実証!モンロー効果!

あれから5年以上時間が経つし、もう告白してもいいでしょう。恥ずかしいけど。

その日の夕方、ぼくは残業に備えてコンビニで食べ物を買ってきました。

メインは覚えてないけど、一緒にゆで卵を買いました。「温泉卵」っていう”商品名”の。

当時は無知だったので、温泉卵ってゆで卵の商品名のひとつかと思っていたんです。ぼくは固ゆで卵が好きです。

会社の食堂で、買ってきたものを食べました。卵は2こ1セットでしたが、そのうちのひとつを割ってみたら、温泉卵ですから中味はかたまりかけのどろどろ卵。

「う、不良品だ!」

一緒に食堂にいた同僚が、偉いことにぼくの無知をバカにすることなく教えてくれました。

「おんせんたまごって、ふつうそんなだよ」

ぼくはちょっと恥ずかしく思いながら、そのどろどろ卵をすすり込んだのでしたが、これではちょっと不満。期待していた固ゆで卵がどうしても味わいたい!

食堂の給湯室には電子レンジがありました。そこに現れたトホホ妖精・・・

「ゆでちゃえば?電子レンジで。」

今にして思えばトホホどころではないことをいいました。でも、ぼくもすこしは知っていました。危険だということを。ウワサで。

「爆発するって聞いたよ。」

「生タマゴじゃないからへーきじゃない?水も一緒だし。」

なるほど、生じゃないし、まわりに水があれば原子炉みたく電磁波を遮断して平気なのかも。・・・ぼくの頭はその時疲れていたのかもしれません。自分に都合のいい理論を組み立ててしまいました、ルイセンコのように。

社員用お椀に水を張り、中に「温泉卵」を沈めました。レンジにいれて30秒。ち〜ん。

「ほら、へーきだった!」

ホントだ!タマゴはお湯の中にちゃんとした形のままで沈んでいます!さあ食べよう!でもお湯捨てないと・・・

熱くなったお椀をとりだし、お湯を捨てて水を入れ、シンクのわきのステンレスの平らなところへ置いたとたん!

ぼくの耳にはステンレスが押されてベコッという音を立てたのと、バムッという爆発音が和音で聞こえ、目は、お椀がぼくの顔めがけて飛び上がったのが見えたのを最後に痛くてあけられなくなってしまいました。大量のタマゴのカケラが入ったもので。顔がいたい。

「めがぁ〜〜!」という余裕もなく、(ビックリして声がでませんでした。)よろめきながら顔を押さえ、おそるおそる目を開けてみました。床とつま先が見えました。よかった。失明したかと思った。

顔のタマゴを水道で洗い流し、ハンカチで顔を拭きながら、そういえばアレだけの爆発だから、給湯室をきれいにしなきゃと思い当たり、まわりを見回すと、意外に汚れてません。でも天井は・・・

「吹きつけたみたいだね。」

タマゴまみれのトホホ妖精が天井をみていいました。今回は彼女もちょっとビックリしたみたい。

天井はぼくの頭で遮られた部分以外はタマゴまみれ。サンドイッチの中みたいになってます。

そうです。お椀の底の放物面が爆発したタマゴとそのエネルギーを反射して、全部上へ吹き上げたのです。反動でステンレスのシンクがしなったので「ベゴッ」といって復元するときにお椀を飛び上がらせたわけでした。文字通りバズーカ砲の弾の原理、いわゆる「モンロー効果」です。ああ、頭に穴が開かなくてよかった。

お椀の中はきれいに空っぽ。水も残ってませんでした。

ぼくは悪態をつきながらイスに乗って天井をぞうきん掛けし、髪についたタマゴをできるだけ落とし、タマゴ臭い顔のまま残業して、タマゴ臭い顔のまま電車に乗って家に帰りました。

同僚にこのことを話したら、「ラピュタの悪い人みたいに「めがぁ〜〜〜!」っていったの?見たかった!」と大笑いしてくれました。ホントにつぶれたかもしれないんでさすがに冗談に聞こえなかったけれど、とりあえず笑い事で済んでよかった・・・

タマゴと電子レンジは、たとえゆでてあっても危険ですよ。

ちなみに、中学生のときにたき火にフタをしたままのサントリーホワイトの空の大ボトルが入れてあったのに水をかけたら、やっぱり爆発して破片で目のフチを火傷したけど、あの時も失明したかと思った。たき火にも注意です。

※2004/1020に掲示板にくろのすさんから「これは“モンロー効果”でなく“パラボラ効果”である。」というご指摘を図解つきでいただきました。いわれてみればなるほど、おわんの表面が爆発したわけではなくなくおわんの放物面に反射したのですからパラボラアンテナの理屈に近いですね。・・・また一つ知ったかしてしまった。

・・・タマゴ燃料レーザーじゃだめ?

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魔剣「ドレメル」
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