蒼井上鷹 11


11人のトラップミス


2010/05/26

 双葉ノベルスから刊行された3点の短編集『九杯目には早すぎる』『二枚舌は極楽へ行く』『ホームズのいない町』は、蒼井上鷹さんの作品の中でも個人的に気に入っている。W杯南アフリカ大会開幕が迫る中、双葉ノベルスからの第4短編集が届けられた。

 その名も『11人のトラップミス』。短編5本、ショートショート6編という黄金のフォーメーション。各編にはサッカーに因んだタイトルがつけられている。帯曰く、「いざ出陣、精鋭ミステリーイレブン」とは大きく出たな。日本代表岡田監督がベスト4を掲げたように。

 最初にショートショート6編に触れておくと、単独で読んでもあまり意味がないものが多い。一応、全編を通じた企みに関係してくるのだが…。先の3作品のように、単独で切れがあるショートショートは「フリーキック」だけか。その点は残念だ。

 短編5編、まずは「トラップミス」。海外リーグのトップ選手はピタッと止めるが、Jリーグではトラップミスが多い。ラスト数行の無理矢理なオチ、ピタッとは止まらなかったね。

 かつては自殺点と呼んでいた「オウンゴール」。したくてオウンゴールする選手はいない。必死に守ろうとしたのに、裏目に出た。これはそんなお話です。

 野球と違い、サッカーは得点以外の個人記録が残らない競技。会社の縁の下の力持ちと言える総務課を、「アシスト」にたとえるとは。でも、狙ったプレーじゃないよねこれ。

 「ヘディング」って難しいし怖い。果敢にヘディングに挑んだ蒼井さんだが…関係あるのはあのシーンだけだよね? 〇を〇る理由もかなり強引。

 「レッドカード」を突きつけられた理由とは。ビジネスマンの心理学として興味深いが、最後のオチが…。蒼井さんって、どういう思考回路なんだ。

 11編ともパスをこねくり回した末に…トラップミスというより、シュートが微妙に枠を外したような作品集か。精鋭と呼ぶには正直地味だが、日本代表の体たらくに荒んだ心が、ちょっと和んだかもしれない。負けて元々、日本代表も何か掴んで帰って来い!



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