冒険に失敗はつきもの。間抜けな冒険には間抜けな失敗が起きがちです。ぼくもいくつかトホホな失敗をしてるので、よかったら笑ってください。もちろんあきれても結構。ちょっとだけおもしろくするために、時間の前後が正確じゃないけど、買ったものとか経緯とかお店はリアルです。 | |||||||||||
第1話 ぼくが、ライトなマック使いから、望まずして自作ドスブイの両刀使いになったわけのアホな真相。 |
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95年頃まで、ぼくは急進的マック党でした。(アップル党ではない)エムエスドスなんてワケのわからんものを金払って使うなんて考えただけでもキれたくらいです。お店の人、怖かったし。 ところが今、ぼくの部屋にはマックと並んでドスブイ機もあります。HDD5台もつながっています。別に、ウインドウズがほしかったわけではありません。とっても間抜けな理由から、マシンを自作するハメになったのです。 それは、1997年の夏のころの、とある土曜日。ぼくはなにかおもしろい破滅的なマックに使えるパーツはないかと、秋葉原をうろうろしていたのでした。 「ティーゾーンミナミ」のとなりのティーゾーンは、当時マック専門館でしたが、そのふもとには、なにか怪しげな露店が展開していたものです。 アキバの地に降り立つと、必ず耳元に寄ってくるトホホ妖精は、その日もご多分に漏れずぼくの耳元に占位していました。 「ア、そこの露店、HDD売ってる!」 彼女の声につられてのぞき込むと、たしかに導電バッグに入った3.5インチドライブたちが、ぞんざいに切ってある段ボールの札を付けられて木箱の上に並べられています。 「ワイドスカジーで1ギガだって、めずらしいね。しかも16000円だって!」 当時はようやく2ギガのドライブが主流になったころで、ワイドスカジーなどはまだまだマイナーな部類。ワイドの2ギガが35000円くらい、1ギガのものはナロウでさえもうあまり見られなくなっていました。1ギガ主流の時代には、ワイドドライブなんてさらに高嶺の花だったのです。今の超20ギガ・10000回転のドライブよりも高かったのでは?ぼくはその頃、1ギガのHDDをコレクションしていたのです。この値段でくらっときてしまいました。 「これ、動きますよね?」 「ええ、ええ、うごきますよ。新品ですよ。」 露店のオッサンは、どう考えてもコンピュータとは縁のない、どちらかというと競馬場にいそうな感じの人でしたが、ぼくの質問にすこしろれつのまわらないイントネーションで二度も三度もうなずき返しました。すごくうさんくさかったけど、ワイドの1ギガなんて生まれて初めて見たもので、たずねてみたのはただの儀式。新品というのは明らかにウソでしょうが、もうすっかり買うつもりになっていたのです。そのころ、ぼくは、デュアルバスのスカジーカードでソフトウエアレイドをやってみたかったし、それをスワップファイル専用にしたかったので2ギガ以上は必要ないと思っていたので、これがうまくいったらもう一台買いに来ようなんて思っていました。 「レイド作戦第1弾だね!」 わくわくして家に帰りました。まずはフォ−マットしなきゃ。ケーブルとターミネータをつなぎ、5ボルト/12ボルト電源につなぎ、マックにつなぎ、電源オン。 マックが泣きました。 「あれれ...」 起動しません。別のマックに替えても起動しません。ワイド→ナロウ変換コネクタをかまして、光るターミネータをつなげて試してみました。 「SEL」のランプがついたまま固まってしまいます。 「不良かな?」 ちょっといやな気分。でも、お店に電話するようなことはしません。(なんと、露店なのに領収書を切ってくれたのですが...)なんにもわかっていないことが相手にわかってしまうことが恐ろしい。 「じゃあ、明日、もう1台同じの買ってきて、試したら?」 そうです。ぼくのトホホ部分は、たずねるくらいなら金を使えという判断基準なのです。 翌日、幸い同じ場所にその露店はでていました。 ぼくは昨日と同じ「ST31230WD」というHDDを昨日と同じ値段で買いました。 「きっと、今度は動くよ。」 裏付けのない希望的観測も、トホホ者の特徴なのでしょう。家に帰って前日と同じ作業をしました。