７０万歩の旅～巡礼の路を歩くⅣ-⑩ ２０１８・０８・２９～０９・２２
素晴らしい大自然、迫力のある景色、失敗やドジを含めたさまざまな体験、美味しい食べ物、勿論ワイン、一齣一齣が
鮮明に思い出される。しかし、最高の思い出は何と言っても人々との出会いである。それは私の掛け替えのない宝物と
なった。
出会い、ふれ合い『旅は人なり』
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１回目：パリ⇒リモージュ ２０１４．８．７～９．１ 歩行日数：２５日間 ４７２．４ｋｍ ７０６，５１７歩（万歩計）
２回目：リモージュ⇒オルテズ ２０１６．８．６～８．２９ 歩行日数：２４日間 ４９３．３ｋｍ ７２５，０６３歩
３回目：オルテズ⇒ブルゴス ２０１７．８．２１～９．１１ 歩行日数：２２日間 ３８２．８ｋｍ ５８９，０７８歩
４回目：ブルゴス⇒サンチャゴ・デ・コンポステーラ ２０１８．８．２９～９．２２ 歩行日数：２５日間 ５００．４ｋｍ ７３３，６９９歩（今回）
全行程：パリ⇒サンチャゴ・デ・コンポステーラ 歩行日数：９６日間 歩行距離：１，８４８．９ｋｍ
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＝巡礼の路を歩く旅：第２０日目＝
９月１７日（月）晴：Mongade8h15--Portomarin--13h40Gonzar（ゴンザル） 20.8km 32,425歩 Albergue泊
朝起きて気付くと、同部屋に寝た６人の内３人は静かに退室していて、南アフリカの母娘と私だけが残っていた。
早出の３人が音もさせずに出て行ったことは見事であった。ただ、私が起きて退室するときも、南アの母娘はまだ
寝ていたので、私は音をさせないように注意して部屋を出た。
８時過ぎにアルベルゲを出た。ここ２日間霧で気分が沈みがちであったが、《晴れた空に、澄んだ空気》を思いっ
きり吸った。(^_-)-☆ 《さあ、今日も元気に頑張って歩こう！》と自分に言い聞かせて出発した。小さな村に泊まった
ので、集団カミーノはいない。田舎の景色を楽しみながら一人で歩いた。１時間くらい人に会うことはなかった。
《村はずれに墓地があった》 《青い空、澄んだ空気、心も洗われる大きな景色》
２人の若者が私を追い抜いて行った。小さな標識があり、右に曲がるようになっていた。２人はそれに気づかず、
話ながら真っ直ぐ歩いて行ってしまった。先に行く彼らに、《Hay！カミーノ！道が違うよ！こっちだよ》と、大きな声を
出して言うと、彼らは私の方を振り向いて、《グラシアス！》 戻って来た。再び《ありがとう！》と、にこにこしながら
言って先に行った。
チョットしたことだったが、何か良いことをした気分になって気持ちが晴れ晴れした。(^_-)-☆ 《昨日は、ザマーミロ！
と思ったのに。》 えらい違いだった。《これがカミーノの心なのだ。》と思い、《今後集団カミーノが困っていたら、親切に
してあげよう》と反省をした。(^_-)-☆
《小さな村を通り過ぎる》
《ポルトマリンの大橋：下は旧橋、昔の巡礼はここを渡った》 《階段を上がると街》
《１２世紀、ロマネスク建築のサン・ニコラス教会》
ポルトマリンは中世の古い町である。アルベルゲが沢山あるので、多くのカミーノたちはサリアから１日歩いて
ここに泊まる。午前中の街にはカミーノもほとんどいなくて静かだった。ただ、食堂もまだ開いていなかったので、
スーパーマーケットで、昼食用にパンと桃を一つ買った。そして、教会でクレデンシャルにタンポンを貰い、再び
歩き出した。
《十字架に願いを込めて》 《山火事の跡の林》
再び河を渡り、森の中を行く。暫くすると、木肌が真っ黒になった林があった。山火事の跡だった。そう言えば、
《この猛暑でスペイン各地で山火事が発生している。》と聞いていた。《ここもそのうちの一か所だったんだ。》と
思った。また、その火事からそれ程日にちが経っていない様子を見て、正直、《丁度その時に遭遇しなくてよか
ったなあ。》とも思った。
森を出て暫くして、そろそろ《腹が減って来たなあ。》と思ったが、なかなか適当な場所が見当たらなかった。
《もう１時になる。早く食べた方が良い。》 車がビュンビュン通る国道沿いに車工場の大きな建物があって、
わずかな日影があったのでそこに座り込んで昼食を取ることにした。
二人とも背の高い中年夫婦が歩いて来た。《どちらから見えたのですか？》《ロンドンの郊外のＸＸＸＸＸＸという
