鈴木光司 10 | ||
バースデイ |
映画『リング0』の封切りに合わせ、初版刊行から一年も経たずに文庫化された。ハードカバーを買った読者の立場はどうなるんだ、おい…。鈴木光司さんの文章が好きなので買ったのだが。以下、文句たらたらにつき、ご容赦を。
『リング』、『らせん』における高野舞、山村貞子。『ループ』における杉浦礼子。本作は、三人の女性をメインに据えた『リング』シリーズのサイドストーリー集である。
「空に浮かぶ棺」は、『らせん』の補足くらいに思っておいた方がいいだろう。読みどころは、高野舞の女性としての屈辱的な過去…だけか。とばっちりを食ってしまった高野舞には大いに同情するのだが。
映画『リング0』の原作である「レモンハート」は、山村貞子が登場することを除けばシリーズ本編との関わりはほとんどない。時代もかなりさかのぼる。その点では唯一書き下ろしらしいと言えなくもないが、山村貞子が登場しなければならない必然性はないような…。『リング』シリーズとは完全に切り離した方が良かったんじゃないか?
最後の「ハッピー・バースデイ」は、要するに『ループ』の後日談である。うーむ…これは完全に蛇足。書くなら最初から『ループ』に含めるべきじゃないか? 馨君、君という人は何と相変わらずな…。
いいかげん、『リング』シリーズはこれで打ち止めだろう。ある書評家はこう言った。貞子出生の秘密まで書いてしまって今後ネタがあるのか心配だ、と。正直に言って僕も心配だ…。早く新刊を出さんかい、新刊を! 当然エッセイ集以外の。
つい最近、書店でシリーズ4作の文庫版ボックスセットを見かけて、苦笑してしまった。