どきどきします。 電源オン。 マックが泣きました。 「あれれ...」 起動しません。別のマックに替えても起動しません。ワイド→ナロウ変換コネクタをかまして、光るターミネータをつなげて試してみました。 「SEL」のランプがついたまま固まってしまいます。 昨日とおんなじ現象です。これが手掛り。ぼくは必死に考えました。少し希望が見えてきました。 「これは、初期不良とかじゃないね。なにか、規格が違うとかそういう話みたいだ。」 ハードディスクツールキットの「スカジーの解説」を引っ張り出して必死に読みました。 ターミネーションの方式に、アンバランス式とバランス式という電気的に互換性のない二つの規格があるという記述が目に留まりました。アンバランス式はおなじみのシングルエンド。バランス式、別名ディファレンシャル式!買ってきたHDDの番号の末尾は「WD」! 「これは、もしかして、ディファレンシャル式のD?」 「誤接続時の安全のために、デファレンシャル識別信号があって、それがくいちがうと止まっちゃうんだって。」 次の日、会社のインターネット接続ができる人にお願いして、シーゲートのページから該当ドライブのスペック表をひろってもらいました。あんのじょう、WDは、「ワイド・ディファレンシャル」の略でした。 「ううむ、じゃあ、ディファレンシャルのスカジーボードを見つければいいのか。」 ところがどっこい、そんなもの売ってません。つなぐ先のない二台のドライブは、ぼくの机の中に半年以上眠ることになったのです。 しかし、それからまめに探したかいがあって、ある日、ティーゾーンの輸入品コーナーで、アダプテックの2944W(バルク)を発見することができたのです。段ボールに直接印刷された「DIFFELENTIAL」の文字!やった!みつけた! 「でも、これ、ドスブイ機専用だよ。」 「ドスブイを組む!」 「ええ!?あんなに嫌ってたのに?」 「ドスブイが嫌いなんじゃない!知りもせんでマックをバカにしたがるウインドウズユーザーがむかついただけだ!」 少し苦しい言い訳でしたが、ウインドウズユーザーの人たちはなにかとすぐに「マックは飛ぶから」とかのたまうのと(そのくせ、ウインドウズは一回壊れると致命的なことが多いということは忘れているので余計腹が立つ。文句があるならドラッグコピーでシステムのバックアップをしてみせろっての。)日本人特有の、言うことは強がって反体制ぶるくせに、行動はいってることと裏腹に強いものにつきたがるメジャー思考がキライだったという一方、自分でもマックユーザーはハードに素人だという引け目のようなものを感じていたので、この機会にウインも使ってみて、「やっぱウインはダメだね、つかいづれえや!」などと裏付けのあるうんちくをのたまってみたかったのと、ちょっとエロゲーがやってみたくもあったのです。両方持ってれば、下品なウイン使いもスノッブなマック使いも公平に批判することができます。 と、いうわけで、高かったけど、即買い。アダプテックのカードで、型番の末尾が「4」のものは、ハイボルテージディファレンシャルだと覚えておきましょうね。 トホホ妖精はわくわくしています。 「パソコン組むのに、最初にスカジーボードから買う人って、へんだよね!」 「男らしいといいなさい!」 「次はなに買うの?」 「K6」 こうして、ぼくはひと月ほどかけて、スカジーボード→シーピーユー→マザーボード→フロッピードライブ→メモリー→グラフィックボード→ケースと買い進めました。ここでひとまず形にします。(キーボードとマウスは、その1年前にドスブイをやろうと思ったときに買って、そこでストップしていたのです。) 電源オン! ピポ。 名高いメモリーチェック画面のあとに、スカジーボードが立ち上がる画面がでます。 二台のHDDは見事に認識されています。 で、「オーエスが見つからない」旨表示されてストップ。今日はここまで。だって、オーエス持ってないんだもん。それからバイオスを呼び出したりスカジーボードのバイオスでHDDを物理フォーマットしたりして遊びました。 「これはこれでたのしいや。」 数日後、ウインドウズ95/OSR2.1(製品版の、あの、悪夢のような数十枚組のFDでインストールしたうえに、更にアップデートディスクをかけるなんて無様なまねをするのは絶対にいやだったので。)