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C50 その3-KATO製品/マイクロエース製品

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KATO 初代製品

201 C50 1965年 C50 初代製品

201 C50
1965年 (拡大写真)

同社初にして国産初のNゲージ蒸気機関車。取り扱い説明書は「鉄道模型趣味」編集部の執筆でした。
テンダーモーター・エンジンドライブ式で、当時の値段は3,950円でした。

関水金属初のNゲージ製品として有名ですが、登場から5年程度で早くも市場から消滅しており、カタログ上では予定品扱いに変更されていました。
上廻りはプラ一体成型で、未塗装ですが当時のものとしては精密です。今見ても表面の歪みなどもなくしっかりしています。
縮尺は大体1/144くらいのようですが、色々な事情から他のゲージでも蒸気機関車は大きめに作るということは行われていたので、製品群全体としては1/150という言い方でおおらかに捉えられていました。

下廻りはドロップなど金属が多用されており、動輪のスポークは最初から完全に抜けていました。
私の手持ちのものしかわかりませんが、やや大きめの固い音を立てて走ります。同じく金属ギヤのホンコン製ED75(トミーナインスケール)や、K.S.KタイプCタンク(同)と同系の音です。今の製品と比べれば滑らかさはありません。 ゴムジョイントがやや硬いため、急なカーブでは抵抗を感じることがあります。

自動解放型カプラー

カプラーはNMRAのX2Fタイプのようなもので、自動連結・自動解放に加え、説明書のうえでは遅延解放ができることになっています。ただ私は適合する解放ランプが売られているのを見たことがありません。

X2Fカプラーの解放ランプは、レール内側に設置する固定的な溝状またはやぐら状のもので、走行中のカプラー下部の解放ピンをレール中央に寄せる働きをします。この上で停止させて少しバックすると解放できるというものです。
自動連結は軽く付き当てればよいことになっていますが(説明書では「ぶっつければよい」とあります)、まさに突き飛ばすばかりで連結できないこともありました。この点は当時、鉄道模型趣味誌(1966年1月号)の「製品の紹介」でも指摘されていました。アーノルドカプラーでもバネが強すぎたり、作りが悪かったりするとそうなることがありますが、あんな感じです。

初代C50パッケージ

初代製品のパッケージは紙製で、透明のフタがかぶせてあるだけの貧弱なものでした。

この初代製品の品番は201ですが、1981年の二代目製品も当初は同じ品番201でした。
オークション等でも、二代目品が「日本初のNゲージ蒸気機関車」と間違えて出品されていたことがありました。両者は形もパッケージも大違いなので、知っていれば間違えることはありません。

前面のダミーカプラーが特に壊れやすいといわれています。確かに付け根が細くて見た目にも不安です。
これから探し出して入手しようとお考えの方は、この部分の取り扱いに十分注意することをおすすめします。

RM MODELS 128号の記事「紀元前N世紀」第4回(大田治彦氏)によると、初代製品にも大きく分けて前期・後期の2タイプがあったようで、ここでご紹介しているのは前期ということになります。


1981年リニューアル品(二代目)

201 C50 初回 1981年 C50 リニューアル品初回

201 C50 初回
1981年 (拡大写真)

リニューアル品の初回生産です。スポークのない先輪、細いリード線が特徴で、つかみ棒はありません。

2001-1 C50標準デフ付 初回(C50特別セット)1985年 C50標準デフ付 初回20周年記念

2001-1 C50標準デフ付 初回(C50特別セット)
1985年 (拡大写真)

デフ付きの初回品です。KATO Nゲージ発売20周年記念の「C50特別セット」として発売されました。
7本スポークのハイフランジ先輪となり、つかみ棒は取り付け済みでした。ランボードは白線入りです。

2001 C50 中期 C50 リニューアル品中期

2001 C50 中期
(拡大写真)

デフ付きに合わせて小改良のうえ、1990年代に再生産が繰り返された製品です。
デッキのつかみ棒も付属しましたが、デフ付きと異なりユーザー取り付けです。機炭間のリード線は太くなりました。

2001 C50 最終製品 2002年 C50 最新製品

2001 C50 最終製品
2002年 (拡大写真)

デフなしの最終ロットです。動輪スポークが抜け、先輪スポークが明瞭な8本になりました。恐らく2002年を最後に生産されていません。

2001-1 C50標準デフ付 最終製品 2005年 C50標準デフ付

2001-1 C50標準デフ付 最終製品
2005年 (拡大写真)

デフ付きの最終ロットは黒色車輪になりました。塗装の光沢も若干変わり、より黒っぽく見えるものになりました。

二代目製品はKATOのC50として最も長く市場に存在しました。それまでの同社の蒸機と違い、本格的に別パーツを採用した製品で、今手に取って見ても精密感があります。 動力はエンジンモーターに変更され、走行性能も良好です。
(しかし私はその製品でいきなりハズレを引いて、お店で交換してもらいました…)
「鉄道模型ファンでなくても欲しくなる本格的蒸気機関車模型」という意味の広告コピーだったように思います。

全長は初回製品より少し長くなり、当時の同社の蒸機に合わせた約1/140となりました。ただしそれほど大きな機関車ではないので、長さのオーバーは5mm程度であり、同社の旧C57のような巨大さは感じません。 何となく蒸機が欲しくても特にお好きな形式がないという方には、このC50とオハ31系客車はお勧めできる模型でした。値段的にも安く揃えることができました。
現在入手しようとしたら中古品になりますが、ライトは非点灯なので、点灯しないと物足りないという方はご注意ください。このへんは実物がどうのこうのより、楽しみ方の違いだと思います。

