大御所への道はやめて欲しい

皆さんはブラウザを立ち上げたときに、どのサイトが最初に表示されるように設定していますか?

私はinfoseek (すみません、suede official じゃなくて。)なんですけど、 右の列にヘッドラインが表示されるのです。多分他の検索サイトも似た構成になっていると思います。

それでそのヘッドラインには「スティング、NEW ALBUM 待望のリリース」とありました。何の説明もなしに名前だけ出てしまうってすごいことです。 わからない人に対しては「なんだかわかんないけど、有名な人なんだろうな、どんな人なんだろう?」と、 リンクをクリックさせてしまう威圧感を醸しています。

私もそれほど詳しくないのでクリックして彼の経歴を確認しました。

彼はイギリス人で、もともとはバンドをやっていました。今は大御所ですけど、出てきたころは女の子にも騒がれるようなバンドだったと思います。 それがどうして大御所になってしまったのか?大御所になるにはどのような道のりを歩めばよいのか?少ないデータと私の独断(ほとんどこれ)で検証していきます。

もちろん、人気を集めた時期があるというのは、大御所への最初の一歩です。しかしその後の身の処し方で、大御所と呼ばれるかどうか決まってくるのです。

私がクリックした先で遭遇した文章を分析した結果、大御所になるための三カ条ともいうべき要因が浮かび上がってきました。

1 チャリティ活動への取り組み
2 映画で曲が使われる
3 他の大御所とも仲良くする

あっという間に結論が出てしまいました。

えー、このコラムのタイトルは「大御所への道はやめて欲しい」です。私は suede には大御所になって欲しくないのです。その理由は後に述べるとして、大事な suede が大御所への道へ転げ落ちていないかどうか、彼らの足跡をチェックしてみました。

まず最初にチャリティへの取り組みですが、以外と suede はやっちゃっているんです。1995年にボスニア・ヘルツェゴビナの内戦のためのチャリティ・プロジェクト“HELP”*に、 1996年にはイギリス版いのちの電話、チャイルドラインのためのアルバム“CHILDLINE”*に、1997年にBBCのチャリティ企画 Children in need のためのシングル“Perfect Day”*に、1999年にはコソボ難民のための救済アルバム“NO BOUNDARIES”*に参加しています。ですが、現地へ赴いたり、デモ行進に参加したり、というような直接行動はまだ起こしていません。 sting は熱帯雨林を守るため、アマゾンに行っちゃってます。こんな愚挙に出ないようにしなくては…!

次に映画に曲は…使われています。ですが、世界中で大ヒットするような映画ではなく、B級と呼ばれるような映画ばかりです。1993年「ハネムーンは命がけ」*(「オースティン・パワーズ」のマイク・マイヤース主演)に“My Insatiable One”が、1999年には「スプレンダー」+に“The Chemistry Between Us”が、記憶に新しいところでは2002年の「Far From China」に“simon”がクレジットされました。危うく「ノッティング・ヒルの恋人」に曲を提供するかもしれない事態になりましたが、賢明にもバンドは話を断ってます。ああ、よかった。

最後に「他の大御所とも仲良くする」ですが、自らインタビューでも語っているとおり、あまり他のバンドとつるんだりしないようです。デビュー当時は Morrissey が彼らの曲をライヴでカバーしたり、David Bowie と対談したりと、お友達路線を歩むかに見えましたが、モリ氏については ブレさまが彼を雑誌FACEでコケにしたため不仲になってしまいました。Bowie とは取り立てて何もありません。 suede は彼の偉大さと影響を受けたことを認めてはいるものの、特にすり寄るような態度は見せていません。むしろすり寄っているのは Bowie の方です。彼らが唯一付き合いを認めているのは Pet Shop Boys です。Neil Tennant に誘われて イギリスの偉大なアーティスト Noel Coward のトリビュートアルバム“Twentieth Century Blues The Songs of Noel Coward”*に参加しています。ですが、Pet Shop Boys は名前が示すとおり、ゲイ・カルチャーの匂いがプンプンするバンドです。suede も同じくゲイに人気があるバンドですが、そのゴージャスさ故に、セックスの匂い故に彼らは大御所、最近ではロックのカリスマ(笑)とでも云うのでしょうか?そのようなものにはなれないのです。
(ゲイといえば、その筋に詳しい人から、とあるゲイ・ムービーの中で suede の曲がガンガンかかっていたという報告を受けました。私は未確認です。)
ところで Strangelove はどうなんだと、一緒にレコーディングまでして、ツアーも一緒、サポートメンバーだった alex まで新メンバーに迎え入れて、つるみまくっているではないの?というご指摘が出そうです。 が、Strangelove は“大御所”ではないのでご安心ください。

さて、私が何故彼らに大御所になって欲しくないかというと、答えは簡単です。安定して欲しくないのです。そりゃ、シングルの日本盤はリリースされないし、未だにDVDは発売されません。でも、彼らが「取りあえず押さえておく」有名バンドに成り下がることに私は耐えられません。それにリスクを抱えていない suede なんて suede ではありません。少し前に「勝ち組」なんて言葉が流行りました。私はその言葉の醜く、浅ましい響きにうんざりしてましたが、 suede ほどその言葉から遠いバンドはいないでしょう。beautiful loser こそ suede です。

本当に彼らの良さがわかる忠実なファンに支えられているバンドでこれからもあって欲しいと思います。

雑誌 Q 1995年1月号からの乳首チラリ写真。こういうエッチくささ全開のバンドは絶対に大御所にはなれません。セックスレスな雰囲気と女より男にウケる方が安心感を与えるのかもしれません。「アイツはいい奴」と同性(男の業界人)に思われないと、栄達は難しいようです。最近の suede は毒気が抜けてきて、少し心配です。楽器が弾けなくて顔だけ(だと思われていた)の neil もいなくなっちゃったし、初心を忘れないでね〜!

2003.9.16
注 文中の*は私が所有しているソフトです。+はサントラです。これからお宝コーナーに入る予定(遅いっ)ですので期待しててください。
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