乙一 共著1


くつしたをかくせ!


2006/12/28

 乙一氏と、絵を担当した羽住都さんの関わりは深い。角川スニーカー文庫の切ない系三部作『失踪HOLIDAY』『きみにしか聞こえない』『さみしさの周波数』のカバーイラストは羽住都さんが手がけている。正直内容以上に苦手な画風である。

 そんな乙一氏と羽住都さんが絵本を出したという。…って、買ってから3年間も読まずにいたわけだが。クリスマスの過ぎた今ごろになって開いてみた。

 クリスマス・イヴの夜、子どもたちはくつしたをかくそうとしていた。大人たちはおびえながら言う。サンタがくるぞ! 子どもたちは思う。サンタがどんな悪さをするというのか?

 僕が子どもの頃、サンタが存在すると信じていた記憶はない。自分にとってクリスマスというイベントは、ケーキと鶏のもも肉が食べられる日だった。まったくひねくれ坊主である。そんな僕が、当時この絵本を読んでいたらどんな感想を抱いただろう。

 あのね、投げるだけ投げておいてこれはずるいぞ卑怯だぞ。しかし、羽住都さんの温かい絵を前にしては怒るに怒れないのだ。自分も大人になったものだと思う。『銃とチョコレート』を読んだ後だけに、こんなストレートに温かい話を書くなんて乙一氏らしくもない。

 と思っていたら、読後感をぶちこわしにするようなあとがきが…。いや、あとがきのふざけっぷりに関してはいつも通りですけどね。本作に限っては芸風を封印すべきだった。それでも、しょうがないなあと苦笑させるところが乙一氏の乙一氏たる所以だが。

 絵本としては珍しいことに、本作には本文の英訳が併記されている。それに今ごろ気付いている自分もどうかと思うが…。以下のフレーズが印象深い。

 "Santa Claus is coming! Hide the socks!"



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