久しぶりに、魔の地アキバへゆきました。相も変わらず立ちこめるタバコの瘴気で具合が悪くなりそうです。タバコのニオイは、ほかのすべてのニオイを殺してしまう、ニオイのファシストなのでした。空気の湿り気の匂い、土の匂い、イヌコロの匂い、女のこの香り、食べ物の味、みんなみんな!一色に染まってしまう!車の排気ガスの臭いまで殺してしまう!なんて横暴なニオイ!ニオイのスティーブ・ジョブズ!ニオイのビッグブラザーです! 神にニオイの自由を祈りながら歩いていると、トホホ妖精があらわれました。 「そんなにいやなら、こんな場所、こなきゃいいのに。今日はそんなに絶対必要なものがあったわけじゃあないでしょ?」 「・・・うむう・・・そういえば、なにしに来たんだったっけ・・・」 タバコに気をとられて、なんでここに来たかを忘れてしまいました。 「飛行機にモーター入れたかったんじゃなかったの?」 「ああ、ああ、そうそう。千○電商!」 ぼけきっています。ちょっと将来が不安です。まじで。「アルジャーノンに花束を」の主人公の気持ちが少しわかります。 今回アキバに来たのは、作ってる飛行機のプラモに仕込むモーターを買うためだったのでした。安くはありませんが、千○電商にはやたらに小さな直径のモータが揃っていて、しかも、ジャンクの携帯電話のバイブレータのやつみたいにやたらに頑丈な振り子重りとかついてないので、 歩留まりとか考えるとこっちの方が得なのでした。(重りつきのを四本買って三本壊したことがある)直径4ミリのモーターなどは、あんまり細いので1/72の空冷エンジンのキットのクランクケースに仕込めてしまいます。また、もう少し太くて、1:40の減速機がついたものなども、すごく魅力的です。 「そうそう、これがほしかったんよ。」 欲しいモーターをとって、レジへ。 「電動工具は?」 奥のレジの手前にあるくぼみは、モーターツールのコーナーです。たまに掘り出し物があります。 「げ!ドレメルが一万円!」 いにしえの、海を隔てた地底の国、アメリカの黒小人、「アルバート・ドレメル」の鍛えた伝説の魔剣「マルチプロ」! 鉄をも削るといわれたあの剣が、たったの一万円です! 「今もってる電池式のドレメルは、充電めんどうだもんね。」 今もっている充電式のリューター「ミニマイト」は、やはりドレメルの手によるものですが、プラモデルを作っている分には文句のない性能なのですが、一度電池が切れると三時間は充電に当てなければいけません。ノってる時に電池が切れると、もう、なえなえ。それで作業を中断したきりのキットが、いくつあることやら・・・ 「よし!買った!」 ついに夢のツールを手に入れました。らんらん・・・ 家について、箱をあけます。 「あれれ、変速スイッチがないぞ・・・」 電源オン/オフスイッチには段階がなくて、一段のみ。おかしいな・・・ カタログを見てみました。 「・・・機種が違う・・・」 変速できるのはモデル「395」、ぼくが買ったのはモデル「275」。知らなかった・・・そんな不便なモデルがあったなんて・・・ 電源を入れてみました。悪魔のような甲高い声で唸ります。夜中に作業したら、間違いなく近所から苦情がでるでしょう。だいいち、プラモを三万回転で削ろうとしても、削れる前に、溶けちゃいます。 「また使えないガラクタが増えたね。」 「うるさい!」 冷や汗をかきながら、品物についてきたラインナップカタログをながめます。 「ううむ、そそるのう・・・」 現実逃避。生き物でいうところの、照れ隠しのグルーミングというやつです。もう、買ったもののことはすっかり忘れ、カタログの高価な旋盤やらボール盤に見とれ、案内文の「過酷で楽しい時間」て、どう見ても原文が英語で、言い回しの訳を間違えてるよな・・・なんて思ううち、ひとつの商品が目に留まりました。 「フットスピードコントローラー。足踏みの強さで1スピード型のモーターの回転を0〜30000までコントロールできます」これだ! 「でも、定価一万八千円だって。」 ぐええええ!本体より高い!でも、これで光が見えました。とにかくも、買ってきた機種でもスピードのコントロールはできるわけなのです。変速機構を外部につけるなんて、思いもしなかった! ぼくはリューターを分解してみました。どんなモーターなのかしら。ブラシがあるから直流だよね・・・でも、電源を直流になおすような場所がないなあ。・・・でっかいブリッジダイオードでも積んでるのかな? 直流モーターにあるはずの磁石のかわりに、ローターのまわりをさらにコイルが取り囲んでいます。電磁石のようです。 「これは、直流モーターの仕組みに、周りの磁石をコイルに置き換えて、交流で位相が替わってもそのまま回るようにタイミングを工夫してあるんだね。」 そういえば、中学校技術で習った交流モーターは、いま知ってる三相交流式じゃなかったような・・・ 「電圧変えてるだけだよね。きっとあのフットスイッチ・・・」 「いや・・・交流は・・よくわかんないや。・・・」 次の日曜、ぼくはふたたびアキバの地で、モータを制御するフットスイッチを探し歩きました。そんなもん、どこにもありません。かわりに400ワットのATX電源(サービスコンセントつき)を手に入れました。 「くそっ、しかたない、G4の電源強化でもするか!」 家のG4のフタをあけ、電源から基板へのラインの、ATX規格では「-5ボルト」になっている線を確認します。案の定、ラインの色は、ほかのグラウンド線と同じ「黒」。「-5ボルト」のかわりにグラウンドがきています。 買ってきた400ワット電源を分解して、マイナス5ボルトの線を電源基板側でちょんぎり、その線をグラウンドにハンダ付けします。G4の筐体に組み込んで、起動! あっけなく400ワットG4のできあがり。あとで一万回転のHDD買ってこよ。 なんて思いながら、起動したパソコン画面を見ているうちに、ぼくの頭に、唐突に「ド○ト」の文字が! 「そうだ!あそこなら!」 ぼくは車をもっていないので、辺境の地にしかない日曜大工専門店「ドイ○」にはあまりいくことがないのですが、あそこは品ぞろえも値段も東急ハン○より好きです。 というわけで、さっそく電車でいける戸田までゴー! 「あった!モータツール速度調整器!」 きいたことのないメーカーですが、パッケージに「すべての単相整流子式ブラシモータに使えます。」とか書いてあります。しかもトルクを下げることなく!値段もたったの5800円!最悪の場合にはハンダ小手温度コントローラを使おうかと思っていたので、専用の機材があったということはすごく嬉しい!買いました。 家に帰ってさっそくテスト。極低回転域では少し脈動するものの、試しにモデルガンの亜鉛製のフィーディングランプの削りに使ったところ、まったく問題なし。低速で、低音、しかもちからづよくごりごり削ってくれました。大正解! 「なんで低速でも力が落ちないのかな?・・・」 「きっと、電圧の上げ下げでなくて、100ボルトのまま、オンオフの細かい間隔でコントロールするんだね。」 しったかぶりをしました。 でも、ホントはどうなってるのか知りません。研究しよっと。 |
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