南仏の小さな村で10日間 2013 (3)
2013年春、私達夫婦は次のような日程でフランスを旅した。
2月25日(月) | 中部空港発11h55ーーー(ヘルシンキ)ーーー18h10パリCDG国際空港着 | パリ1泊 |
2月26日(火) | パリ・リヨン駅発10h07==(TGV)==13h34モンペリエ着 トラム&バスでペズナへ | ペズナ2泊 |
2月28日(木) | ペズナ===(バス)===ベジエ郊外の小さな村(ブージャン・シュル・リブロン) | ブージャン・シュル・リブロン7泊 |
3月07日(木) | トウールーズへ移動:ホテルで友人達と落ち合う | トウールーズ1泊 |
3月08日(金) | 友人達と4人でアンドラへ発つ | アンドラ1泊 |
3月09日(土) | アンドラからトウールーズへ戻る | トウールーズ2泊 |
3月11日(月) | トウールーズからトウールへ発つ | トウール3泊 |
3月14日(木) | トウールからパリへ | パリ3泊 |
3月16日(土) | パリCDG国際空港発12h20ーーー(ヘルシンキ)ーーー09h55中部空港着 |
2月26日(火)〜3月7日(土)の10日間、南仏の小さな村で過ごした。4回に分けて報告します。
今回はその3回目です。
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Boujan-sur-Libron(Beziers近郊・南フランス・ラングドック地方) ☆☆☆
3月2日(土):市内散策:晴れ
前夜遠く200kmも離れたオーヴェルニュから車を飛ばして会いに来てくれたミッシェルは、急遽ホテルに泊まることになり、
私達夫婦は彼女と共に楽しい一夜を過ごした。そして、ホテルで朝食を一緒にした後、帰って行った。
しばらくして私達はバスでベジエの町に出ることにした。昨年も同じ時期に来ているのだが、ゆっくり町を歩いていない。
『のんびり歩いてみよう』ということにした。まず、常設市場に行ってみた。午前中のためか?思っていたより客は少なかった。
青空市はいつも賑わっているのだが。
昼食や夕食の準備にと思って市場へ出掛けたのだが、これといったものもなく、近くのカテドラル(大聖堂)に行ってみることにした。
実は家内はまだカテドラルには行ったことがなかった。狭い石畳の15世紀の町を5分ほど歩くとほどなく着いた。
【威風堂々のカテドラル=巡礼の心の支え】 【屋上からの長めは抜群だった】
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町中のMONOPIX(スーパーマーケット)でサンドイッチを買って、近くのベンチに座り、簡単に昼食を済ませた。このところ
私達にとっては結構豪華な昼食が続いていたので、胃を休める意味もあった。午後から町をブラブラ歩く。広場では《がらくた市》
をやっていた。とても使えそうにないようなものまで売っている。いわゆる《泥棒市》の様な感じ。それでも買って行く人がいるから
店を開いているのだろう。
「日本人の方ですか」と上手な日本語で
急に声を掛けられた。「ええ、そうです」
あまりに流暢な日本語だったので、“こんな
所にも日本人がいるのかなあ”と思いながら
今度は私の方から「日本の方ですか」
「いいえ、ベジエに住んでいるフランス人です」
またビックリ!「日本語がとても上手ですねえ。
日本にいたことがあるのですか?」「ええ、つい
最近まで東京にいました。直ぐ近くのマンション
に日本人の妻と住んでいます。」
何となく初対面ではないような、どこかで
会ったことがあるような気がしていた。『NHKの
フランス語講座』に出ていたことがあると言って
名刺をくれた。《Patorice JULIAN》とあった。
どおりでどこかで会ったことがあるという気が
していたのだ。私はその講座を受講していた
ことがあるのだ。彼は、日本で本を何冊も出して
いるし、レストランも何軒か経営しているそうだ。
私達は20分ほど立ち話をして別れた。
『それまで知らなかった方と話す』『出合い』は
旅の楽しみ、醍醐味である。また、ベジエに行ったら是非またお会いしたいと思う。
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3月3日(日):ゆっくり、のんびり:晴れ
休憩の日。私だけ買い物に町へ出たが、これといったものもなく、ドール河畔の公園を散歩する。朝早いためか、
人影も少なかった。常設市場に寄って、鶏の丸焼きと付け合わせのジャガイモを買って帰る。ホテルで豪華昼食を取った。
そして、午後からはゆっくり、のんびり。手紙を書いたり、本を読んだり、日記を書いたりして過ごした。
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夕方、「散髪に行って来る」と言って、私はホテルを出た。昨年ホテルの直ぐ近くに理髪店があるのを見ていた。長いこと
旅行をしていると、《床屋さんにも行きたくなるであろう》と思い、今回は最初からその計画で来ていた。経験である。ところが、
行ってみると閉まっていた。???(>_<) 日曜日は休みということなのか?よく分からない。仕方ない。《折角ホテルを出て
来たのだから一人でブラブラ散歩してみよう》ということで住宅地を歩いていると、マドモアゼル(お嬢さん)が歩いてくる。
『ボンジュール、マドモアゼル、このあたりに床屋さんはありませんか』と辿々しいフランス語で聞くと、『5分程歩けばありますよ』
とのことであった。
