鈴木光司 02 | ||
リング |
ご存知の通りの鈴木光司さんの大ベストセラーである。おそらく、当ページのリストに載っている全作品中、最も売れた作品だろう。映画『リング/らせん』が公開されたのは、1998年初めのこと。しかし、本作の初版刊行は1991年。映画化以降の売上げの方がはるかに多いであろうことは間違いない。
観た者は一週間で死に至る…という呪いのビデオを観てしまった雑誌記者の浅川は、残された時間で友人の高山竜司と共にビデオの謎を探る。やがて浮かび上がる一人の人物。その名は、山村貞子…。
まず最初に、真田広之さん演じる映画版の高山とは似ても似つかない、原作の高山像に面食らった。容姿はともかく、この緊張感のなさ。何だか、自分の境遇を楽しんでさえいるようだ。ついでに、原作の浅川は男性だが、映画では高山の別れた妻であり、松嶋菜々子さんが演じている。
問題の呪いのビデオの中身や山村貞子の死の真相など、ストーリー自体は原作の方がいい。高山だって先に原作を読んだらあんなものだと思っただろう。本作に限っては映像のインパクトが強すぎた。それほどに演出は見事だった。
虚無感が残る結末は、原作も映画も同じ。本来これで完結だったはずであり、それでこそこの理不尽さが生きるというものだ。今さらながら、続きを、特に完結編『ループ』を書くべきではなかったと思う。ホラーに辻褄合わせは不要。
映画のイメージに捕われながら読んでしまったのは否めないところだが、映画関係者の製作意欲を刺激する、魅力的な素材だったのは確かだろう。結果として、現代ホラーのバイブルのごとく持ち上げられてしまったことは、色々な意味で不幸と言わざるを得ない。以下、『らせん』へ…。