鈴木光司 04


らせん


2001/01/16

 『リング』の続編である。個人的に許せるのはここまでだ。当然、前作からの流れを引きずっているが、前作の結末に触れるわけにもいかないだろう。文庫版の裏表紙にはしっかり書かれているが、一応書かないでおこう。

 今回の主人公は、幼い息子を海で亡くした過去を持つ、監察医の安藤である。例の呪いのビデオが、巡り巡って形を変え、安藤の手に渡る。山村貞子の真の狙いは…。

 正統的ホラーと言っていいであろう前作とは、展開ががらっとかわる。疾走感に溢れた『リング』に対して、最後まで彷徨い続ける『らせん』。この差は、映画化によってさらに際立つ。映画に関して言えば、『リング』の直後に観た『らせん』は何だか間延びしているようだった。

 そもそも想定外の続編である。鈴木さんご自身も述べているように、自縄自縛に陥っている点がなきにしもあらずだが、ここまでまとめ上げた手腕はお見事。ただ、この緻密な展開は小説ならではのもの。限られた時間内での映像化には不向きだっただろう。かくして、映画の評価と原作の評価は、僕の中では逆転した。

 スティーブン・キングの某傑作ホラーを連想させる結末。映画を観た直後の感想は、おいこれで終わりかよ、であった。『リング』、『らせん』の映画化と、完結編『ループ』の執筆と、どちらが先に企画に上ったのかはわからないが、この結末ではどうせなら相乗効果を狙おうという話になるのは自然な流れだろう。商売としては間違ってはいない。

 すべては、この結末のせい。一つ嘘をついたために、新たな嘘を、さらに新たな嘘をつくはめに陥る。そして退くに退けなくなってしまった。そんな状況ではないか。あそこまでブームが加熱したことは、計算外だったに違いないが。



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