結局、村の中心広場の床屋さんであった。『ボンジュール』と言って店に入ると、『ボンジュール』マダムとマドモアゼルが
にこやかに迎えてくれた。2人ともカフェのギャルソンよろしく、職人風の黒い衣装を身に着けている。明るい店内には客は一人も
いなかった。《まず頭を洗うから、向こうの椅子に座れ、シルヴプレ》とマドモアゼルに言われたので、私は黙って椅子に座った。
すると、これは日本と同じで、仰向けに寝かされ、頭に石鹸を付けて《ゴシゴシ、ゴシゴシ》《痒いところはありませんか?》とか
何とか。ゴシゴシ洗ってくれた。そして、今度は《鏡のある方の椅子に座れ、シルヴプレ》と言われたので移動した。
《どのようなカットにしましょうか》と言って、写真が何枚も貼ってある冊子をマダムが見せてくれた。私はそれらしい写真を指さし、
《セサ、シルヴプレ》すると、やおらマダムが《コーヒーなんぞはいかがですか》ときた。《勿論、ウイ、ウイ》(^_^)/~
フランスの床屋ではコーヒーも飲めるんだ。カットはマドモアゼルがハサミとバリカンを器用に使いながら手早く仕上げていった。
約20分で洗髪とカットが出来上がり。《髪を前に寝かせるか、それとも、立たせた方が良いか》と聞かれた。もともと私の髪は
後ろから前に向けて生えているが、この際、《立ててくれ、シルヴプレ》と言うと、マドモアゼルは《ウイ》と言って、櫛とドライヤーで
一生懸命格好良く(?)やってくれた。《次回はひげ剃りもやってもらおうかな》《メルシ、ボク》
洗髪とカット。約30分15ユーロの旅であった。
【ホテルの部屋からは夕日を眺めることができる】
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3月4日(月):ハイキング:曇りのち雨
近くの村までバスで行き、そこからホテルのあるブージャン・シュル・リブロン村まで
歩いて帰ってこようと計画した。フランスの田舎は本当に綺麗で、その牧歌的な雰囲気
は日本ではとても味わえない。ブルゴーニュの田舎、オーヴェルニュの田舎を歩いて
みての実感である。今回も計画の段階で、機会があれば是非歩いてみたいと思っていた。
例によって、ホテルのすぐ前のバス停からバスに乗ってベジエに出る。バスセンターで
目的地、セルヴィアン行きのバス(NO.21)に乗り換える。バスはフランスのうねうねと続く
ぶどう畑をひた走る。さすがに月曜日の昼前ということで、乗客は少ない。前の座席に座
っていた《フウテンの寅さん》風のおじさんが、「あんたら中国人かね」と話しかけてきた。
「日本人だ」と応えると、「日本人か!」と驚いたように言った。地中海沿岸のベジエでは
日本人は珍しいらしい。
セルヴィアンの町に入り、おじさんは降りていった。私達はともかく《終点まで乗って行こう。終点に何かあるだろう》と、
いつものいい加減な憶測でバスを降りた。《アレー!何にもない!》(>_<)そこは住宅地の端っこで、そこから先は見渡す
限りのぶどう畑。町の中心まで歩いて戻ることにした。足の調子の思わしくない家内にはちょっと悪い気がして、ゆっくり、
ゆっくり歩いた。夏の炎天下でなかったことだけが幸いであった。
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町中の普通のレストランで昼食を取り、ブラブラして町の雰囲気を味わった後、家内は一人バスでベジエに帰って行った。
私はというと、もう少しセルヴィアンの町の雰囲気を味わってから、1時間後のバスで隣村まで行き、そこからホテルまで歩く
ことにした。町の中心の教会に行くと、その前に例の《おじさん》が道ばたに座っていた。《ヤー、ムッシュ!》と馴れ馴れしく
声を掛けてきた。《昼飯は済んだかね》《ウイ》《昼が済んだらコーヒーはどうだ。直ぐそこのコーヒーは1杯が2ユーロだ。一緒に
どうだ。旨いぞ》とか何とか。どうやら《奢ってくれ》と言っているようなのだ。《家内が待っているからだめだ》と私はその場を
取り繕って《バイバイ!》した。
セルヴィアンからホテルまで歩くと、4時間位は掛かる。少しエライので、隣のバッサンまでバスに乗り、そこから歩くことにした。
バッサンの村も大変古い村で、12世紀の教会があり、修復工事をしていた。
バッサンからホテルのあるブージャン・シュル・リブロンまでは約7km。1時間半もあれば何とか歩けるだろう。田舎道を歩く。一面のぶ
どう畑。時々ではあるが、狭い道をものすごいスピードで車が通り過ぎる。《だいたいのフランス人は車に乗ると人格が変わる》ということを
聞いたことがある。車の運転をしない私としては、どうも車のスピードに対して恐怖心がある。
それでも田舎道をのんびり歩くことは本当に気持ちが良い。PCでGoogleから打ち出した地図を頼りに、途中の三叉路や十字路では間
違えないように注意して歩く。季節柄、黄色いミモザの花があちらこちらに見られ、心が安らいだ。3分2ほど歩いたところで、雲行きが怪し
くなってきた。一応傘は用意しているが、雨が降り出すとうっとうしい。このルートにはバスは通っていない。ともかく歩かなければ村に着け
ない。少し不安になり早足で歩く。
緩い峠を越え、カーブを曲がったところで、左手の小高い丘の上に目指すブージャンの村が見え、ホッとした。(^_^)/~ 村の入口まで
来たところで、一転にわかに大粒な雨が降り出した。丁度直ぐ近くにカフェがあったので慌てて入る。“ボンジュール”マダムが元気に
迎えてくれた。”ボンジュール、ビール1杯、シルヴプレ”
満足した身体に、ビールが染み込んでいった。(^_^)/~
《つづく》