宮部みゆき 54 | ||
ここはボツコニアン |
うーむ、これほどまでに乗れなかった宮部みゆき作品は初めてだった。
宮部さんのゲーム好きは有名な話で、中でもRPGに造詣が深いことは、「大極宮」を読んでいればわかる。『ブレイブ・ストーリー』、『ICO』、『英雄の書』など、ゲーム的要素を持つ作品も発表しているが、中でも『ブレイブ・ストーリー』は普遍的な傑作だ。
ゲームネタ作品と聞くと、比較対象はどうしても『ブレイブ・ストーリー』にならざるを得ないのだが…困ったことに、こりゃ同列に比較できる代物ではない。これって商品なんですか? 流すように最後まで読み通したが、何も残っていない。残るわけがない。
本作の舞台は、ゲームのボツネタで構成されたでき損ないの世界「ボツコニアン」。選ばれた双子の戦士が、この世界を作り変えるため、冒険の旅に出る。読み始めてすぐ思う。設定、敵キャラ、人物と、なるほど何から何まででき損ないだ。
それってつまり、本作自体小説としてでき損ないではないか? 意図的にやっているのだとは思うが、ゲーム好きの内輪ネタばかり読まされてもなあ。僕もかつてはTVゲームに親しんだので、ゲームの楽しさは一応わかっているつもりだし、当たり外れの大きさも承知している。いわば、クソゲーを掴まされたと思えばいいのかねえ…。
ベストセラー作家だから好き放題が許された、というのはうがった見方だろうか。本作には続編が予定されているそうだ。一冊丸々予告編だったとしても、やはり受け入れられないし、『ブレイブ・ストーリー』のような正式リリース版が読みたかったよ。ジャンプの若手漫画家によるイラストは、僕にはアピールポイントにならないし。
どうせ続編が出れば買ってしまうだろうから、見返してくれることを期待するよ。それより、『ドリームバスター』シリーズの続編はまだですか?