「それは確かに今ほど豊かな時代ではなかったのだろう」と始まるタミヤのフィアット500Fの解説文は、ちょっと感動的です。
たしかこのキットは96年ごろ初出で、出てすぐ買って、各部可動にしようとしてうまくいかず放り出したのでした。
いつかリベンジしようと思って、気がつけば30年近く経ってるじゃありませんか!
ようやくリベンジできました。
この車はとても小さい。イギリスの雑誌のインプレッションでは、レポーターの背が高すぎてサンルーフから戦車の操縦手みたいに頭を出して運転してる写真がありました。
RR車で空冷二気筒エンジン。エンジンハッチ上のグリルの部分が吸気室になっていて、そこから吸い込んだ空気をシロッコファンでエアクリーナーとエンジンのシリンダー部に押し込んでエンジンの燃焼用と冷却につかい、シリンダーを冷やして温まった空気は更に運転席の暖房に使われます。これは後部座席前にコック付きのバルブがあって暖房必要ないときは遮断できます。おもしろい。
今回塗装にはじめて本格的にラッカーを使ったのですが、「リターダーは嫌になるほど入れろ」という教訓を得ました。泣きそうになった。やっぱ筆塗りはエナメルのほうがいいな・・・でも乾燥が早いというのはたしかに利点で、これからもラッカーを使うことにします。でもひと瓶使っちゃったよ・・・
正面から。
こうしてみるとネズミっぽいですが、バンパーとかないとヒキガエルっぽかったりする。
サンバイザーが降りてるのわかりますか?
サンルーフはニトリルゴム手袋から。
なんか白いの付いてるけど、多分接着剤で、肉眼だとそんなに目立たない。
実車に近づけたロックレバーで閉状態に固定できるようにした。
ボンネットの中も可能な限り再現しました。
スペアタイヤは30年前に投げ出したキットから。
緑色のものは、この車種専用のジャッキ。
右ヘッドランプの裏辺りにあるバッテリーも作りました。見えないけど。
あと実車では開状態にしておくバネじかけのロック機構があるのを可動再現しました。
各部可動は動画で紹介します。
三角窓動かすの忘れてたんで付け足した。
さあ、ここからは半年間の苦闘の記録ですよ。
ドアとかボンネットとか可動にしようと実車のレストア写真とかとにらめっこしながら切り取ってるうちに、「あれ・・・デッサンおかしくね?」って・・・(個人的な見解です。)
まずフロントグラス下の立ち上がりが縦に面積狭すぎね?
実車だとワイパーが立ち上がり部分に付いてるのにキットだと立ち上がりの谷のとこについてる・・・
ボンネットもなんか低いかな?
なんて、禁断のフロントグラス形状変更ですよ・・・でもってこのサフェーサーだと黄色が乗らねえ・・・・
白サフをいくつか試しました。
リアも、上述のエンジン用空気取り入れ室のスペースが無視されてるので、なんか矛盾が出ちゃってる・・・ルーフが低すぎるのかな?(個人的な見解です。)
なもので空気取り入れ室を作ったので、リアウインドも取り入れ室用グリルも形状変更です・・・地獄見た。
フロントウインドウはキットのパーツを削ってなんとか合わせましたが、リアはプラバンで作り直し。モールは数週間試行錯誤の結果、1ミリのプラバンを貼ってモールの形に内側を切り抜き、面取りした内側から透明プラバンを貼りました。
リアのサイドウインドウも同じように大きさを変えて作り直した。
フロントウインドウのモールはシリコン系のクリア接着剤を盛って再現したんで汚いです。キムワイプって接着剤の拭き取りに威力を発揮すると学んだ。
お次の地獄はドア!
前にジャガーEタイプで懲りたはずなのに、実車の窓枠の太さと厚さを見たら、「なんかウインドウ可動にできんじゃね?って、テグスを使ってドアハンドルで巻き上げる機構を考えて仕込みました。結構うまくいった。
動画で。
硬そうに見えるけどハンドルを付けたら結構軽く回るようになり申した。
ちなみに実車は歯車式です。歯車でアームを回転させて、アームの先に乗っかったウインドウを上下させる。
三角窓も可動に。
ボークスで売ってる極細の真鍮のコの字材がなかったらやらなかった。
お次の地獄はフロントアクスルとハンドルの連動!
なんかイタレリの大スケールのフィアット500の動画見てたらやりたくなっちゃったの・・・
テグスのケーブルで。
ケーブルは左折用と右折用が独立してます。
これ思いつき前に三回ほど失敗して作り直しました。
ひと月くらい空費したと思う。
おかげでいっぱい切れる。
内側のほうが大きく切れる、いわゆるアッカーマンアングルもキマったと思いました。
初代フィアット500はエンジンの上にフロントサスの板バネが左右に渡ってたけども、この車では下に来たのね。
フロントアクスル組み込むのにシャーシ先端が邪魔なので一旦切り取って後で復旧。
バッテリー架ついてます。つけました。
円内がバッテリー。黒く塗った。
キットでははっきりしないモールドだったアクセルペダルを真鍮で作りました。トンネルに横から刺さってるのね。
あと前にも倒れるように。
四角内は取付架を並行に正しい間隔ではんだ付けするための治具。
フロアのゴムマットはニトリルゴム手袋を切り刻んで張り付けました。
トンネルの上の物入れとかシフトレバー付け根カバーとかショークとスタータレバーの付け根カバーは一体のパーツで、フロアシートの上から取り付けるらしいです。
サンバイザーを取り付け&可動に。
サンバイザーは真鍮線の骨組みにヨドバシのレジ袋を貼ったです。
バックミラーの取付部はこのようにルーブの補強材と一体です。
このあとでサンルーフの掛けがねをつけた。
ようやくボディがほぼ完成。
サンルーフ穴直後の骨組みにあいた穴は、実車ではサンルーフ布をネジ止めする穴で、ナットが植わってるみたい。
エンジンはよくできてて素敵。コードや燃料ポンプを追加しました。
くだんの冷却後のホットな空気を運転席に送るパイプを追加しました。
ボンネット内に据える燃料タンク。
結構捉えづらい形です。
上下の貼り合わせ部分を金麦缶で再現。
のこぎりで切れ目入れて差し込んで瞬着多めで固まったら切る。
サンルーフの回転部分の骨は屋根に密着するように膨らんだ形なので銅板をペンチで曲げて加工した。布部分は黒いニトリル手袋と白いニトリル手袋で。
この車のジャッキポイントは写真の矢印で刺した部分にある四角い断面の筒で、ここにこの車専用のジャッキの腕を差し込んで片側を全部持ち上げるというシステムです。
キットには再現されてないんで金麦缶で四角断面の筒を作って接着。
ジャッキも可動にしちゃおうか・・・今回最後の小細工です。
ここでもテグスによるケーブル巻き上げ。
実物はベベルギアのスクリュージャッキでしょうが、そんなんできない。だから中途でのロックもできません。
30年近く前に放り出したキットのシャーシ。ボディもあったはずなんだけど出てきません。捨ててはいないはず。
ハンブロールの69番の発色が素晴らしい。
今回はMr.カラーの4番。悪くはない。