山口雅也 17


チャット隠れ鬼


2005/05/27

 乃南アサ著『ライン』、宮部みゆき著『R.P.G.』、そして本作、山口雅也著『チャット隠れ鬼』…。残念ながら、三度目の正直はならなかった。ネットネタはミステリーの題材として適さないことが、改めて証明されてしまった。

 一言で感想を述べると、ふーんそういうこともあるのかもねえ、である。それ以上でもそれ以下でもない。現実にこんなことが起きたら、世間を賑わすに違いないが。

 子供たちが犯罪に巻き込まれるのを未然に防ぐため、ネット上を監視するサイバーエンジェルの候補に選ばれた国語教師、祭戸浩美。彼は、チャットルームで知り合ったハンドルネーム"Jezebel-P"との会話に夢中になるが…。

 まず、チャットというネタが古い。少なくとも、僕がチャットをしていた4、5年前ほど活発ではないように思える。さらに、『ライン』とネタが被っていることも追い討ちとなった。両作の主人公がチャットに見出した楽しさが、見事に同じだし。僕にはわからんよ。

 全編が2ちゃんねるの書き込みで構成されている『電車男』が大ベストセラーとなったことは記憶に新しい。2ちゃんねるは掲示板だが、流れの速さは実質的にチャットと言っていい。本作が二番煎じだとは思わないが、ところどころにチャットを挿入した作りは、徹底した作りの『電車男』と比較すると中途半端な印象を受けてしまう。

 しかし、そんなことは瑣末な問題である。どうしてネットネタではうまくいかないのか。そもそもミステリーは虚構の世界。そしてネットコミュニティも、何でも本当になるし何でも嘘になる虚構の世界。虚構の中の虚構に、リアリティや説得性を感じることができるだろうか。

 そして何より、本作が山口雅也の作品であるということ。並の作家の作品ならば、こんなに不満を感じることもない。最初から期待もしない。というより買わないだろう。

 ネットなしでは生活できない僕がこんなことを言うのは矛盾しているか。でも本音だし。



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