宮部みゆき 26

天狗風

霊験お初捕物控<二>

2001/02/05

 『震える岩』の続編。前作は赤穂浪士の討ち入りという史実を織り込んでいたが、本作は自由そのもの。少々厚いが、これはもう四の五の抜きにして単純に楽しむべし。ザッツエンターテイメントな娯楽大作なんだから。

 例によって根岸肥前守鎮衛の命を受ける、お初と右京之介。今回の事件は、若い娘たちの消失。かどわかしなのか、神隠しなのか?

 今回の敵はたちが悪い。はっきり書くとネタばれになるが、人間の醜い部分を凝縮したような奴である。ここで言う「醜い部分」は、大なり小なり誰の中にも存在するだろう。もちろん僕の中にも。そしてお初の中にも。それだけに、実に厄介な相手だ。

 日本全国の読書家兼愛猫家の皆様、必見。お初とパートナーを組むのは、何と猫の鉄だ。と言ってしまうと、すっかりたくましくなった右京之介の立場がないような気がするが、大変気の毒ながら彼は鉄の陰に隠れてしまっている。本作を読んだ時点ではまだ生きていた、実家の猫を思い出すなあ。

 東野圭吾さんの『浪花少年探偵団』の文庫版解説によれば、宮部さんは漫画『じゃりン子チエ』のファンだそうである。ご存知ではない方もいるかもしれないが、この漫画には小鉄という猫が登場する。本作に登場する鉄のイメージが、小鉄のイメージとぴったりなのである。これは確信犯か?

 映像的なクライマックスシーンは注目。敵の台詞といい、倒され方といい、誰でも知っているあの話を連想させるが、エンターテイメントなんだから気にしない気にしない。〇は正直ということですか。

 単独作品としても楽しめるが、『かまいたち』や『震える岩』を読んで登場人物を知っておくのをお勧めしたい。早いとこ文庫化した方が売れると思うんだが。



宮部みゆき著作リストに戻る