ご近所では買えなかったので、誕生日のケーキと
 クリスマスケーキが、我が家のイベント菓子の最高峰であった。
 そして一人娘であった私は、当然の如くバラの花も、チョコレートの
 プレートも、小さな家も全部自分のものにしていたのだった。
 ああ、小さき女王さまよ。

 さて今年のクリスマスは小さな生チョコレートケーキを予約してある。
 なぜかというと、バイト先のノルマだからだ。
 そんなわけで、今年も必然的にケーキを食べる運命にあるが、
 どうせノルマがなくても、ケーキを買って食べることには変わりない。

 こうやってクリスマスケーキの誘惑は、一生続くのである。
 数々の思い出と共に。
 

 

 
 気分はクリスマス                          

 11月中旬にして、すでにクリスマスである。私の場合。
 恋慕にも近いこの思い、もう誰にも止められない。
 (誰も止めやしないが)
 とにかく、一人クリスマスの雰囲気に浸るのが好きだ。
 (今もクリスマスのCD
をかけて聴いている) 

 子供の頃から、あこがれていた外国のクリスマス。
 クリスチャンでもなんでもないが、雪降る教会、クリスマスツリー、
 キラキラひかるイルミネーション、クリスマスのお菓子、
 その雰囲気すべてが、好きで好きで仕方がなかった。
 なにしろクリスマスブレゼントより好きだった。
 そして高校は、ぜひキリスト教系女子校に行こうと思ったくらいだっ
 た。(しかし実際入ったのは普通の女子校)

 ある郊外のキリスト教女子校を見に行って、
  小さな礼拝堂に飾ってある大きなクリスマスツリーの、
 心を込めて飾ったオーナメントとイルミネーションのきれいさに、
 「ぜひ行きたい」と思ったのだが、その学校は通学に
 時間がかかるため、泣く泣くあきらめた経緯がある。

 すでに5才にして、母の友人に「キリストとはどんな人か?
 なにをやった人か?クリスマスとはなんぞや?」と、
 しつこく訪ねた年期入りのクリスマスファンなのは今も変わらない。
 (註:別にキリストのファンではない)

 去年クリスマスのことを色々と調べてみたら、
 クリスマス自体は、キリストの生誕にヨーロッパの古くからの
 ユールの祭り(収穫祭等)が長い年月をかけ、融合されて今の形に
 なったということがわかった。
 要するにキリスト生誕にかこつけた土着の祭りである。
 そしてツリーやプレゼント、カードなどが定着した歴史は案外浅く、
 イギリスのヴィクトリア時代ぐらいからだ。

 しかし、そんなことはどうでもいい。
 とにかくこの1ヶ月半、私にとっての最大の心のお祭り、クリスマス。
 あとは存分に思って、浸って、楽しむのみ。

 

   

 

 

 

 オルゴールの響き                          

 子供の頃、どこかの博物館で昔のオルゴールを聞いた。
 当時家にあった、フタを開けると「エリーゼのために」が聞こえてくる、
 小さなオルゴールとはまったく違う音色に、びっくりした記憶がある。
 それはまだ見ぬ遠い国から聞こえてくる、夢のような音だった。

 お店を始めた時、BGM用としてたくさん買い込んだのが、
 オルゴールのCD。
 その昔の、セピアがかった思い出の音色が私の頭の中に、
 しっかりと刻み込まれていたのか、自分の好きな曲が
 オルゴールになっているCDを見つけると、
 つい後先考えずに購入してしまった。

 ここ数年は「α波のオルゴール」とか、「癒しのオルゴール」とか、
 ホッとする系が流行っていたらしく、
 仕入先の問屋さんにも、そんなCDがずいぶんと並んでいた。

 特に好きなのは、なんといってもクリスマスのオルゴール。
 クリスマスの音楽とオルゴールの音色は、はまりすぎるぐらいに
 はまる。
 クリスマスの雰囲気と、ロマンチックなオルゴールの音は、
 あまりにもマッチしすぎるのだ。
 ノスタルジックな気分に浸りたく、毎年あきもせずに
 新しいクリスマスのオルゴールCDを探して出しては聴いている。

 そうそう、昔クリスマスの頃にドイツを旅した時、町中でおじいさんが
 ストリートオルガンを手回していたのを思い出す。
 その前にたたずみ、奏でる音を聴いていたら、
 大きな樅の木のツリーと、サンタクロースの格好をしたおじいさんと、
 手回しのストリートオルガンの不思議な音色と、
 子供時代に記憶した風景とが互いに交じりあい、
 過去の世界にすっと引き込まれるような、そんな錯覚を一瞬、
 覚えた。
 