リニューアル品初回C50パッケージ 二代目の初回生産(品番201)のパッケージはKATOの現在の標準型クリアケースと同じサイズのものですから、初代製品と間違えることはありません。この頃、中敷のトレイにはマイクロエースのような静電植毛加工がありました。後にウレタンに変更されています。
20周年記念モデル

1985年には、KATO Nゲージ20周年記念モデルとして「標準デフ付」が採用されました。
これは20周年ロゴ入りのオハニ30とセットになっており、C50の銀ピカのシールも付属していました。
このC50はライン入り・つかみ棒付き・スポーク先輪という当時としては豪華モデルでしたが、後の1989年には単品として発売されたため、20周年モデルには特別なありがたみはなくなったように思います。

テンダーからの集電はリード線によって行われていました。最初は極細のリード線でしたが、後に太く変更されています。
空中を横切っているリード線はあまり落ち着いて見えませんので、下側に引っ張り出してホースのように見せることがよく行われました。

初期リード線 後期リード線
初期のリード線 後期のリード線

KATOの蒸機では、他にD51の旧製品とC58がリード線式の集電を行っていますが、極細線が採用されたのはD51とC50の一部だけでした。

先輪の比較

C50(デフなし)は2002年の再生産より動輪がスポーク抜きになり、先輪形状が改善されました。
2005年の標準デフ付の再生産より車輪が黒色になり、先輪スポークのモールドも変更されましたが、その深さは浅くなりました。
この写真で左側が2005年の標準デフ付き、右側が2002年のデフなしです。
その後、KATOの蒸機の先輪はタイヤが薄いものに変更されているので、それに伴いスポーク表現もこのように浅くなっているようです。

二代目製品はカタログ上は長く存在しましたが、旧C11・C57・D51のような定番の4両セット化はされておらず、静かにフェードアウトした印象です。


2016年リニューアル品(三代目)

KATO初のNゲージ製品である初代C50が1965年に発売されてから51年後、50周年記念製品として三代目のC50が登場しました。

2027 C50 KATO Nゲージ50周年記念製品 2016年 C50 50周年記念製品

2027 C50 KATO Nゲージ50周年記念製品
2016年 (拡大写真)

記念映像集のDVDと小冊子付きではありますが、KATOの単品としてはかなり高価な21,600円(8%税込)で発売されました。
発売直前になり、別途制作中だった50周年記念誌の無料引き換え券も同梱されることに決まりました。引き換えは2017年5月に終了しており、すでに無効になっています。

コアレスモーターが採用され、大きかった縮尺が1/150に変更されました。 光沢のある塗装に閉じた窓のためか、いつものKATOの蒸機と違って静的で、何となく冷たい外観です。この外観仕様は今回限りとのことで、Assyパーツの設定もありませんでした。
付属冊子によると、今回の製品は積極的に走行させる機会が少ないと想定し、ディスプレイモデルとしての性格も追及したとのことです。

値段の高さが悪目立ちしましたが、走りの滑らかさはこの時点のKATO蒸機の中で最高だったと思います。


マイクロエース

こちらは2001年の発売で、KATOの1981年製品からみてちょうど20年後の発売です。初代製品から数えれば35年後の後輩です。

A7401 C50 110 デフ付き 2001年 C50 110 デフ付き

A7401 C50 110 デフ付き
2001年 (拡大写真)

A7402 C50 66 ゼブラ塗装 2001年 C50 66 ゼブラ塗装

A7402 C50 66 ゼブラ塗装
2001年 (拡大写真)

月刊マイクロエース的に蒸気機関車を連続発売してきたマイクロエースが、KATOの代表作(当時は二代目C50)にぶつけてきた…というか、成り行き上ぶつかった製品です。
特長としてはライトが点灯すること、ギヤが露出していないのでゴミが絡むトラブルが少なかったことかもしれません。

キャブの屋根の高さは抑えてありましたが、KATO製品(二代目)と比べて低くはありませんでした。1/150という長さが十分生きていなかったので、KATOのC50からそのままバトンタッチすることは難しそうでした。
ただ、前から見ると何かに変装しているようですが、マイクロエースの蒸機の中で使うのであれば結構C50に見えてきます。
特にサイドビューなどに見られる少々の野暮ったさに、何となく実物の印象のかけらが漂っているのは見落とせません。人により、どこに「らしさ」を感じるかは少しずつ違います。

実物が8620の改良機ということで、模型でも先に出た8620の下廻りが流用されていますが、8620の大きな先輪までもがそのまま流用されています。
8620では、バルブギヤのプラ部品が黒成型でしたが、C50では銀成型に戻されています。


同じ機関車を模型化しても、メーカーによって、時代によって、かなり違ったものになっています。
それぞれによさがあり、KATOの三代目・二代目製品を見比べても、別々の場所に「こちらのほうがすごい」と感じる部分があるのが面白いです。大手メーカーの商品は機械的な製造物としても映りますが、よく見るとやはりその背後に「人間」を感じ、「製品」というよりは「ご作品」と捉えたほうがぴったりくるような気がします。


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