飴村 行 05 | ||
粘膜戦士 |
粘膜シリーズとしては初の短編集である。これまでに刊行された3作『粘膜人間』『粘膜蜥蜴』『粘膜兄弟』を繋ぐ役割を持つ。うーむ、辛うじて思い出せた人物もいたが、細かいところは忘れてしまった。これら3作品を読んでいなくても特に支障はあるまい。
「鉄血」。ナムールの師団司令部で、金光大佐に呼び出された丸森軍曹。上官の命令には条件反射で従う軍隊でも、一瞬躊躇する命令。やり遂げると、数々の特典が。しかし、これで終わりではなかった。その儀式(?)、見たいような見たくないような…。
「肉弾」。ナムールで重症を負った、俊夫の兄・繁夫が七階級特進を果たした理由とは…。『ジョジョ』Part2に登場したドイツの軍人・シュトロハイムを彷彿とさせる。というかパクり? 「世界一イィィィィィ!!!!!」とかいう台詞が未だに印象深い。って、何の話だ。
「石榴」。このシリーズは爬虫人抜きには語れない。ひたすらに描写がグロい飴村作品には珍しく、心理的な嫌さを追求した1編。好奇心に勝てなかった昭少年。いずれ知る運命にはあったのだが。爬虫人に始まり爬虫人に終わるとだけ書いておきましょう。
「極光」。拷問を極めた憲兵少佐の松本。というわけで拷問シーンがきっついです。松本が出世街道を驀進するきっかけになった拷問。ナムールのある特産品を使った拷問。ところが、今回ばかりは相手が悪すぎた。ヒャヒャヒャヒャヒャ。
「凱旋」。あれ、丸森が再登場。本作中最も短いが、本作を見事に締めくくる1編。ナムール人や爬虫人の悲哀が泣ける。粘膜シリーズは今後どうなるのか。
飴村作品を未読の読者には入門編として打ってつけだろう。興味を持ったら長編も読んでみればいいし、逆に受け付けなければ無理に読むことはない。とっくに飴村作品の毒に侵された読者には、もはや刺激がないかもしれない。
描写のグロさではなく、サスペンス性で勝負している気がしないでもない。