   

    

 

 

 リンゴの匂い                              

 お店をやっていた時、お客さんからよくリンゴをいただいた。
 飼い犬のスノーウィがリンゴ好きだったので、
 おみやげに買って来てくださるのだ。
 カウンターの上に置いておくと、なんともいえない甘酸っぱい匂いが
 お店じゅうに広がっていった。

 吉祥寺に「ポンポムルージュ」という、りんごの専門店があり、
 今から2年半前にクローズしてしまったのだが、
 とにかくリンゴのものなら、食品からお菓子、雑貨の類に至るまで
 なんでも揃っていて、雑誌やTVにもよく出ていた。
 このお店も、リンゴの甘酸っぱい匂いでいっぱいだった。

 缶キャンドルの「アップルシナモン」。
 12月になると、このキャンドルをよく灯した。
 リンゴとシナモンの香りはほどよいブレンドで、
 クリスマスの頃を思い出させる。
 アメリカに住んでいた友人が、
 「こちらで家を売るときは、アップルシナモンのキャンドルを灯して、
 アットホームなイメージを演出するのよ」
 と言っていたっけ。
 アップルシナモンの香りは、きっと「暖かい家庭」を象徴するのだろう。

 今では一年中食べられるリンゴであるが、やはり秋になると、
 あの赤い色と、甘酸っぱい匂いと味が恋しくなり、
 実はさっきから、とってもリンゴが食べたい私なのである。
 
  
 

   

 

 

 Ombra Mai Fu (オンブラ・マイ・フ)                     

 ご存じの作曲家ヘンデルのラルゴである。
 今CDから聞こえてくる歌声は、アメリカの有名ソプラノ歌手、
 キャスリーン・バトルだ。
 確か今から14,5年前に日本のウィスキーのCMの中で、
 この「オンブラ・マイ・フ」を歌い、一世を風靡した人である。

 普段、声楽にはほとんど興味のない私でも、
 この歌手には惹かれた。
 たおやかで、まろやかで、豊饒で、甘美に紡ぎだされるその歌声は、
 まさに天国界を彷彿とさせる。
 実際に聴く機会があれば、きっと圧倒されること間違いなしであろう。

 それにしても秋は静かな曲が聴きたくなる。
 お店を閉めてこの一年間、BGMとしてかけていたCDは、
 ほとんど聴くことはなかった。
 あまりにも聴きすぎたので、食傷気味になっていたのも確かだが、
 今は、少しばかり秋の雰囲気に浸りたく、
 いくつか聴きたいCDを取り出し、BGMでかけている。

 さて最後の曲、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」となった。
 神の美技ともいうべきその歌声は、
 この世での雑事や悩みを、ほんの束の間ではあるが、
 忘れさせてくれるのである。

 

  

 

 穏やかな秋の日に思うこと                      

 日が短くなった。
 橙色の陽が翳り、あっという間に暗くなる頃、
 家々の灯りが暖かく感じる。
 そんな蜜柑にも似た色合いを見ると、妙に心がほっとする。

 秋は、一番心穏やかになれる季節かもしれない。
 夏の賑やかさが去り、木々が葉を落とす前の、
 残り火のような、最後のはかない美しさを見るにつけ、
 暗い台所で、弱々しくチロチロと鳴くコオロギの声を聞くにつけ、
 干した布団に残る西日の匂いを吸い込むにつけ、
 柿色に暮れる夕空を眺めるにつけ、
 少しばかりの寂しさと、安堵感が広がる。

 月夜に揺れる白いススキの穂、
 朝晩、散歩道を歩くと頬にあたる冷えた空気、
 金木犀の匂い、風に揺れるコスモスの花、赤々と実るピラカンサ、
 足元に落ちた小さな木の実たち。
  
 ものみな地上の奥深く、眠れる季節を迎える前の、
 盛大な黄金色の実り。
 そして静かな冬の足音が聞こえてくる。

 

 
 秋桜                                   

 9月にもなれば、田舎道や畦にこぼれ種で生えたコスモスが
 咲き始める。
 赤、白、ピンクの花が風に揺れる。
 田舎ではそこかしこに見られる、ごく普通の秋の風景だ。
 道ばたに生えているぐらいだから、
 雑草に近い強さを持つ花なのだろうが、その可憐な色合いと
 柳腰のような出で立ちに、「乙女」の姿を連想させるようで、
 9月のさわやかなイメージを持つ。
 