町です。》《エッ？》 聞きなれない町の名前に聞き直した。《ＸＸＸＸＸＸＸです。》《知らないなあ。》《ロンドンの郊外
です。小さな町です。あなたは？》《日本人です。東京と大阪の真ん中の名古屋の近くです。》《Aha、名古屋は
知っていますよ。》《今日は何処に泊まるのですか？》《ゴンザルです。》《Aha、私も一緒です。また会えるかも
しれませんね。》 二人は歩いて行った。ただ、奥さんの方はマメでも作ってしまったのか、片脚を引きずって
いる。旦那さんも一緒にゆっくりゆっくり歩いている。《マメなら２～３日で良くなるだろうが、そうでなければサン
チャゴまで行くのは大変だなあ。》と思った。
ゴンザルのアルベルゲには１時半過ぎに着いた。《２時に開けますので、少し待っててください。》とそこにいた
若いスタッフの女性が言った。《Wifiは使えますか？》《Wifiはありません。もし、Wifiが使いたいのであれば、
国道沿いのBarに行ってください。使わせてくれます。》 それまで全てのアルベルゲでWifiが使えていたので
意外な気がした。
まだ、《時間が早くて受付もしてくれない。》というので、近くのBarに行ってみた。すると、 《Aha、AKi！》
マルテインだった。彼女は朝先にアルベルゲを出たので、もうとっくに先に行っているものだと思っていた。ただ、
彼女は《今日は隣の村まで行くワ。》と言って、直ぐにBarを出て行った。
《３００ｇ位のステーキ》 《一緒に食事をしたイギリス人のご夫婦》
夕食時になって中庭の食堂に行く。私が昼食をしていた時に出会ったイギリス人ご夫妻がいたので、《ここよろしい
ですか？》と言って座った。そして、お互いに名乗った。奥さんは《カレン》 旦那さんの名前は難しくて残念ながら覚える
ことができなかった。彼はもう退職しているが英語の先生、つまりは国語の先生だった。夫婦で旅行することが好きだと
言っていた。また、私に《奥さんは一緒でないのか？》と問われたので、《脚が悪いので長く歩けないが、百貨店に行くと
私より長い時間歩く。》といつものように冗談交じりに話すと、以後打ち解けたように話が進んだ。旦那さんが中座して
いるとき、奥さんに《彼は本当に優しいのですね。》と二人でゆっくり歩いている姿を思い出して言うと、《エエッ、幸せ
ですワ。》と微笑みながら言った。心温まる思いをした。
私が頼んだメニューにはびっくりした。アルベルゲのブログに載っていたとは言え、１０€の夕食に出て来るとは思って
いなかった。何と《３００ｇ位のビーフステーキ》が出てきた。肉の味もしっかりしていて美味かった。また、ソースを付けて
食べると絶品。大満足だった。(^_-)-☆
食後まだ明るかったので、再び近くのBarに行った。赤ワインを飲みながら、それまで一緒に歩いたカミーノたちのことを
頭に浮かべた。《岳やチカミチカなど若い学生さんたちは、もうサンチャゴに着く頃だろう。フランソワやチーム２１２は
何処を歩いているだろうか？》 するとそこにエリアナが来た。《エリアナ！今日はここで泊まっているのか？》《ええ、
そうよ。AKiは？》《私は向こうのアルベルゲだよ。さっき夕食を済ませたが、何と３００ｇ位のビッグなステーキを食べたよ。
旨かった！》《へえ～、うらやましい。》《ところで、エリアナはサンチャゴにはいつごろ着く予定だい？》《２１日かな。AKiは？》
《私は２２日かな？》《でも私、サンチャゴに３泊するから、また会えるかもしれないね。》《そう願っているよ。》
暫く話をして私はアルベルゲに戻った。
＝巡礼の路を歩く旅：第２１日目＝
９月１８日（火）曇時々晴：Gonzar8h10--Palas de Rei--14h15Casanova（カサノヴァ） 23.7km 37,108歩 Albergue泊
７時半過ぎにアルベルゲを出て、朝食のために近くのBarに寄った。すると、ポルトマリンを朝６時半に出てきたという、
元気な若い２人に出遭った。とても感じの良い女性で東京の人だという。サリアから出発して、サンチャゴへは４日で歩くらしい。
《一日平均２５ｋｍだ。若いなあ。私はサリアから７日掛けて歩く予定ですよ。》《サンチャゴのパラドールで母親と待ち合わせを
しているんです。そこに２泊するんです。》《楽しみですね。無事会えると良いですね。》
《郵便屋さんがハガキを持って行ってくれた》
フランスの友達にハガキを書いた。歩いているとポストがあったが、《こんな田舎ではいつ集めに来るか分からん。町の
