鈴木光司 20


アイズ


2005/05/30

 この方ほど代表作の呪縛に苦しんでいる作家はいない。真保裕一どころではなく。

 一大ムーブメントとなった『リング』シリーズの大ヒット。原作本はもちろん、映画化にドラマ化、そして米国でのリメイク版製作。驚いたことに、ハリウッド版『ザ・リング2』が近日公開されようとしており、ムーブメントは今なお継続している。

 ホラーの作家という看板を背負わされるのを嫌ったのか、鈴木光司さんはホラーの依頼は断るという趣旨の発言をしていたと記憶している。実際、『バースデイ』以降ホラーの作品は刊行されなかった。しかし、固定したイメージを払拭する作品は出せていない。

 そんな中で刊行された本作はホラーの短編集である。背に腹は代えられない…と思ったのかはわからないが、とにかくホラーを出した。個人的には、そのことを好意的に受け止めたい。散々貶しているくせに、と言われそうだが…。

 「本当にあった怖い話」を取材して描いたとのことだが、例えば何とも後味の悪い「鍵穴」や因果応報的な「杭打ち」の完成度は、ホラー作家の面目躍如(と言われるのは嫌かもしれないが)だろう。だが、怖い話は実は少数で、心温まる結末だったり、家族がテーマだったり、出来は別として「ホラー」としては怖くない作品がほとんどである。

 深読みかもしれないが、こういう点に鈴木光司さんの「ホラーだけの作家にはなりたくない」という矜持がにじみ出ているようでならない。あとがきを読むと何だか言い訳じみていて、ホラーを書くことのばつの悪さを感じる。結果としてどっちつかずになり、「超・恐怖小説」とは言えない作品集になってしまった。

 鈴木光司さんは『リング』の作家だ。それでいいんじゃないだろうか。一読者の勝手な言い分だが、一度こだわりを捨てて、怖さのみを追求してみてはどうだろう。



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