 今から6年前、お店のOPENが10月初旬だったので、
 その頃コスモスが中庭に咲いてたら、きっと素敵だろうと思い、
 暑い7月に種を蒔いた。ちゃんと芽が出たので、毎日水をやりに
 店まで出かけた。
 しかし、気がつくと出ていたはずの芽が無くなっている。
 猫にでも抜かれたのか、と思っていたら、
 どうやら夜になると虫が出て来て、せっかく生えた芽や葉を
 全部食べてしまっていたらしい。
 虫の名前は、「夜盗虫」(よとうむし)。

 その虫のおかけで、せっかく生えてきたコスモスは全滅し、
 仕方がないので、お店のOPENの時は、
 コスモスの鉢植えを買ってきて、看板の前へ飾った。
 そんなことも、今では懐かしい思い出である。

 ああ、風に揺れ素朴に咲くコスモスを見てみたい。
 少しゆったりとした気持ちで。

 
 

 

 

秋の気配                                

 立秋を過ぎると、朝晩の風が違ってくる。
 不思議なもので、日中はどんなに暑くても、
 空の高さが、雲の形が、目に見えて変わってゆく。
 
 栗の木も、緑色のイガをたわわに実らせているし、
 八百屋さんには、梨や葡萄が並び始め、
 虫たちの鳴き声も、賑やかさを増してきた。
 
 雨でも降ると少しばかり肌寒くなり、長袖が恋しくなる。
 まだまだ暑い日は続くだろうに、心はすでに秋へと一直線だ。
 
 「小さい秋見つけた」の歌を、少しだけ口ずさんでみた。
 高くそびえる木々の梢から、秋の精霊たちが出番を待ちながら、
 こちらを覗いているような、そんな気が少しした。
 
 

  
なつかしい味                              

 今日のような暑い日は、ホームランバーアイスが食べたくなる。
 私の子供時代は、確か1本10円で買えた。
 棒の部分に「アタリ」があれば、もう一本貰えるあのアイスだ。
 昔から氷菓よりも、「アイスクリーム」味が好きだったのと、
 うまくいけば1本分の値段で、2本は食べられるホームランバーは、
 そんな私にとって、もってこいのオヤツであった。
 
 溶けかけの甘〜いアイスは、下手をすると棒からドサッと落ちて
 しまう。しかし、その溶けかけが好きで好きでたまらなかったので、
 棒から落ちないよう慎重に、そして素早くデロリンとなったアイスを
 口に運ぶのは、結構大変であった。
 もちろん今でも、溶けかけのアイスが一番好きで、
 わざと溶けるまで待って、デロデロになったのを食べる時、
 この上ない幸せを感じる。ただしさすがに棒のアイスではやらない。
 あくまでも、カップのアイスを食べる時のみだ。

 さてさて10円玉を握りしめて、駄菓子屋さんへ走った遠いあの日。
 よく買ったのが、「オレンジガム」
 丸い玉になったオレンジ味のガムが数個、小さな箱に入っている
 あれだ。
 グッピーラムネなんてのも、よく買った。
 ただし、なぜかあまり好きではなかったのだが・・・。

 そうそう、母がよく買ってきたオヤツ。
 それは「フローレット」や「ひめ鯛」という、大きなビニール袋に入って
 売っている、お買い得なお菓子。
 ピンクや白の砂糖がついたビスケットも、よく菓子器に入って3時に
 出てきたっけ。
 個人的には、ジャムの挟まった「前田のクラッカー」が好きだった。
 
 それからラスクもよく食べさせられた。
 ラスクで思い出したが、一昨年お歳暮で、「日本一おいしいラスク」
 というのをいただいた。
 ラスク自体はあまり好きでないのだが、そのラスクは、
 「日本一」を豪語するくらいのラスクである。
 食べてみたら、いやあ、これが実においしい。

 確か、どこか地方の小さなパン屋さんが、残ったフランスパンを
 おいしく食べて貰えたらと、工夫に工夫を重ねて作った力作で、
 いつの間にかそれが評判となり、今では通販で買えるようになった
 そうな。 ああ、どこのメーカーだっけ?
 ラスクといえども、これだけおいしければ一級品のお菓子である。

 ワタナベの粉末ジュース、口の中が紫色になる麩菓子、
 昭和の初めからあるサイコロキャラメル、ちょっと大人になった気分の
 ココアシガレット、不二家のパラソル&ペンシルチョコ、
 チューブ入りのチョコなんていうのもあったっけ。

 なつかしい味は、なつかしいエピソードと共に思い出す。

 

  

 

 

 

 

 

 

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