とCDドライブ(スカジーのCDドライブをつけようとして普通の安いスカジーカードも買ていったのですが、なぜかATAPIのを買った...)を買って、ようやくオーエスをインストールすることに。 「CDのデバイスドライバを起動フロッピディスクに組み込むんだって。」 ドスなんかさっぱりです。機械の言葉でファイルの移動を機械にさせるなんて、考えるだにおそろしい! 「そうだ!マックでCDドライバの組み込みプログラムのファイルをウインドウズ起動ディスクにコピーしちゃえばいいのか!」 マックを立ち上げ、ノートンユーティリティーの「フロッピアー」で両フロッピーのバックアップをとったあと、起動フロッピにCDドライバのファイルをドラッグコピーしました。 そのディスクをドスブイに入れて起動。 ピポ。 おなじみの一連のハードウエア点検画面のあとで、ドス画面が立ち上がりました。拍手。CDドライバ組み込みプログラムの立ち上げコマンドをCDの説明書通りに実行させます。うまくいったみたいです。FDISKもうまくいきました。ウインドウズのCDを認識しました。でもインストールがうまく行かない。途中で止まります。「インストールディスクが見つかりませんC:win95」(うろ覚え)とか寝ぼけてます。そこに突っ込んでまわってるCDはなんなんだヨウ!dドライブじゃないのか!?このイカレ機械!とか悪態をついても、もちろんノーリアクション。 「起動ディスク、正規のMS-DOSじゃなきゃダメなんじゃない?」 トホホ妖精がいらんことをアドバイスしました。で、PC-DOSを買ってくるハメに。ついでにドスブイ組み立ての教科書を買ったのは正解でした。 「なんだ、一回CDの中身をHDDに丸写ししてから実行するんだって。」 「ううん、先達はあらまおしきかな...」 一発でインストールできました。けっきょく、PC-DOSは開封しませんでした...アーもったいない。 インターネットは右ボタンのあるウインドウズのほうが便利ですね。でも、お絵書きはマックの方がいいな。ウインドウズのカーソルはマウスの動きがデジタルすぎ。いきなりバッと動くから、動きだしが微分式のマックよりも落ち着かない感じ。 ま、それはそれでいいとして、最初に買ったディファレンシャルのハードディスクは、ひと月でメカ的にぶっ壊れました...
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第2話好き好き、湘南○商さて、念願のドスブイ機が動いたものの、アッというまに1台のHDDがイってしまわれたのでワイドスカジーなのにドライブが1台というトホホ環境になってしまった事態に、ぼくはパニックになりました。 このまま最後の1台がイったら、ただボードがついてるだけという屈辱的な状態になっちゃう!そんな事態は絶対にイヤ!ぼくはアキバ中探しまくりました。最初にあのドライブを買った露店は、場所こそ変わったものの、いまだ健在でしたが、あれから半年以上たった当時、もうディファレンシャルのドライブはおいていませんでした。 でもそこらじゅうさがしたら、「ST31200WD」と「ST15150WD」、ヒューレットのドライブが手に入りましたが、○漁エレクトロで足許見られながらもフルハイトドライブ欲しさのあまり返品交換不可オーケイで買った「ST15150WD」は、ウインドウズでフォーマットの最中に「カンカンカンキンカンコン!!!!!」という雷のような大音響を発してアクチュエータがいっちゃいました。34000円が4時間でパア。しばし呆然。くそったれ。分解しちゃった。 この衝撃に傷ついた心を癒すべく、ぼくは再びアキバへ。湘南○商へとでかけたのは、べつにHDDが目的ではなく、いったんHDDから離れて、別の冒険のネタがないかなっとおもったからなんです。でも、こういうときはかえってトホホ妖精が逃がしてくれません。 「あ、ST31230WCだってよ!8000円だって!」 「ううむ、でもシングルエンドでシングルコネクションアダプタ...」 さがしているのはディファレンシャルのドライブです。80ピン電源込みワイドスカジー(シングルエンド)じゃあありません。 「でも、型番いっしょだから、基板だけ取っ換えればディファレンシャルにできるかもよ!」 