ポストに入れた方が良いだろう。》と思って止めた。ところが、暫く歩いているとBarがあって、その前に郵便局の車が止まって
いた。配達に来たのか、集めに来たのかは分からなかったが、Barから局のおじさん風の人が出てきたので、《このハガキ
持って行ってくれますか？》と言うと、《OK》と言って気安く受け取ってくれた。(^_-)-☆
《巡礼路 歩いた証 靴の跡》 《ガリシア独特の穀物倉庫：あちこちにある》
いよいよ《サンチャゴ到着のカウントダウンが始まったなあ。》とフト思った。朝東京の若者２人と話をしてみて、《サリアから
サンチャゴまで７日とは、あまりに遅い。》ゆっくりカミーノも良いが、《一日短縮するとどうなるかなあ。》と考えてみた。《一日
でも短縮すれば、ひょっとするとサンチャゴでフランソワに会えるかもしれないし、エリアナには途中でも会えるかもしれない。
更にその後、帰りにロカマドールにも余裕で寄ることができるかもしれない。》 兎も角、《今日は、パレ・デ・レイに泊まるの
ではなくもう少し先まで行こう。》と思った。
パレ・デ・レイには考えていたより早く着けた。１２時少し過ぎていた。丁度Barがあったので昼食を取った。豚肉サラダと
オレンジジュースが旨かった。また、このBarで２週間ぶりにオーストラリア、ブリスベンの若い女性、ミシャに出会ったことには
ビックリした。《これがカミーノの醍醐味かもしれない。》とも思った。
《カサノヴァのアルベルゲ界隈》 《ベイビーカミーノ》
パレ・デ・レイから５ｋｍのカサノヴァまでは思っていたより遠かった。ずっと緩やかな下りが続いていたが、少し登り
掛けた所にアルベルゲがあった。私がアルベルゲに入ると続いてベビーカーに子どもを乗せた女性が入って来た。
《ベイビーカミーノだ！》 初めてのことだった。《どこから歩いているのですか？》《レオンからよ。》《この子は何歳です
か？》《１歳と４カ月よ。》《へえ～、素晴らしい！》 私が日本人だと名乗ると、彼女は《イタリアのシチリアから来た。》
と言った。《ワオ！シチリアからのベイビーカミーノ、頑張れベイビー、ママ頑張って！》
《温かい豆のスープ》 《メインの皿？？？》 《AKi！食後酒はどうだ！》(^_-)-☆
昼間ワインを飲みに行った時に、マダムが店先でスイカを切っていて、《食べないか？》と声を掛けてくれたことも
あって、夕食もそのBarに行った。外には昼間からズーッとビールを飲んでいる２人のカミーノとベイビー母子がいた。
私はBarの中で食べることにした。陽気なマダムとダンナがいた。《AKi、何を食べるんだ？》 昼間来た時に名乗った
のだが、覚えていてくれて名前で呼んでくれた。《悪い気はしない。》 近くにレストランもあったのだが《向こうのレス
トランに行かなくて良かった。》と思った。
《巡礼メニュー》を頼むと、先ず、ガリシア独特の温かい豆スープが出てきた。夏とは言え、夜は寒い位。温かい
スープが身体を癒してくれた。メインの皿が出てきた。《これは何ですか？》 ダンナが、ブーブーと言いながら、耳を
触った。どうやら《豚の耳》らしかった。 軟骨がコリコリして歯ごたえが良く、《珍しいものにありつけた。》と思った。
デザートのアイスクリームを食べ終わると、《AKi！食後酒はどうだ！》と言って、ダンナがいかにも強そうな黄色の
酒を出してくれた。《これは何？》と聞くと、《ＸＸＸＸＸＸ》 知らぬ酒だった。食後酒だけにかなり強くて甘かった。(^_-)-☆
《この日久しぶりに上段に寝た》
部屋に戻り、《チーム２１２》と《フランソワ》にメールを打って寝ようとしていると、洗面所から《ガオ～、ガオ～》
と変な音、声が聞こえてきた。《多分、昼間からBarでビールを飲んでいたオヤジだ。》飲み過ぎてゲロを吐いている
様だった。暫くして、彼が部屋に入ってくると、私の下段のベッドにもぐり込んだ。《大丈夫なのかな？》と思っていると
何のことはない、直ぐにイビキを掻きだした。《ギゴガガ～、ギゴガガ～、パプー》 これまで聞いたことのない、
強烈なイビキ。(>_<) しかも、往復で呼吸そのものが長い。彼が寝返りをうって静かになったすきに寝ようと思っ
たが、そう上手くいくものではない。《眠れない！》(´Д｀) また、直ぐに《ギゴガガ～、ギゴガガ～、パプー》は始
まった。最初、《何だコイツ！》<`ヘ´>と思ったが、次第に《こんなイビキもここでしか聞かれん！》と思うと、笑えて
きてしまった。
つづく
