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2月10日(日)くもり
サヴォア邸へ まもなくフランスパンと、熱いコーヒーとミルクがそれぞれたっぷり入ったポットが私の目の前に置かれた。娘にはココアパウダーの入ったパックと牛乳のポ ットだ。私はコーヒーとミルクでカフェオレを作り、娘はココアパウダーをミルクで溶いてショコラのできあがり。パンと飲み物だけの朝食だったが、どちらも 量がたっぷりでとてもおいしかった。私も明日はショコラにしようっと! 今日の予定は凱旋門とエッフェル塔を見て、パリ郊外ポワッシーにあるサヴォア邸へ行くことだ。9時過ぎ地下鉄でエトワールまで行き、凱旋門を見る。想像 以上に大きい、壮麗な門だ。さぞかし人間の色々な歴史を見つめてきたことだろうと思えるほど、何か人格を感じさせる門だ。そこから徒歩30分でエッフェル塔 へ着いた。その途中でのこと。日曜日の朝のせいかまだ車も人通りも少ない道を歩いていると、突然うしろから「日本の方ですか?」と声がして、若い女性がかけ 寄ってきた。手には白い紙を持っている。また何かせがまれるのかしらん、と思わず一歩引いた。
「折り紙で箱の折り方をご存知ですか?」と彼女。手に持った和紙で再三試みたらしく、折り目だらけの紙は彼女の苦闘を裏付けていた。保育園時代から折り 紙の得意な娘が「四角い箱でいいですか?」と答え、さっそく教える。彼女にも何度か繰り返してもらう。何とかマスターすると、彼女はお礼を連発して娘と 握手すると、いつの間にか近づいていた車に乗って去っていった。娘が若手女優の伊藤歩に顔がそっくり!と言うが、私の知らない人だ。だってそっくりだから きっと伊藤歩だよ、と娘。 地下鉄でエトワールまで戻り、そこからポワッシ―行きの国鉄へ乗り換えるのに、最初ホームを間違えて待っていた。気がついて別のホームに移ったが、行き 先をよく見ないで、すぐ来た電車に乗った。乗客が少なくすぐ座れたが、2つ目の駅で全員下車して私たちのいる車輌は二人だけになった。動き出して間もなく、 減速してとうとう停車した。駅でもない、トンネルの中。まさかー! もしかして車庫入り? 隣の車両へ移ろうにも、ドアが開かない。缶詰状態だ・・。 車内の照明がついたままだったのが良かった。二人がなすすべもなく呆然とドア付近に立っていると、何と電車の外を壁伝いに男性が歩いてきた。 通路があるらしい。私たちがドアの硝子にへばりつくように寄ると、彼も私たちを発見してくれた。驚いて「何と マァ、間違えたんだね!」と言っているふうで、外からドアを開けて私たちを救出してくれた。トンネルの壁伝いに作られた通路用の出っ張りに降り、その狭い 通路を彼の後ろについてしばらく歩くと、最後尾の車輌についた。若い彼はこの電車の運転士だったのだ。また電車に乗ると、彼はどうぞ!とおどけて運転室の 中に私たちを招きいれ、鼻歌を歌いながら、楽しそうに電車を発車させた。 500mほど先に明るいホームが見えてきた。どうやら先ほどの駅が終点で、折返し運転する電車に乗ってしまったらしい。ポアッシー行きと間違えて乗ったこと を説明すると、彼はその電車は向こう側のホームから出ているから、ボード(電光掲示板)で行先を確認して乗りなさいと、多分そんな内容のことを親切に教えて くれて引き上げた。 30分近くロスしたが、無事ポワッシ―行きの2階建て電車に乗り、15分ほどで到着。パリ市街を出ると集合住宅や工場などがある郊外を通って、すぐに田舎ののど かな風景に変わった。駅前の大きな地図板でサヴォア邸を探し出すと2kmほど南の方角にあった。歩いていける距離だ。途中のパン屋さんでパンや飲み物を買い、 ゆるやかな坂道を上がる。周囲は学校や一戸建の住宅が並ぶ、静かな住宅地だ。喧騒のパリとはずい分雰囲気が違って、普通の生活のにおいがする。 ちょうど30分で到着。午後の開館は1時30分からなので、待つ間にベンチで昼食。サヴォア邸は約70年前に建てられた建築家ル・コルビュジエの作品で、彼の建築理 論である「現代建築の5原則」を忠実に実現したものらしい。写真で見たよりも小さく感じたものの、パリで石やレンガ造りの縦長の狭い窓を持つ建物ばかり見てき た眼には、なんともシンプルで近代的で機能的な建物だった。サヴォア邸は「ピロティ―(杭)の上の箱」そのものの姿で広い庭に建ち、「明るい時間」という名称通りに 光と空間が心地よい設計になっている。百科事典のように分厚い来訪者ノートには、見開き全部が日本人の名前で埋まったページもあった。今日は私たちのほかには 4〜5人の見学者がいるだけで、ゆっくり過ごせた。夏場はごった返すのだろう。
今日の会計:合計 104.92ユーロ <2月9日へ戻る><日程表へ戻る><2月11日へ進む > |