なるほど!ぼくは妙になっとくしてしまいました。 でも、どうせなら同じドライブをマックでも試してみたい。 「このドライブ、二つください!」 「これ、SCAですよ。」 お店の人は変換コネクタを勧めてくれましたが、ぼくはそんなのもうとっくに苦労してくさるほどストックしてます。当時はなかなか売ってなくて、しかも高かったなあ。あの変換器。 「ああ、だいじょうぶですよ。」 数時間後、二台のドライブはマックでフォーマットされ、むりやりリムーバルケースに押し込まれ、ベンチマークをとられていました。 「速いや。下手なナロウの2ギガより速いや。」 「すごいね、早くディファレンシャルにしてみようよ!」 ベンチ成績の悪かったほうのドライブをリムーバブルケースから外し、星形ドライバでドライブから基板を取り外します。先にクラッシュしたWDドライブの基板は分解してとってありました。それを買ってきたドライブにつけます。 「コネクタ位置もピッタリだね。」 こうして形だけは「ST31230WD」になりました。ドスブイ機で認識できるかな? ピポ。 スカジーボードの起動画面になりました。IDをひとつづつ認識して... 「とりあえず認識はしたけど、不良ブロックとかつぶしとこうか。」 スカジーボードのバイオス画面を呼び出して、物理フォーマットしました。問題なくフォーマットできたようです。 「エフディスクはどうかな...」 再起動してからエムエスドスプロンプトを立ち上げます。ウインドウズは自分ではHDDを初期化できないのです!すげえめんどい!グーイーじゃないので、同じかたちのタンスが壁に沿ってびっしりある真っ暗な円筒形の部屋の中で、人を使って、しかもその人に手探りで引きだしを探って選びださせるような感じ。全体が見えないもどかしさは、やっぱりイライラさせられます。 「でも、ちゃんと初期化できたね。」 すごい!HDDは型番さえ同じなら基板に互換性があったのです。 「次はウインフォーマットだ!」 勢いに乗り、「マイコンピュータ」を開きます。ドライブが「G」まであるのはちょっといい気分。でも、名前がCドライブの「チャーリー」から順に、「デルタ」、「エコー」、「フォックストロット」、「ゴルフ」とつけたのに、「E」と「F」が入れ替わってて、ちょっとトホホ... 新しい、というか、再生したドライブ「エコーII」のアイコンを右ボタンクリックして、「プロパティ」(マックでいう「情報」を、もっといじれるようにしてあるオプションてとこですか...)をよびだします。容量は「FAT12/1080k」。1080K!MでなくK!? 「へんなの!フロッピより小さくなってるね。」 ぼくは青くなりながらうなづきました。やっぱり世の中うまく行かない... 「FAT12って、へんな形式だね。」 たしかに。大容量フォーマット形式はたしか、ファット32のハズ。 ようし、エフディスクをやり直してみよう! ふたたびまっくらけのドスのダンジョン、なによりいらいらするのが、いとも簡単にフォーマットするディスクを間違えてしまいそうなインターフェースです。スカジーIDとか、アイディーイーのバス別、マスタ/スレーブとかも見えません。やっぱり陳腐化したクズシステムです。 ドライブを指定、FAT32形式で初期化します。 「今度はどうかな?」 これでだめなら、基板を戻してマックでつかおう。 「マイコンピュータ」を開きます。「エコーII」のアイコンを右ボタンクリックして、「プロパティ」をよびだします。容量は「FAT32/1080M」! 「ああ、よかった!」 基板を替える大冒険は大成功でした。次の土曜日、ぼくは再び「湘南○商」へとでかけて、もう一台「ST31230WC」を買いました。もちろん、二台の「ST31230WC」をマックでソフトウエアレイドして遊ぶために。でも、いまだに両台とも稼働していません。だって、ケースを買うお金がないんだもん。
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冒険の記録は、98年の冬くらいからはじまっています。これからも増えるかもしれません。 金があれば。 |
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